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ソードアート・オンライン〜Another story〜

作者:じーくw
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マザーズ・ロザリオ編
  第269話 ユイの探求心と京都旅行

 
前書き
~一言~

明けまして、おめでとうございますっ! 2019年もこの二次小説をどうかよろしくお願いしますっ!



と言う訳で、新年に入って一話目! 何とか投稿できました! 本当は年末に~と思ってたんですが、ちょっと師走は忙しすぎて……、それに暁様の方でも不具合があったみたいで……。で、でも何とか投稿できてよかったです!

この話は、しょうしょう ピンクな話……です! そーいうのって文字にするの凄く難しい……… 苦笑



何とかこちらも完成できてよかったですw

さてさて、話は変わりますが、これにてマザロザ編が終了です! (厳密にはもう終わってましたがw)次回から新章オーディナルスケールになります!

2019年もガンバリマスので宜しくお願いしますっ!!



                                 じーくw
                          

 
~新生アインクラッド 第22層 キリトとアスナの家~


 大会も終わり、キリトとアスナの家で盛大に打ち上げを開催。

 ネット放送局《MMOストリーム》で生中継されていた統一トーナメント。

 中でも準決勝、決勝戦は 永く永く語り継がれるであろう程のものだった。ひっきりなしに再放送も繰り返され、その盛り上がりは世界中が震えた、とも称され終了後も暫くは継続されていく程だった。

 元々広く名の通っていたRYUKIの名は勿論の事、ユウキの名もALOの枠を超えて ザ・シード連結体(ネクサス)に広く鳴り響き、その決闘シーンは、様々なPV動画でも使用されたとか。ユウキ達は大いに楽しみ、方やリュウキは大いに頭を悩ます結果になったのは言うまでもなかった。

 至る所で戦ってる姿が放映されているのだから。ため息吐くところを何度も慰められたりもしている。キリトも同じくだ。準決勝でユウキと殆ど互角の戦いを繰り広げ、タイムアップ時の僅かなHPの差で敗退したのだから、この3強が今大会の見どころ~ と言うところで何度も何度も何度も………。

「……肖像権の侵害だー、と言った感じで、ダメ元でいろいろと告発してみるか? ALO内ならまだしも、他の世界にもか。……せめて『使って良いですか?』みたいなの、一言くらいあっても良いと思うんだが」
「デジタルタトゥーみたいなもんだから、終わりなんか無いと思うぞ? あー、でもリュウキなら、終わらしそうだけど、……色んな意味で」
「何だよ、色んな意味で終わらすって。それに言ってみただけだ。あんな楽しそうにしてるのに、無粋な真似はしないよ」

 本当に対照的に楽しそうにはしゃいでいるユウキ達に目を向けた。
 まだ熱も冷め止まぬ~ とはこのことで、早速再戦オファーがきた。レイナ曰く、『玩具を前にした子犬みたいっ』との事。言われてみれば、(見えない)しっぽを振り振り~と左右に振らせて興奮しているのが見て取れる。

「早速の再戦のオファーを受けた時は少々げんなりしたけどな……」
「うへぇ。それは判る気がする。ユウキを相手にするのは かなりしんどいし」
「当のユウキはあの様子だ。ほんと疲れ知らず、と言うヤツだろうか……」
「確かになぁ……。子供の様にはしゃぐ姿は微笑ましいって思うけど、パワーがヤバすぎるから」

 キリトの苦笑いを見て、よくよく考えてみると、確か子供の体力は凄まじい、と聞いたことがリュウキもあった。沢山遊んで遊んで、とはしゃぎ、それに合わせて付き合っていた大人があっという間に音を上げる事も多々あるらしい。

 実をいうと楽しかったのはリュウキ自身も同じだ。それに正直な所 ユウキに付き合うのは吝かではない。

 ……でも、それ以上に周りが異様な盛り上がりを見せるので、正直躊躇しているというのが実情。何せ何処から聞きつけたのか、アルゴ辺りの宣伝? もあって、更に広がった事があった。そんなことが今までも体験しているから身に染みていた様子。それは主に旧SAOの世界ではあるが。
 因みに、アルゴを問い詰めようとしても、明確な証拠が無いから暗に責めれなかったりもしていたが、態度に出すと(冷たくすると)一気に沈静化したのは当然の話。
 
「おーい りゅ~きぃ~! き~りとー! そっちに行ってないでこっちに来なよー。わたしらがいる所で秘密の密会なんてさせないぞー」

 大きな声がしたと思って振り返ってみると、リズが声のと同じくらい大きく手招きをしていた。 男同士の秘密の密会! と何だか妙な興奮をしている面々もいた様だが、それは置いておこう。
 とりあえず、呼ばれているのでこれ以上何かを言われる前にキリトとリュウキは合流。

