戦国異伝供書
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第二十五話 天下の政その一
第二十五話 天下の政
信長は岐阜に戻ると早速この度の戦で領国とした国々の政をはじめた、彼は検地と刀狩りを行わせ。
戦の後始末もした、武田も上杉も完全に織田家の中に組み入れられた。
そしてだ、その政に加わるが。
信長は信玄や謙信、元就それに氏康達と話した後で平手に唸って言った。
「わしは天下の才達を得た」
「武田殿に他の方々ですな」
「うむ、敵としては強かったが」
「家臣になればですか」
「頼りになる」
「では天下の政も」
「思っていた以上にはかどる」
確信を以ての言葉だった。
「有り難いことにな」
「左様ですか」
「そうじゃ。しかし長い間留守にしておったが」
それでもとだ、信長は戦の間岐阜城に残り留守を守るだけでなく政の全てを取り仕切っていた平手の功にも言及した。
「よく守ってくれた、政もな」
「それもですか」
「万全に整っておる、お陰でじゃ」
平手が留守の間しかと政をしていてというのだ。
「民も落ち着いておるし兵糧や武具も万全に届いておった」
「そのこともですか」
「よくやってくれた、やはりわしの留守を守るのは爺と勘十郎じゃ」
都にいる信行もというのだ。
「二人でよくやってくれた、領地も乱れておらぬしな」
信長はこのこともよしと述べた。
「全てはお主達の功、褒美は次の論功の時に楽しみにしておくのじゃ」
「有り難きお言葉」
「その様にな、これで天下は残るは九州と伊代のみか」
「あと少しですな」
「そうなった、ここで一気に天下統一という声もあるが」
「それは、ですな」
「爺はどう思うか」
平手の目を見ての問いだった。
「このことについて」
「確かに統一を行う力はあります」
今の織田家にはとだ、平手は答えた。
「充分以上に。それこそすぐに兵を向ければ」
「伊代を手に入れてな」
「九州も一気に出来ますが」
「しかしじゃな」
「はい、それを行う前にやはり」
「政じゃな」
「今は領地が増え過ぎました」
それ故にとだ、平手は信長に答えた。
「ですから」
「天下統一はじゃな」
「はい、それは」
どうにもとだ、平手はさらに述べた。
「急がずに」
「そうしてじゃな」
「領地の政に専念すべきです」
「とかく領地が増えたしのう」
「都は完全に手中に収めました」
幕府を倒してだ。
「朝廷そして都の町衆、寺社のことがあり」
「本願寺も降したしな」
「大坂、他の本願寺の所領を治め山陽と山陰に」
「甲信、北陸、関東と奥羽とな」
「相当に増えましたので」
「それも一気にな」
「ですから」
「その政に暫くは心を砕くべきです」
こう信長に言うのだった。
「若し殿が攻めようと言われていたなら」
「止めておったか」
「必ず」
そうしていたというのだ。
「今でも」
「そうか、やはりな」
「はい、検地に刀狩りにですな」
「田畑も街も整え堤に道、橋も築いてな」
新たに領地となった国々もというのだ、織田家のこれまでの領地と同じく。
「治める、ただそろそ大名達の力を増やしてな」
「藩ですか」
「わしがこの前言っていたが」
「大名達を藩の主にし」
「藩を治めさせる」
「藩の力を強くしますか」
「今は織田家が全ての領地を治めておる様なものじゃがな」
それをというのだ。
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