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クロスウォーズアドベンチャー

作者:setuna
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第44話:暗黒究極体

今日も今日とて、大輔達はデジタルワールドの復興作業をしていた。

「よし、みんな。キリの良いとこで休憩しようぜ」

【はーい】

大輔が休憩を言い渡すと全員が頷いた。

「ねえ、大輔君。飲み物は何がいい?」

「俺?…じゃあコーヒーがあればコーヒー。無けりゃあ何でもいいや」

「分かった、行ってくるね」

「なあ、大輔」

「?」

ブイモンが声をかけてきたため、振り向く大輔。

「タイキ達やシャウトモン達、元気にしてるかな?」

「どうだろうなあ、多分元気にはしてるだろうけど俺達からすれば未来だもんな…並行世界だけどよ」

「きっとあいつらは」

「「ん?」」

振り返るとそこには焼き菓子のクッキーを提供しているテイルモンの姿があった。

「それぞれ自分達の夢を追いかけてる真っ最中よ。」

「テイルモン、お前は行かなかったのか」

「ヒカリに頼まれてね。ほら、あんた達の分」

「ありがとな」

「サンキュー!!」

大輔もブイモンもクッキーを食べ始めた。

そしてしばらくしてヒカリも戻ってきてコーヒーを渡してくれたのでそれを受け取って一口飲む。

クッキーの甘味とコーヒーの苦味に大輔は思わず口元を綻ばせた。

「ふ~…美味いクッキーを食べながらコーヒーを飲む…至福の一時ってのはこういうのを言うんだろうな…」

「甘い甘い!!至福の一時ってのは隣に愛しい彼女がいる時のことを…ぶべらっ!!?」

「いきなり叫ぶんじゃないわよ!!格好つかないでしょうが!!」

【ん?】

振り返るとそこにはアルケニモンに殴り飛ばされたマミーモンと殴り飛ばした体勢のまま叫ぶアルケニモンの姿があった。

「また出たなマミアルコンビ!!」

ブイモンがクッキーをモゴモゴさせながら叫ぶとアルケニモンがツッコむ。

「略すんじゃない!!そして口の中の物を飲み込んでから喋りな!!とにかく今日こそあんた達の最期だよ!!こっちはダークタワー100本使った自信作を引っ提げてきたんだからね!!」