「さぁさぁ、今大会のトップ3の内の2人がやってきましたよー! はい、はくしゅーー、はーーくしゅーーー!」

『わーわー!』 
『まってましたーー』
『すごかったよーーー』

 ぱちぱちぱち~ と拍手で迎えられた。こういった感じで迎えられるのは、旧SAOの世界から、現実世界への帰還後 初のオフ会以来だろうか。

「えっへへ~ いえーーいっ! ほーら、リュウキとキリトもーー」
「うぇっ?」
「がんばれーキリト―」
「こら! 逃げようとするなリュウキ!」

 ユウキがキリトの手を掴んで、部屋の皆の中心へと引っ張る。しれっと、キリトを押し出すようにして影に隠れるリュウキだったが、そうはいきません。そもそも、今大会の優勝者。今回の主役と言っても良い存在なので、隠れられる筈もありません。

「そーだよ! ほーら、りゅーきっ!」
「わっ、わかった、わかったから」

 ユウキは片方の手にキリト、もう片方にリュウキと、2人の間に挟まれてにこにこと笑いながら2人を引っ張った。
 観念したリュウキは、成すがまま連れていかれて、簡易的ではあるが 作った壇上の上に立つと、ユウキは2人の手を持ち上げた。

「えへへ! このチームで上位3位まで独占しちゃいましたぁー! がんばったよー!」

 ユウキの笑顔に皆は歓声を上げる。
 そのまま、打ち上げがスタートした。





 皆飲み食いの大打ち上げ。
 主にデュエルについての話題が中心になっていたが、徐々に話題は広がっていく。皆も常に笑顔だから、賑やかなのは言うまでもない。

 そんな ほんわか、心温まると言っていい空間に不穏な気配を漂わせる男が約一名。
 不穏な気配~は置いといて、純粋に一番最初に気になったのはユイだった。

「リュウキおにいさん、おにいさん」
「ん? どうした? ユイ」
「クラインさんは何をしてるですか?」

 ユイは、ひゅんひゅん、とリュウキの肩の上にのって聞いた。いわれて初めて気づいたリュウキはクラインの方に注目する。

「ふむ……」

 それはクライン。
 先ほどまで、ユウキとの戦いを、熱く、熱く語っていたクラインだったが、いつの間にか、皆の輪から少しだけ離れて、いつになく真剣な顔をして、呼び出したウインドウを眺めていた。話題がユウキ中心になった、軽くリズ辺りに一蹴されちゃったから、ふてくされてるのでは? と最初は思ったのだが、そんな気配はない。真剣な顔つきだった。

「何してるんだ? クライン。……ん? 動画? 今大会のか?」

 覗き込んだ……とまではいかないが、ユイの疑問を解消させてあげようとクラインに近づくと動画を見ているのが分かった。

「おう、リュウの字! 見てみろよ、これ! ほれ、この子!」
「ん……。ああ、確か水妖精族(ウンディーネ)のレベッカ、だったか」
「んだよ。知ってんのかよ!」
「なんだ? 知らなかったのか?」

 顔の広さはこの世界で随一。そして 人の顔を覚えるのも得意であるリュウキは普通に答え、クラインは何処となく悔しそうな声を上げていた。そんなクラインの事が判らないリュウキ。(基本的に判らない事は多いが)

「って、話の肝はそこじゃねーよ」
「そんなもん知らん。……何してるんだ?」
「ほれほれ、見てみろって、このレベッカちゃんの胸! でっかくて ぽよんぽよんで、かーーっ、たまんねぇなぁ!」

 何か熱弁しだした。
 声量自体は、先ほどよりもかなり小さい。皆に聞こえないようにさりげなくしているのだろう。そもそも、こんな打ち上げの時にそんな話題を出した時点で、周囲の視線を一気にかっさらってしまう事くらい目に見えているのはクラインとて判る事だ。勿論痛い視線が。
 でも、『男の性!』とか何とか言って止められないらしい(後日談)

「…………」

 そんなクラインを見て、寒い視線を向けるのはリュウキ。ユイの為に 聞いたんだが、どう答えてあげれば良いのか判らなくて、更に何でそんなのを今考えてるのかもわからず、単純に試合内容を見て研究したりしているのでは? と思った自分が情けなくも思ってしまっていた。

「なんだよ、その顔は! 良いじゃねぇかよ、ちょっとくらい! そもそも、そんな際どいアングルじゃねーし、狙って撮った訳でもない公式なヤツだぜ? 無慈悲で厳しいハラスメントコード様も、こうした動画くらいはお咎めなしにしてくれるぜ」
「はぁ………」
「無言でため息吐くなっての! いーじゃんいーっじゃん! 男の子のロマンじゃねーか」

 ここの会話を皆に聞かれてないだけ良かった、とほっとしている最中だった。
 ユイが直ぐ傍にいるコトを忘れてしまっていて、ひゅんひゅん、と飛んで宙にホバリングした状態でクラインの方を向いて首を傾げた。

「………? クラインさんは女性の胸部が好きなんですか?」
「っ……、ゆ、ユイ??」
 
 慌ててリュウキがユイを掴もうとしたんだが、クラインの返答の方が早い。

「おうっ 男の子なら、みーんなそうさ!」
「パパも、ですか? パパやおにいさんも?」 
「その通り! 嫌い~ なんて言うやつに嫁さんなんか出きる訳ねーってよ! なー、リュウの字!」
「……コラコラコラ。ユイに変な事教えるなよ」

