蒼穹のカンヘル
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三十七枚目
「あっはっはっはっはっは! 愉快愉快!」
「母上!」
あの後、駆けつけたジュスヘル達に訳を話すと、ジュスヘルに連れられて八坂(敬称なんてつけてやるもんか)の部屋に向かった。
「八坂、悪戯が過ぎるぞ」
「なぁに、ちょっとしたサプライズだ。それにどうやったかはともかく混沌も変化を覚えたようだし結果オーライだろう?」
そうだけどもぉ…。
「まぁまぁ、そう怒るな九重」
「ぅー……九重は汚されてしまいました!」
女性陣からの視線が痛い…!
「待て! 俺は尻尾の先を触っただけだ疚しい事は何もないぞ!」
「いえ、そこは心配していません。篝が奥手で恥ずかしがり屋のチキンなのは皆知っていますから」
「酷くない!? ねぇ酷くない姉さん!?」
「ぅー………篝! 償いをするのじゃ!」
「えーと…小指詰めればいいですか内臓ですか?」
「翼を触らせろ! 今夜は九重の布団になるのじゃ!」
あー、はいはい。そういう事ね。
って汚されたとか言ってる割に一緒に寝るのは良いのかよ…。
まぁ、モフモフの抱き枕とでも思うか…。
部屋に戻ると人数分の布団が敷かれていた。
「モフモフなのじゃ!」
早速九重に羽をねだられた。
「んー…部屋狭くない?」
「狭くないよ。篝とくっつけるし」
「そうね、カガリの羽を触れるもの」
「………………………」
ヴァーリとリーアちゃんはOKみたいだ。
姉さんは無言で羽をモフっている。
ジュスヘルは部屋のすみで黒歌といつの間にか来ていた白音(リーアちゃんが召喚したようだ)を膝の上に乗せて撫でていた。
平和だ…。
「カガリ、明日は何処にいきましょうか?」
「んー? 街に出るの?」
「当たり前じゃない!」
リーアちゃんは元気だなぁ…何か良いことでもあったのかな?
「キョートよキョート!」
あ、そっか。この子こんなノリなんだ。
道理でソワソワしてる訳だ。
ふむ…リーアちゃんくらいの年で楽しめるスポット…………。
あ、そうだ。
「んー…九重」
「なんじゃ篝?」
「明日映画村行ける?」
「行けるが……映画村? 鹿苑寺や慈照寺ではなく? 清水寺も行かんのか?」
「んー…リーアちゃんがもうちょっと大人だったらそのチョイスもいいけどねぇ」
「もうっ!カガリ!私は大人よ!」
「ムキになってる時点でリアスはまだ子供ですよ」
「朱乃まで!」
リーアちゃんは可愛いなぁ。
プクって頬を膨らませている。
おっとこんな所に魔王印の小型カメラが…。
後でサーゼクスとの交渉道具にしよう。
「映画村行こうよリーアちゃん。お姫様の着物あるよ」
「ほんとう!?」
「うん」
「行く! 行ってみたいわ!」
「だそうだよ、九重」
「うむ。映画村じゃな。まぁ、よかろう」
俺は忍者でもやろうかな…。
「ふぁ…。もう十時だよ。そろそろねよ?」
欠伸をしながらヴァーリが言った。
体はデカくなったが、まだ中身に引っ張られている。
そこは可愛い。
体は可愛くねぇけど!
布団に入ると、隣に九重が潜り込んできた。
そういえばそうだったな…。
翼で九重を包み込む。
「おやすみなさい。九重」
「うむ………おや…す…み……」
くぅ…くぅ…と寝息をたて始めた九重。
頭を撫でるとくすぐったそうにかぶりをふる。
「ぬくい」
温かいぬくもりを抱き、暗転した。
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