「そうだ!!アルケニモンの髪を100本も使ったんだぞ!アルケニモンの髪!!貴重な髪ぃ!!!」

マミーモンからすればダークタワーよりもアルケニモンの髪が重要らしくアルケニモンの髪を強調している。

「あんたはうるさいのよ!!殴るわよ!!」

「もう…殴られてます…ガク…」

再びアルケニモンクラッシュでぶっ飛ばされたマミーモンであった。

茶番に気を取られている内に100本のダークタワーの融合が完了した。

「グオオオオオオオッ!!!」

100本のダークタワーが融合して誕生したのは漆黒の竜戦士…ブラックウォーグレイモンであった。

「黒いウォーグレイモン…」

「そんな…ブラックウォーグレイモンなんて…」

「あいつら…とんでもない奴を…」

大輔がブラックウォーグレイモンを見て呟き、光属性のパートナーを持つヒカリとタケルはブラックウォーグレイモンの放つ暗黒の波動に鳥肌を立てた。

精神的に不安定となっている2人を戦わせるのは危険と判断した大輔と賢はD-3Xを構えた。

「「エクスブイモン!スティングモン!ダブルクロス!!」」

「パイルドラモン!!」

エクスブイモンとスティングモンがデジクロスし、パイルドラモンとなり、ブラックウォーグレイモンと向き直る。

「京、伊織。ヒカリちゃんとタケルを連れて離れてろ」

「え!?」

「どうしてですか!?」

「2人はブラックウォーグレイモンの暗黒の波動を受けて精神が不安定になっている。そんな2人を戦いに加えるわけにはいかない」

京と伊織の疑問に賢が答えると、確かにタケルとヒカリの体は小刻みに震えている。

「分かったわ、勝ちなさいよ!!」

「さあ、どうかな?勝てるか分からねえよ。今回ばかりはタクティモンやブラストモン程じゃないにしろ、桁外れの奴みてえだからな」

「それじゃあ始めるか…デジクロスのパワーとダークタワー100本分のパワー…さあて、どっちが上かな…?」

京達がこの場を離れたのを確認して、パイルドラモンは構えた。

「…グオオオオ!!」

次の瞬間、ブラックウォーグレイモンはパイルドラモンの懐に入っていた。

「(速い!!)」

パイルドラモンに向けて繰り出される竜系に致命的なダメージを与える“竜殺し”の名を冠する爪…ドラモンキラー。

その威力は竜系に限ればある程度の実力差すら埋める程の威力を誇る。

「舐めるなよ!!」

それを両腕から出したスパイクでブラックウォーグレイモンのドラモンキラーを受け止める。

「オオオオオオッ!!」

「だあああああっ!!」

スパイクとドラモンキラーの超速ラッシュのぶつかり合い。

単純なステータスならば究極体であり、ダークタワーデジモンである故に通常種よりも高いスペックを誇るブラックウォーグレイモンが上回っている。

しかしパイルドラモンも1年間にも及ぶ巡り合いの戦いの中で培ってきた経験がブラックウォーグレイモンとの実力差を埋めている。

一旦距離を取り、ブラックウォーグレイモンが両腕を天に翳す。

「ガイア…」

「ん?ダークタワーデジモンが喋った…?」

パイルドラモンは改めてブラックウォーグレイモンを見つめる。

ブラックウォーグレイモンの瞳には今までのダークタワーデジモンとは違う何かがあった。

「…フォース!!!」

パイルドラモンに向けて勢い良く投擲されたエネルギー弾。

「そらあっ!!」

パイルドラモンは両手を組んで全パワーを集中させて自分に迫るエネルギー弾を弾く。

弾かれたエネルギー弾は戦いを観戦していたアルケニモンとマミーモンに迫り、逃げようとしたが間に合わず、エネルギー弾の爆風で吹き飛ばされた。

「考え事してる場合じゃないな!!」

再び激突する両者。

パイルドラモンはブラックウォーグレイモンの大振りな攻撃を受け流し、腹部に拳の強烈な一打を叩き込む。

「ぐうっ!?」

「!?お前、痛いのか?」

腹部に走った痛みに苦悶の表情を浮かべるブラックウォーグレイモンにパイルドラモンは目を見開いた。

ブラックウォーグレイモンは腹部を押さえていた腕を離すと…。

「強いな…!!」

獰猛な笑みを浮かべた。

それを見たパイルドラモンは気付いた。

信じられないことだが、ブラックウォーグレイモンには“心”があるのだと。

「心を持ったダークタワーデジモン…こいつは少し…やばいかな?」

そう言いながらもパイルドラモンの表情は笑ってる。

心を持たないダークタワーデジモンは能力は高いが単調な動きしかしないため、慣れてしまえば簡単に倒せる。

しかしブラックウォーグレイモンにはダークタワーデジモン特有の高ステータスとそれを活かす心がある。

久しぶりの全身全霊を懸けた戦いにパイルドラモンも闘志を燃やす。

「ブラックウォーグレイモン…何でお前に心があるのかなんて今はどうでもいい。お前は今の俺の全身全霊の力でぶっ倒す!!」

「やってみろ!!」

再び激突する両者。

パイルドラモンはブラックウォーグレイモンの攻撃をかわしていくが、少しずつ当たるようになってきた。

「っ!!(こいつ、さっきより動きが良くなってる!!俺の動きを学習してるんだな!!)」

動きだけでなく、攻撃も先程のような大振りではなく、完全にとはいかないが動きに無駄を無くした物になってきている。

「オオオオオオッ!!!」

「っ、成る程な。生まれつき究極体だから他のデジモンとは比べ物にならない伸び代があるってわけか!!」

時間経過と共にブラックウォーグレイモンのパワーもスピードも上がってきている。

「ドラモンキラー!!」

「エスグリーマ!!」

スパイクとドラモンキラーが再び激突し、ブラックウォーグレイモンは強引にそれを払うと左腕のドラモンキラーでパイルドラモンの胸を貫こうとするがパイルドラモンはそれを後ろに倒れるように回避し、逆立ちの要領でブラックウォーグレイモンの顎を蹴り上げる。