 変な方向へともっていこうとするので、慌てて止めようとするリュウキ。そこへキリトも合流。タイミングが良いのか悪いのか判らない。

「何の話をしてるんだ? 3人で」
「あ、パパ。クラインさんが教えてくれたんです。男の人は女性の胸部が好きだ、と。ですから、パパも好きなんですか?」
「胸部、って…… なっ!? お、おい。何変な事ユイに教えてんだよ。リュウキも止めろよ」
「……今まさに止めてた所だが、……探求心が強すぎるよ。キリト。パス」
「だから、んなキラーパスばっかりするなよっ!!」

 キリトとリュウキが言い合ってる所に、アスナやレイナと言った女性陣が急接近。
 そして、こんな時に限ってクラインはまるで閃光のような速さで、外へとエスケープ。ちゃっかり他のメンバーには風林火山のメンバーからの呼び出し~と語って。

「皆で何を話してるの??」
「あはは。キリト君とリュウキ君、またケンカ? ほんと仲良いんだからー」

 アスナとレイナの接近に正直冷や汗が止まらないキリト。このタイミングで、女性である2人がやってきたら どうなるか。ユイが何を話すか、……わかる。判りたくないが、止める術が思い浮かばない所で、ユイからの地雷、爆弾投下。

「パパ、おにいさん。ここにいる皆さんの中で誰の胸部が一番好きですか?」
「きょう、ぶ……、きょうぶ、って……」
「……え、えええっ!?」

 ユイの『皆さん』と言う言葉には、アスナやレイナだけではなく、本当にこの場の全員。いつものメンバーに加えて、スリーピングナイツの皆も含めた大所帯。おまけに女性率が高いのも悩ませ所だ。

「キリトくん……、それにリュウキくんも……? 私たちから離れてユイちゃんに何を教えてたの?」
「そうだよ……! そ、そういうのを教えるなんて……っ」

 呆れ顔、と言うより冷ややか顔? いえいえ、怒った顔? 兎も角 あまり宜しくない顔をされてらっしゃる事がよく判る。

「断っておくが、オレじゃない。クラインがな……」

 と、リュウキは掻い摘んでではあるが、弁解。
 被害少なく終わらせたかったのだが、掻い摘んで説明する最中、メンバー集結。おまけにちゃんと説明をはじめから聞いてなかったから。

「リュウキ……? キリト……?」
「胸部って、胸の事……よね?」
「胸、おっぱいの話をしてたなんてっ! も~ えっちだなー。2人は。男の子だから~っておっぱいの話はダメだよー?」
「……ユウ? あまり大きな声で連呼しないの」
「まあ、男の人、ですから、仕方ない面もあると思います……」
「あっはっはー。まー、男だしね。シウネーの言う通り!」

 ざわざわ~ とたくさん集合してくれた。
 男性陣は 少し退いた所で見てた。巻き込まれない様に、かな? ジュンだけは 笑いこけてたが。

「……何変な事 話してんのよ」

 シノンは睨んでて、ぎゅっ、とリュウキは脇腹を摘ままれてしまった。

 弁解するのが異常に疲れるのは言うまでもなく、しれっと脱出したクラインには後日 盛大な制裁を誓うリュウキだった。

 そして、キリトはと言うと。リュウキはしっかりと早く説明した~と言う面を考慮したのか 冷ややかな評価はされなかったが。後ろにしれっと離れていったので、後々 更に大きな標的にされたのはまた別の話。

 

 そして、本当に大変だったのはそのあとだ。


 ユイの興味は尽きてない様で。

「パパとおにいさん。男の人代表として、教えてください。誰の胸部が一番ですか?」

 話を更に盛ってくれた。終わらそうと努力したのに露と消えた瞬間でもある。

「あ、あのな? ユイ。それはクラインの出鱈目で……」
「……ユイ。クラインは、たまに調子に乗ってバカなミスする時があるだろ? 今回も似たり寄ったりだから、本気にしないでくれ」

 2人で頑張ってユイを説得させようとするんだけれど、そこに割って入ってきたのは、さっきまで怒ってた? 筈のシノンだった。

「……別に良いじゃない。答えてあげれば。強ち出鱈目、って訳じゃないでしょ? ……ね、リュウキ」
「ぅ……」

 シノンは意味深に笑う。
 そして、リュウキはその笑う意味を直ぐに理解した。あの日。事故とは言え、シノンの胸部を触ってしまった事だと。

「キリトもそうよ。誰を選んだとしても、恨んだりしないわよ」
「恨むとかそういうのを心配してるんじゃないって! 絶対からかってるだろ? 今。リュウキもなんか言ってやってくれよ……」
「あ、ああ……。あまりいじめないでくれ」

