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許されない罪、救われる心

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107部分:第十話 襲撃の後でその六


第十話 襲撃の後でその六

 雨に自分の血が混じりそれが溜まりとなるその中でだ。彼女は思った。
(これで死ぬのかな、私・・・・・・・)
 そう思ったがそれでもだった。もうそれに恐怖やそういったものは感じなかった。安らぎのようなものさえ感じていたのが今だった。
 だがそこに偶然人が来てだった。救急車が呼ばれた。だがその時には彼女はもう意識がなかった。深い闇の中に崩れ落ちてしまっていた。
「如月、誰かにね」
「やられたらしいよ」
 次の日だ。文月と霜月は沈みきった顔で長月に話していた。
「相手が誰かわからないけれど」
「重傷なんだって」
「そうなのかよ」
 長月も死んだ目で二人の話を聞いていた。
「死にそうなのか?あいつ」
「危ないらしいわ」
「それもかなり」
「そうか。じゃあうち等も」
 こう考えずにはいられなかった。しかしだった。
「もうそうなりたい」
「そう思う、私も」
 二人の目もまた死んでいた。
「けれど楽になっても」
「皆許さないから」
「ああ、そうだよな」
 若し死んでも岩清水はまだ攻撃してくる。このことが嫌になる程わかっている。つまりだ。彼女達は死ぬことすら安らぎではなくなっていたのだ。
「それにしても如月」
「助かって欲しいけれど」
「だよな」
 こう話す三人にだ。また岩清水が攻撃を仕掛ける。
「さて、一人やられたね」
「ああ、誰がやったか知らないけれどな」
「それでも義挙っていうのか?」
「そうよね、正しい行いよ」
「自業自得よ」
 クラスの殆どの人間が如月のことを笑っていた。
「それで病院に入院してるって?」
「何処の病院なんだろうな」
「もう死ねばいいのに」
「そうそう」
「それでだけれど」
 ここで攻撃の矛先を向けた岩清水だった。
「あと三人いるね」
「ああ、次は御前等だよ」
「何が起こるか楽しみにしていろよ」
「その時何があるかな」
「楽しみよね」
「もう学校来るなよ」
 こんな風に言われるのだった。それからだった。三人は本当に学校に来なくなってしまった。だが家には連日連夜岩清水が主導するデモ隊が来てである。そのうえで責められ続けるのだった。
 如月が襲われた話は当然弥生と葉月の耳にも入った。二人は学校の自動販売機の前にいてだ。そこでそのことを話していた。
「聞いてるよね」
「ええ」
 弥生は葉月のその言葉に頷く。飲みものは飲んでおらず手にも取っていない。
「如月よね」
「危ないらしいよ」
 まずはこう言う葉月だった。
「身体中、特に頭を何か鈍器で殴られていてね」
「それでなのね」
「出血も酷くて。もう少し発見が遅かったら危なかったらしいよ」
「そんなになの」
「それで意識がまだ戻らないらしいんだ」
 葉月はこのことも弥生に話した。
「ひょっとしたらこのまま」
「如月が・・・・・・」
「どうする?それで」
 ここで葉月は弥生の顔を見た。弥生は俯いてだ。考える顔になっていた。これまで彼女がしたことがないまでのだ。深く考える顔だった。
 
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