「エレメンタルボルト!!」

掌から放たれた電撃がブラックウォーグレイモンに炸裂する。

「ぐあ…っ!?」

「はあああああっ!!!」

感電したところをパイルドラモンはブラックウォーグレイモンを腹を殴る。

何度も何度も何度も殴りつける。

「ぐっ…!!調子に乗るなっ!!」

パイルドラモンの拳を受け止め、背負い投げの要領で地面に叩きつける。

「くたばれ!!」

地面に叩きつけたパイルドラモンに向けてドラモンキラーを振り下ろす。

「ちっ!!」

パイルドラモンはブラックウォーグレイモンに足払いをかけ、体勢を崩して両腰の生体砲を構えた。

「くたばるのはお前だ!!デスペラードブラスター!!」

零距離で放たれたエネルギー波にブラックウォーグレイモンが飲まれていく。

ブラックウォーグレイモンはエネルギー波を両腕を交差させることで防ぐがドラモンキラーを失ってしまった。

「お前の厄介な武器はぶっ壊れた!!ここから先は単純な殴り合いだ!!」

「…来いっ!!」

パイルドラモンとブラックウォーグレイモンが同時に駆け出した。

パイルドラモンの蹴りがブラックウォーグレイモンの側頭部に入り、ブラックウォーグレイモンの拳がパイルドラモンの腹部に入る。

「「ぐ…おおおおお!!」」

拳と蹴りの応酬が続く。

パイルドラモンの外郭に罅が入り、ブラックウォーグレイモンの鎧の一部が吹き飛ぶ。

負けない。

今の2体の気持ちはただこれのみ。

しかし、凄まじい速度で成長し続けるブラックウォーグレイモンにパイルドラモンがついて行けなくなり、とうとう完全に力負けして吹き飛ばされた。

「貰ったぞ!ガイアフォース!!!」

吹き飛ばしたパイルドラモンに向けて放たれた渾身の一撃はパイルドラモンに見事に直撃した。

それを見たブラックウォーグレイモンは勝利を確信するが…。

「うおおおおおおおおお!!!!」

爆煙から飛び出したのは外郭に無数の罅が入り、全身に傷を負ったパイルドラモン。

「何!?」

目を見開くブラックウォーグレイモン。

パイルドラモンは全て力を拳に込め、ブラックウォーグレイモンの横っ面を殴りつけた。

「ぐはあ!?」

勢い良く吹き飛ばされるブラックウォーグレイモン。
強く背を打ったが、直ぐに起き上がって構えた。

「ぐっ、貴様…!……?」

ブラックウォーグレイモンはパイルドラモンの異変に気付いた。

パイルドラモンのエネルギーがどんどん萎んでいくことに、とうとうデジクロスが解除され、進化まで解除されてしまった。

「く、くそ……エネルギー切れかよ…」

「…終わりか…少し名残惜しいが…」

悔しそうに言うブイモンと悔しそうにブラックウォーグレイモンを見つめるワームモン。

ブラックウォーグレイモンは深く息を吐きながら構えを解いたが、気を抜いた途端に体中に激痛が入る。

「っ…」

「大輔ーっ!!」

救援に来た京と伊織。

それを見たブラックウォーグレイモンはこれ以上の戦闘は体が保たないと判断して心に満ちる何かを感じながらこの場を去った。

こうして元の世界に帰って初めての敗北をした大輔達であった。

「ブラックウォーグレイモンか…強かったな…よし、決めたぞ」

大輔は去っていくブラックウォーグレイモンを見つめながら何かを決心したように呟いたのであった。 
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