戦国異伝供書
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第二十五話 天下の政その四
「松永めと同じく奸悪無限と言われていますが」
「それでもじゃな」
「話してみますと」
「特に悪くなかろう」
「はい、謀殺は多かったですが」
それでもとだ、平手も言うのだった。
「殺した者は全て手篤く葬り」
「民への政もな」
「悪くなく家臣衆も大事にしていて」
「それでじゃ」
だからだというのだ。
「わしもよいと思う、それを思えば毛利はどうじゃ」
「あの御仁ですか」
「むしろ宇喜多よりであろう」
「はい、謀神と言われて」
「多くの謀を用いてな」
それでというのだ。
「殺した者も多かったな」
「実に」
「それを言うと同じじゃ」
毛利元就と宇喜多直家はというのだ。
「まさにな、だからな」
「あの者もですか」
「用いてもな」
それでもというのだ。
「悪くないと思ってな」
「それで、ですか」
「用いることにしてな」
「実際にですな」
「用いてな」
それでというのだ。
「これからもじゃ、特に子は重く用いたい」
「まだ若いですが」
「あれは一本気でよい者じゃ」
「だからですか」
「用いたい、しかしどうもな」
秀家についてだ、信長はさらに話した。
「あの者は意固地じゃな」
「確かに。それがしから見られても」
「意固地じゃな」
「はい、そこがですか」
「わしは気になっておる」
こう言ったのだった。
「意固地に過ぎるとな」
「よくありませぬな」
「佐吉もそうじゃな」
「あの者は意固地に過ぎまする」
平手から見てもだ、石田のそうした気質は問題だった。
「どうにも」
「左様じゃな」
「はい、それがです」
「わしはな」
「難しいな」
「左様です」
まさにという返事だった。
「あれでは」
「あ奴が困る」
「そしてですか」
「あの者もじゃ」
秀家もというのだ。
「非常にじゃ」
「難しいな」
「はい、それでは」
「あの者は」
まさにというのだ。
「そこを注意してじゃ」
「なおしてもいき」
「やっていく、あと今佐吉の名も出たが」
石田のことも言うのだった。
「あの者もな」
「あれでかなりましになりましたが」
「ましじゃ」
その程度だからだというのだ。
「それでじゃ」
「これからもですか」
「うむ、注意してな」
信長自らがだ。
「それでじゃ」
「なおしていきますか」
「うむ」
それでというのだ。
「あ奴もな」
「そうしてですな」
「あの意固地さをな」
「柔らかくしていきますか」
「わしにずけずけと言うのはよい」
遠慮せずにだ、石田は厳しい諫言も躊躇しないのだ。
「それはな」
「しかしですか」
「うむ、それでもな」
「意固地はよくないですか」
「あ奴は退かぬ」
自身の意見を曲げないというのだ。
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