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許されない罪、救われる心

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110部分:第十話 襲撃の後でその九


第十話 襲撃の後でその九

「それにあの娘がこれ以上辛い、酷いことになるのも嫌。幼稚園の頃からずっと一緒で笑ったり泣いたりしてやってきたのよ」
 それが二人の関係だった。まさに親友同士なのだ。
「助けてもらってきたし」
「そうだったのね」
「だから。私行って来る」
 また神無に話す。
「そういうことだから」
「わかったわ」
「いいのね」
「まだ夢に見るわ」
 神無は顔を俯けさせ暗い顔で話す。
「何かを食べてる時も部室にいてもおトイレに入っても」
「思い出すのね」
「けれどそれでも」
 まは話すのだった。
「何度も言うけれど私には貴女達がいてくれたから」
 弥生を見ての言葉だった。
「だから助かったから。誰もが助からないと」
「駄目なのね」
「子供の頃誰かに言われたの」
 その時だというのだ。
「その時に。人は誰でも助からないといけないって言われたから」
「じゃあ如月達は」
「許せない、私」
 また本音を話した。
「それでも今村さんが行くのなら」
「いいのね」
「私に止める資格はないわ」 
 神無は言った。
「だから」
「有り難う」
 弥生は神無に対してこくりと頷いた。
「じゃあ今から」
「ええ」
 こうしてであった。弥生はその日の放課後如月の家に向かった。彼女にとっては昔から。それこそ物心ついた時から通っている馴染みの場所である。しかし今は。
「え・・・・・・」
 変わり果てたその家を見て唖然となる。庭もガレージも荒らされ壁は落書きがペンチやチョークで書き殴られている。実に酷い有様だった。
 話には聞いていた。しかしだった。
「ここまでなんて・・・・・・」
 彼女が知っている場所ではもうなくなっていた。しかしであった。
 それでも家のチャイムを鳴らした。だが返事はなかった。
「いないのかしら」
 しかし扉は微かに開いていた。家の出入り口のその扉がだ。
「おばさんいるのかしら」
 如月の母も彼女にとっては非常に馴染みの人である。彼女にとっては親戚も同じだ。その人がいるかと思って家の中に入るとだった。
「・・・・・・何これ」
 そこはより無惨な有様だった。何もかもが荒れ果てており人が住んでいないかの如きであった。掃除はされておらず家具も何もかもが壊されてだ。まさに廃墟であった。
 その奥で誰かを呪う言葉が聞こえてきた。二人いた。
「お姉ちゃんのせいだ」
「そうよ、あの娘のせいよ」
 この声は弥生もよく知っている声だった。それは。
「おばさんに睦月君?」
 その通りだった。彼等であった。
 二人はだ。弥生が入って来たことに気付かずさらにそこで話していた。
「僕もう学校でいじめられてばかりだし」
「お母さんもうパートの勤め先も」
「そう、二人共」
 弥生はあらためて如月の家族まで受けている災厄のことを考えさせられた。
「如月のことで。あの」
「えっ!?」
「誰なの!?」
「私です」
 驚きの声をあげる二人に言った。
「私ですけれど」
「弥生さん?」
「弥生ちゃんなの」
「はい」
 こう二人に返す。
 
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