 怪しさ満点のやり取りに反応したレイナ。

「むー………。リューキくんっ!」
「な、何でもない。何もないって」
「ま、クラインならともかく、リュウキが嬉々と語る様な姿は想像つかないわよねー」
「お、オレもだぞ、リズ!」
「あーー……うーんどうだろうねー」
「リズもからかわないでくれよ!」

 キャラが違う、と言う事で、リュウキは除外気味にしてくれてたのだが、やはり疑惑と言うより、からかって遊びたい気持ちが大きいのだろう。

「えっへへ~ 2人のえっちー」
「ふふ……」

 ユウキやランは 困ってる2人を見て、いつもとは違う一面を見たのが新鮮で笑っていた。


 最後はユイが1人ずつ胸を触って確かめ、それを参考に誰が一番か? を聞くというかなり強引で、世の男たちにとってかなり役得なシーンとなっていた。クラインがいないのはある意味可哀想だが、誰も同情せず。

 最後、キリトやリュウキの2人がどう答えたのか……、その後の詳細は、個人情報の観点から、省くとする。






~現実世界 ダイシー・カフェ~


 そして、翌日の事。

「さてさて、今日は京都旅行の詳細についてだけど。行く場所の希望とかあったら言ってね?」

 アスナが進行役となって、兼ねてより計画していた旅行についての話し合いが始まっていた。勿論、現実世界でではまだ活動が困難であるスリーピングナイツの皆も視覚的参加はする為、大はしゃぎだ。

『伏見稲荷大社!』
『金閣寺!』
『正式名称は鹿苑寺って言うんですよ』
『私、清水寺の舞台が見たいですね』
『おー、オレは大仏が見たいなー』
『大仏って、東大寺の? それは奈良県ですよ、ジュン』

 皆大盛り上がりだ。
 結構範囲が広いが行けない事はない。参加メンバーであるアスナとレイナ、リズ、シリカ、リーファは 互いに目を合わせて頷いた。

 若さに任せて、強行日程にしよう!! と心に決めた瞬間だった。

「それで泊まる所だけど、候補はこれだけあるの。何処が良いかな?」

 アスナがパンフレットを数枚取り出して、皆に見せる。
 少々奮発したとはいえ、学生の予算。選びについては慎重になってしまうのも無理はない。

 うーん、うーーん、と唸りながら考えてたその時だ。


「ん。皆ちょっと良いか?」

 その場に来ていたのは、旅行のメンバーだけではなく、リュウキも来ていた。エギルに少々仕事関係で話があったので、一緒に学校帰りに来ていたのだ。1人ノートパソコンと向き合っていたのだが、ある事を思い出した様子で、端末を手に取って操作。

「どうしたの? リュウキ君」

 レイナを始め、全員の視線が集まるなか、自身の端末のデータを皆の端末に転送した。

「以前、京都で仕事をしていた時に、旅館の招待券を頂いたのを思い出したんだ。人数の上限も丁度だし、ここは どうだ?」

 リュウキの説明をふんふん、と聞いて指を動かしながら 確認をしてた全員の視線が釘付け。

「はぇ……?」
「ちょ……、きんがく、け、けたおかしくない?」
「わ、わわっ、すっごいトコだよ、ここ……」

 まず、シリカとリズ、リーファが反応。アスナとレイナは結城本家が京都にある、と言う所もあってか 当然知っている場所だからあからさまではなかったものの……。

「……リューキくん。ここ、京都でもちょっと……その、豪華、と言うか高級というか、……凄いランクのトコ、じゃないかな??」
「う、うん。セルムブルグの一番の宿泊施設が、ほんと可愛く見えるくらい……? だから私たちのポケットマネーじゃ、ちょっと……」

 良い所のお嬢様、とは言え 一般常識的な金銭感覚はあるから金額が恐ろしかった、と言うのは皆と同じだ。だが、リュウキは首を横に振った。

「いや、金銭面は気にしなくて良い。大丈夫だ」

 あっさりと断言するリュウキ。
 それも、ちょこちょこパソコンの画面を見てるから あまり集中してない様にも見える(リュウキに限って集中してない、と言うのはないが)

「いやいやいやいや。りゅーきもイイトコの坊ちゃん~って感じだとは思うけど、さすがにそれは……」
「そ、そうですっ。申し訳なさすぎで、凄すぎて萎縮しちゃいますよ……」
「わ、私も……。無料(タダ)っていうのは流石に……」

 ちょっとご飯奢って~ とか、常識ある範囲での金銭のやり取りはあった。だが、完全に許容範囲を超えてしまってる内容だから。あまりそういう目で見たくない。と言うのも少なからずある。何度も思うが、綺堂氏から普通の友達として接してくれてありがとう、と言われているのだから、その感覚はずっと持ち続けたいのだ。少なくとも学生の間は。
 
 仕事の方にやや集中していたリュウキだったが、大体判ったようで パタンっ とノートパソコンを閉じて笑った。

「気にしなくて良いよ。先方の好意で頂いたモノだ。……その、それにさ。そんなに沢山の人を、……ともだち、を、呼べるような………、今まで、無かったから……」

 少しだけ照れくさそうに、それでいて招待出来る事が。且つて、お友達と、と言われて招待券をもらったのだが、呼べるような人がいなくて、どうしようかと 綺堂と悩んでいたころを思えばと、何処となく嬉しそうに。
 
