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人徳?いいえモフ徳です。

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三十三匹目

お姫様抱っこしていたクーちゃんをおろす。

「んー…! 広々してて気持ちいいわ!」

原っぱを踏みしめたお姫様の第一声はそれだった。

「く、くーちゃんいいの?」

「いいのよ。シラヌイがなんとかしてくれるんでしょ?」

いくら僕でも出来ることと出来ないことがある。

「私リベレーソの外に出るの初めてなのよねー」

クーちゃんはリベレーソを覆う城壁を遠目に言った。

「僕もこの前までは出たことなかったよ。
っていうか僕だって二度めだよ」

くーちゃんと会ってから2月くらい経った。

で、今日はお母様もお婆様もボーデンも会議があるらしくて授業が無かった。

そんな中、クーちゃんが唐突に城を抜け出したいなんて言い出したのだ。

えっと、はい。モンスターを倒したいそうです。

クーちゃんをお姫様抱っこして風魔法で城から翔んできました。

僕と一緒に色々な魔法を習っていると、当然攻撃魔法にも触れる。

クーちゃんはそれを試したいそうだ。

城の中庭でやる模擬戦とは違う。

全力での魔法行使。

気持ちはわかる。

それにお姫様のご命令だ。

ボクハサカラエナイ。ホントダヨー。

一応自分に追跡魔法をかけて媒体の水晶と書き置きをお婆様の部屋に置いてきた。

「クーちゃん。いくら風魔法で空を翔べるからって、直ぐには帰れないからね?
少し魔法を試したら直ぐに帰るよ」

「わかってるわよっ…もうっシラヌイは心配性なんだから…」

会議が終わる前までには帰らないといけない。

時間的には二時間くらい。

スライムを数匹狩っても余裕の時間だ。

「あ、ほら、あそこにスライムがいるよ」

ふにょふにょしてる青いヤツを指差す。

「先手必勝よ!」

クーちゃんが手を正面にかざす。

「集え世界の吐息! ホリゾンタルサイクロン!」

クーちゃんの魔法でスライムの粘液が吹き飛ばされる。

と同時にかなりの土砂が巻き上げられた。

「クーちゃん。やりすぎじゃない?」

明らかに威力過剰だ。

「気持ちいいからいいのよ!」

さいですか…。

スライムが小さくなったところで、クーちゃんは懐からナイフを出した。

僕が毎晩作っているディアマンタイト(ダイアモンド)製ナイフだ。

「切り裂け! 風の刃! クロススラッシュ!」

クーちゃんがナイフを右左と切り下げると、十字の風の刃がスライムを分割した。

「あーあ…核砕いちゃったね…」

「あ、そうだったね。討伐証明どうしましょうか?」

「欠片でも拾っていこうか」

スライムのところまで歩いて砕けた核を寄せ集める。

「ま、こんな物でしょ」

「ねぇシラヌイ。今度はシラヌイが倒してみて?」

「いいよ」

少し離れたところのスライムが眼に入った。

「ジェネレート エアリアルカノン!」

風魔法でスライムまで真空の道を作る。

そしてその筒の中に、氷の弾を作る。

大きさは直径10センチだ。

「轟け大気の咆哮!」

筒の後ろ側を解放すると、そこから空気が流入して氷の弾を押し出す。

高速で飛翔した弾がスライムにめり込んだ。

作り出した弾に、支配権をもつ水に意識を集中する。

「バースト!」

ボッ!と音がした。

氷が一気に気体になったのだ。

球の体積と重さは半径三乗の四倍。

125×4…つまり500グラム。

水は1molで18グラム。

20としてやく25mol。

そして、1molの気体の体積は22L。

これも20と考えて500L。

体内の小さな球がいきなり500倍以上に膨らみ、スライムは粉々に飛び散った。

「わ…すごい…」

クーちゃんがキラキラした眼でこちらを見ていた。

すごく照れる。

「みにいこっか」

爆発した地点までいくと、核が地面にめり込んでいた。

「回収回収」

めりこんだ核を取り出したあと、追加で10匹くらい狩った。

昨日の雨で増えたのだろうか?

全ての核を回収し終えると、クーちゃんがうしろから寄りかかった。

「シラヌイ~つかれたー…」

そんな事だろうと思ったよ…。

クーちゃんをお姫様抱っこする。

かなり軽い。

「じゃぁ、翔ばすからね」

背中にロボットアニメみたいなスラスターをイメージする。

「風よ風よ。地の束縛に抗う力を我に与えよ、我に空の翼を授けたまえ」











ギルドで討伐報告をした後アップルパイを買って部屋に戻るとお婆様がいた。

ミッチリ一時間正座でお説教だった。

「ツェツィーリアやトレーネには黙っておいてやろう。じゃが、もう二度と勝手に出ていくでないぞ。言えば連れていってやるゆえな」

こうして僕らは週一くらい、多いときは三回、リベレーソの外でスライム狩りをする事になった。

side out













説教がおわって。

「っく…この正座って姿勢とっても脚が痛いわ」

「でしょ?」

シラヌイは後ろに回り込むと、クーコの脚をつつき始めた。

「ぴぃっ!?」

「それそれー」

「や、やめっ! やめなさいシラヌイ! ぴぃっ!?」

「シラヌイよ。程々にするんじゃぞー」

「タマモ!?」

結局シラヌイは引き際を見誤りクーコを泣かせてしまった。

結果シラヌイのアップルパイはクーコの御腹に収まったのだった。

「肥るよ?」

「シラヌイのバカー!」

「懲りんのぅ……」
 
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