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許されない罪、救われる心

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114部分:第十一話 迎えその三


第十一話 迎えその三

「それじゃあ。水無さん」
「ええ。じゃあ私も名前で呼ばせてもらうわね」
 こう話してだった。実際に読んできたのだった。
「如月さん」
「はい」
 その場所に頷いてだった。そうしてであった。
 水無は如月といつもいるようになった。彼女以外にもだ。
 背が高く髪が半ば白くなっている医師もいた。白衣がまさに彼が医師であることを知らしめていた。その彼もまた如月に名乗ってきたのだった。
「谷崎です」
「谷崎さんですか」
「はい、谷崎師走です」
 こう名乗るのだった。
「宜しく御願いしますね」
「いえ、こちらこそ」
 力のない顔で応える如月だった。
「それじゃあ」
「はい、それでは何かあったら来ますので」
「いいんですか、それで」
「構いません。私か山崎さんどちらかがいつも病院にいますから」
 師走は微笑んでこう話してきた。
「コールでいつも呼んで下さい」
「いつもですか」
「はい、そうです」
 また話してきた。そしてだ。
 二人は本当に何かあれば如月のところに来るようになった。本当に病院にはいつもどちらかがいてくれていた。
 歩けはするのでトイレ等は一人で行く。如月が今いる場所もわかった。
 病棟が幾つもある病院だがその中でもかなり外れにある病棟の中の病室だった。そこにはあまり病人はいなかった。彼女がいるのは二階の端だった。
 人と会うこともない。とにかく寂しい場所だった。
 そしてたまに行き交う看護士や医師と会うとだった。こうひそひそと言われた。
「あの娘なのね」
「そうよ、いじめのね」
「話には聞いてたけれどね」
「自業自得よね、ああなったのも」
「そうよね」
 そしてだ。こう言われるのだった。
「死ねばよかったのにね」
「そうよね、本当にね」
「何でまだ生きてるのよ」
「さっさと死ねばいいのにね」
 この言葉は如月の耳にも入った。そしてだった。
 遠くからだ。あの声が聞こえてきたのだ。
「いじめを許すな!」
「何処にいる!」
「何処までも追いかけてやるぞ!」
「ここにまで・・・・・・」
 如月はその声を聞いてまた黙ってしまった。そしてだった。
 一人で自分の病室に入ろうとする。しかしここで。
 水無が来てだった。彼女に笑顔を向けてくれたのだ。
「おかえり」
「あの、今来たんですか」
「そうよ。ちょっとね」
「ちょっと?」
「果物食べる?」
 こう笑顔で言ってきたのである。
「林檎好きかしら」
「はい」
 果物は何でも好きだ。昔は家族皆で食べた。弥生ともいつも食べていた。しかし今はだ。家族も弥生も離れもうそんなこともなくなってしまったのだ。
 だが今だ。水無がだ。その林檎をどうかと言ってきたのだ。
「好きですけれど」
「それじゃあね。一緒に食べましょう」
 水無はまた笑顔で言ってきた。
「サンつがるね」
「それなんですか」
「それとジュースもね」
「ジュースもですね」
「そう、アップルジュースよ」
 こちらも林檎だった。
 
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