 確かに場所が場所。正直、学生の身分では、まだまだ場違いな気もバリバリする。
 けれども、そんな顔をしているリュウキを見て、無下に出来る筈もない。

「ふふふ……」
「あはっ……」

 アスナとレイナは笑った。
 勿論、他の皆も同じ気持ちだった。

「そんな顔されたらね~。うっし。有難くご招待されましょーか?」
「異議なしです。日頃の感謝も込めて。ありがとうっ、リュウキくんっ!」
「あははは。そうですねっ。私も沢山お礼、言いますっ! それと、このお返しはまた必ず、と言う事で」

 4人とも快く受けてくれた事に やっぱり照れ臭かったのだろう。リュウキはポリポリ、と頬をかいてそっぽ向いていた。

「私たちだけ、と言うのもあれだからさ。リュウキ君も一緒に~、と言う訳にはいかないかな? 仕事だって聞いてたんだけど」
「ん。ああ。オレも京都には行く予定だ。……ちょっとスケジュールが合わないから、一緒に行動って訳にはいかないけど、泊まる場所は同じだ。ん……日程も一緒かどうかは判らないけど」
 
 端末に記載されてるスケジュールを確認。

「それに、その、じょしかい? と言うヤツだろう? 皆だけで楽しんできてよ」
「あははっ、それ女子会~じゃなくて、女子旅だよー?」

 笑いの落ちが付いた様子。皆で笑いながら、リュウキにお礼を言っていた。

 実はアスナは結城本家を使用させてもらおうかな、と考えていた。広大な屋敷で、部屋は嫌と言う程余っている。頼めば許可は下りるだろう、とも踏んでいた。……でも、如何に本家とは言っても、今提示されてる老舗高級宿と比べたら………申し訳ないですが、霞んでしまいます。はい。


 そんなこんなで盛大な旅行になる予感! と言う訳で皆楽しみだと大いに盛り上がった。
  メンバーで言えばシノンも一緒に、と誘っていたのだが、実家に帰る予定だったので残念ながら次の機会へとなった。(十分残念そうにしていたシノンだったが、リュウキも一緒に泊まるかも? だったら、もっと…………と言うのは別の話)














 そして京都旅行ではまさに怒涛の強行ツアーだった。

 スリーピングナイツの皆の為に、其々の希望する場所へ向かう。

 清水寺では、ユウキが『ALOで再現してくれた飛び降りるのに~』と言ってみたり、金閣寺の金を見て『すっごくゴージャスっ!』っと目を輝かせたり、予算がかなり浮いて可能になったまさかの県外。奈良県にまで踏み込みんで見てきた東大寺の奈良の大仏を前にして『次の層のBOSSは大仏だったりして!』と言ってみたり、と大はしゃぎだった。

 3泊4日の旅行日程にぎゅーーーっと詰め込んだ。

 まさに怒涛の2文字が相応しかった。

 そしてその最終日の旅館にて。


「いやー、疲れたわねー」

 ふぅ、と大きく息をつくリズ。それをプローブ越しに見ていたスリーピングナイツの皆は口々に謝罪とお礼の嵐だった。

「いやいや、なんのなんの」
『ほんとありがとうございますー』
「あはは。良いですよ。私たちも凄く楽しかったですからー」
「うんうん」

 疲れた顔はしてても、皆笑顔なのは変わらなかった。

「さ、お風呂行こっか」
「おおっ 風呂だーーー!」
「リズさん……」

 もろ手を挙げて突っ走っていったリズ。苦笑いをしながらついていくシリカ。アスナとレイナ、リーファも同じく。

 大きな大きな豪華な露天風呂にざばっ、と浸かるリズ。


「くはぁ~~…… ゴクラクゴクラク~」


 普通なら、花の女子校生の入浴シーン。ピンクな気配。お色気シーン満載。いやぁ~ん なシーンなのに……。
 リズさんの入浴シーンは色気とは程遠い。……十分起伏に富んだ身体をしてて、プロポーションも良い、と言えるんだけど、その恰好が、入浴の仕方が台無しにしてしまっていた。

 極めつけは風呂上り。

 裸で~はなく、しっかりとバスタオルを身体に巻いて、腰に手を当てて 珈琲牛乳を一気飲み!

「か―――ッ! このいっぱいがたまんないわね!! べらんめぇっ!」

 ここまで言ったら、流石に苦笑いしてたシリカもツッコミを入れる。

「おっさんみたいですよー。リズさん……」
「しっつれーね。こーんなグラマーを捕まえておいて~」
「むむむ……」

 さっきまで風呂上りのおっさんポーズだったのに、うふっ、とポージングを変えた。……シリカに見せつける様に。勿論シリカもそれに乗って、恨めし気に睨んでいた。大丈夫。きっと成長するよー、とは誰も言えなかったのは言うまでもない。



「「あははは……」」
「ほーら あがるよ? 2人ともー」

 と言う訳で、さっさとお風呂から引き上げた。

 お客さんが他にいなくて貸し切り状態。色々と思う存分に堪能し続けるコトが出来た旅だった。何も不満もない。ある訳もない。……でも、時折レイナの表情は寂しそうな感じがした。そんなレイナに気付いたのはアスナのみだった。
 付き合いの長い面々でも気づかない微かなものだった。

 何度か振り返るレイナ。それは入り口の方だろう。何を気にしているのか、……それは言うまでもない。リュウキ。………隼人だった。笑顔で入ってくる姿が目に浮かぶから。

「レイ」
「あっ……うんっ」

 アスナはそっとレイナの肩を触る。
 残念だったね、と口には出さないけれど、いつでも会えるんだから、と。レイナを見てみたら、アスナもキリトに会いたくなってくる気持ちが強くなったりするが、そこは我慢我慢、だ。

 そんな時だった。

『お嬢様方。ご堪能致しましたか?』
『あ、綺堂さん!』
『お爺ちゃーん!』
『おかげさまで。ありがとうございました!』

 声が聞こえてきた。
 
「あっ………!」

 途端にぱぁーっと顔が明るくなるレイナ。

「ふふ。今夜は別行動、だね? レイ。皆に言っておくから。……ま、言わなくても解ると思うけど」
「あぅ……。う、うんっ!」

 アスナとレイナは、足早に合流したのだった。











 サプライズで最終日に会おう、とリュウキ、隼人は思っていた。何とか ギリギリのタイミングではあるが、日程を重ねる事が出来た。最終日になってしまったのは仕方がないが、それでも会えるという事がこれだけ嬉しいとは正直思ってもなかった。

「旅行か……」

 ALOの世界では色んな所へ行ってた。レイナと一緒に沢山、沢山回った。でも、よくよく考えたら現実世界でここまで遠出をした事は無かった。

「(何考えてるんだオレは。他の皆もいるだろ?)」

 隼人は苦笑い。レイナ1人ではなく、アスナやリズ、シリカ、リーファもいるんだから。勿論そこに不満がある訳はないが。

「(休みの時に……うん。誘ってみようかな。あ、そう……だった)」

 この時、ふと隼人は思い出していた。
 それは、玲奈と約束をした事。


―――あの日。SAO、アインクラッドと言う世界が完全に終わり、崩壊した時。その最後に立ち会った時。


 黄金色に燃える空を一緒に見た時の思い出を語った事。
 いつか、また――あの空に負けない様な空を、一緒に見に行こう、と約束をした。


「……うん。いつ、か……」


 これは、気のゆるみがあったのかもしれない。
 今日、仕事の殆どを終えた事。
 会えないかもしれない、と内心思っていたが、最後の最後で合流する事が出来た、と言う安堵感。
 心安らぐ気持ちと大切な約束を改めて思い出した時の事。

 それらが合わさって、隼人は浮遊感のようなものを感じた。デスクに向き合っている最中に不意に訪れる夢見世界への誘惑。
 会うのは明日である、と言う事実が 隼人から抗う力をゆっくりと吸収して……そして、視界は暗くなった。










―――ここは、何処だろうか。


 身体が宙に浮いてるようなそんな感覚が隼人にはあった。
 真っ暗ではあるが、柔らかく心地よい感覚が全身を包み込む。きっと天国と言うものがあるのなら、こういう場所なんだろう、と頭の何処かで納得できた。

 そして、一瞬……暗闇だった世界が黄金色の空が広がった。
 
 世界が広がる――無限に。

 そんな感覚がした時に、何かが聞こえてきた。



――あなただけを見つめている。この世界の誰よりも。

――心の安らぎは、いつもあなたが傍にいてくれたから。

――さぁ、歩き出そう。何も恐れる事はない。その先で、きっと きっと―――。


『また、会えるから』




 心地よい歌だった。よく知った大好きな歌、そして大好きな人の歌声だったから。
 最後まで聞いていたくて、光を手放したくなくて、隼人は手を伸ばす。光へ、光へ、手を伸ばし続けて……そして、目を開く事が出来た。

「ん………」
「ぁ……っ」

 視界に飛び込んできたのは、見知った人の顔だった。見知った、どころではない。最愛の人の顔。

「あ、れ……? れい、……な?」
「あはは……。ごめんね? 隼人君。起こしちゃった、かな?」

 申し訳なさそうに首を傾ける少女は玲奈だった。
 でも、やや不思議に隼人は思う。歌をうたっていた様な気配は無かったから。夢の内容は珍しく覚えていた。綺麗な歌声の正体は紛れもなく玲奈のものだったから。……が、その疑問は新たな疑問が生まれた為、直ぐに書き換えられる。

「え……、あれ? ……いや、なんでここに……?」

 ただただその疑問だけが頭の中を巡る。意識が覚醒し、この場所がどこなのかを理解した。そして、目の前の人に、玲奈に会うのは、皆に会うのはもう明日にする事を決めた事も思い出した。
 なのに、彼女は目の前にいる。

「うんっ、綺堂さんと会って……ね? 隼人君がすっごく頑張ってて、疲れちゃってるから 労って欲しいーってさ」
「そう、なんだ。(………爺やはもうッ!)」

 もうっ、と隼人は余計なお世話……とまではいかないが、気を聞かせすぎてくれた綺堂に やや頬を膨らます。そんな隼人の心情を察したのだろうか、玲奈はニコッと笑って隼人の頬をつんっ、と突いた。

「隼人君が、皆を招待してくれたこと。……それに今日もすっごく頑張って来てくれたのは凄く嬉しい。とても嬉しいっ。でも、無理しちゃダメだよー。隼人君、座ったまま眠っちゃってるし……。そんなところ初めて見たんだから、びっくりしたんだよ? 背中に抱きついて驚かそーって思ってたんだけど、ね?」

 あははは、と笑う玲奈。そっと、玲奈の頬に隼人は手を触れた。

「悪い。でも、どうしても、皆に―――。玲奈に会いたかったから。本当に驚いたよ。光の中にいて、手を伸ばしたら―――玲奈がいたんだから。ん…… これはまだ、夢の中?」

 嬉しい事を言ってくれる隼人に頬を赤く染めながら、玲奈は ぷにっ、と隼人の頬を摘まんだ。勿論痛くなんかないだろう。

「えへへ。夢じゃない、でしょ?」
「ん……、そう、だな。でも、な。………お返しだ。玲奈」
「え? おかえし? ……っっ!」

 頭を持ち上げて、きょとん、としている玲奈に不意打ち気味のキスをした。
 軽いキス……ではなく少し長めのキス。間違いなく温もりが伝わる様に、感じられる様に。

 暫くキスを続けた後、隼人は離し そして起き上がって玲奈に向き合った。

「………ん。こっちの方が良い、って言ってただろう?」
「あ、あぅ、あぅあぅ……/// は、はやと、くんっ そ、それは抱きしめた時の……で」
「ああ。そうだったかな。……嫌、だった?」
「そそ、そんなことないよっ! ある訳ないじゃん。だって、大好きなんだもんっ! ……んっ!」

 玲奈は恥ずかしさと嬉しさが混じり合い、そして前者の恥ずかしさを誤魔化す為に やや強引に隼人の唇に吸いついた。ちょっとムードが……、と玲奈がやや落ち込み気味と言えるのだが、時と共にそれも薄れる。
 
 隼人の唇に触れて、隼人に触れる時が長ければ長い程に、蕩け合う。長く長く……求める。求めあう。


「………玲奈」
「………隼人くん」


 2人を止める障害などはこの世界にはもう無い。
 いつもの世界であれば、割って入る影のひとつやふたつはあるだろうけれど、この世界ででは、この部屋では無い。
 単純な話、オートロックになってるから乱入する術もないが、元々 他の皆は空気を読んでくれた。明日奈が引き留めたから、と言う理由もあるが。



 やがて、身体の芯から熱くなった2人は絡み合い、そっと いつの間にか敷かれていた寝具の元へ。
 既にたどり着いた時には 互いの浴衣がはだけて其々の煌びやかな身体が露になった。


 その瞬間、隼人は少々考えてしまう。玲奈は下着をつけてこなかったのだろうか? あるいはここで? と。でも直ぐにその疑問は露と消える。

 露になった彼女の姿を目にした瞬間から。

 ミロのヴィーナスも真っ青。まさに裸足で逃げ出しそうな程の身体。現実世界に帰ってきて『エクササイズは欠かしていないよ!』と言っていたのにも頷ける引き締まった身体。起伏に富んだと言える。……何より、やはり隼人も男の子だから、最後に目が向かうのは白く透き通った二つの大きな膨らみ、その頂きの淡い桃の蕾は、風も吹いていないのに、少し揺れている。玲奈は着痩せするタイプだったのだろうか、普段のそれよりより一層大きく感じられた。

 そして 玲奈も同じ気持ちだ。

 大好きだった人の身体を……自身はどれだけ知らなかったのだろうか、と思えた程だった。
 隼人の姿。引き締まった身体。着痩せするの? と思える程にがっちりとしていて、凄くたくましさもあった。ムキムキマッチョ! と言う訳ではないのだが、凄く頼りになり、尚且つ安心できる。すべてを包みこみ、守ってくれる。今までも、これからも。それらを全て感じられる様な身体がそこにあった。


 それらを前にして、もう我慢などは出来なかった。元々我慢するつもりは無かったが、それでも。互いが互いを求めるように、強く抱きしめる。

 無論、今回が初めてではない、……が、こればかりは慣れたりはしないだろう、と隼人は、いや、玲奈も同時にそう思う。

 互いを思う気持ちは、求める気持ちはもはや臨界点。狂おしいとさえ思う愛しさが身体中から沸き起こり、互いを求めあい続ける。


「れいな……れいな……」
「……はやと、くん。とど、けて。……わたしの身体、はやとくん、を………」


 頬をこれでもかと紅潮させた玲奈は耳元でそう囁く。
 言葉で返すよりも、行動で。……理的ともいえる隼人だが、ここは本能に身をゆだねる事にした。否、ゆだねるしか選択肢が出てこなかったと言える。

 隼人は切なそうに身体を震わせている玲奈に、熱く熱くさせている今回の自分の象徴を、……自分自身の思いの丈の全てを届けるのだった。

―――詳しい詳細は省く。




















 もう深夜の時間帯。

 いつもであれば、夢の中だって言っていい時間帯だが、2人は夢の中ではなく 部屋に備え付けられている個室露天風呂へと足を運んでいた。

 個室風呂とは思えない程の広さと源泉であろう白濁した湯。足から遠して、徐々に身体を沈めて――身体の芯から温もる。

「はぁー……極楽極楽~って感じだよね。………んんー 今日はちょっと疲れちゃったからなぁ」
「っ……、ご、ごめん。あと、痛かったか?」
「たしかに、すっごく激しかったけど、って、いや そうじゃないってば。ちょっと今回の旅行は強行ツアーっぽかったから。……ふふ。大丈夫だよ。だって、隼人君は私を愛してくれたもん。全部、全部が愛おしいから……、だいじょうぶ」
「そう、か。良かった……」

 隣り合わせに浸かっている隼人の手をそっと取り、全ての指を這わせ、絡めた。
 隼人は失敗したのでは? と危惧していたが、玲奈の心からの笑みを見て、直ぐに安心できた。無理しているような笑みは もう隼人も解るから。些細な機微まではまだまだ分かるとは言い難いが……。
 
「んんんーーー、で、でもっ」
「ん? っ……」

 玲奈はすっ、と立ち上がって正面から隼人を見た。大きな膨らみが目の前で左右に揺れるのを見て、隼人は思わず顔を赤らめる。

「隼人君ばっかりに頑張ってもらう訳にはいかないもんっ。次は私っ、私が頑張って隼人君を………そ、その、き、きもち………よ、くぅ……///」

最後まで言い切るのはなかなかハードルが高かったのだろう。途端に顔を赤らめる玲奈。直ぐにまた、とぷんっ と湯の中へと身体を沈めて頬を抑えた。そんな彼女を見た隼人は。

「玲奈。……気持ち、良かったのか?」
「ふえっ!?」

 対照的に、隼人は今度は目を輝かせている様だった。まるで、褒めてくれたのを喜ぶ子供の様に。そして、次には遠慮がちに顔を俯かせた。

「オレも色々と、勉強はする。そ、そこまで熱心にとは言えないから 全然自信、無くて……、やっぱり不安だったから。ちゃんと、出来てるか、判らなかったから」

 恥ずかしそうに、それでいて自信が本当にないのだろう、不安そうに、だった。いつもの隼人とは本当に程遠い。こんな違った一面を見られるのも自分自身の特権。……申し訳ないが、他の子たちには渡せない隼人の素顔。


 そんな隼人を見て、今度は玲奈の歯止めがきかなかった。


 つい数秒前に、『疲れちゃった』と言っていたのを忘れたかの様に、俯かせてる隼人に飛びつき。

「次は私のばんだもんっ!」

 勢いそのままに、玲奈は持てる知識の全てを総動員した。
 大切な人に、愛する人に、気持ちよくなってもらいたい一心で、玲奈は只管頑張る。男の子を象徴させる所を……、大切に、愛おしく、それでいて激しさも兼ね備えさせ。

「れ、れい……ッ、あっ、あ……っっ、あっ…… ぅ……」

 思わず隼人が声を上げる。これだけでも玲奈は高難易度のクエスト序盤をクリアした気持ちにもなれた。

 でも、玲奈は そこで終わるつもりは無い。頑張ってきたのだから。発揮できる所はここしかないんだから。

「……次は、私、わたしが、はやとくんを…………」

 火照った身体を、その火照った部分へと近づけ、まだまだ拙いスキルではあるが、総動員させて、隼人をご奉仕したのだった。――――その後の詳細は省く。





















 夢のような旅行もこれにて終わり。

 でも、一番大変だったのが翌朝だったかもしれない。隼人と玲奈が一緒に皆と合流した時―――根掘り葉掘り質問攻めにあったから。
 純粋な疑問を持って聞くユウキだったり、ただからかう様に聞くリズだったり。……殆どリズの様な感性での質問タイムだった。

 隼人はクールに躱す事が出来たのだが、玲奈はなかなかそうはいかない。楽しかった。沢山沢山話す事が出来た~と当たり障りのないセリフばかりを連呼するものだから。それも顔を赤くさせて。

 最終日、家への帰還までの間いろいろな意味で悶々とさせる。リズやシリカは羨ましい! と嘆いていたが、それでも幸せそうな2人を見れたのだから、と納得し、アスナはキリトへと連絡をすっす、と入れて、スリーピングナイツの皆も大きな声で笑う。

 そんな笑顔で、この旅は締めくくったのだった。
 
 
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