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永遠の謎

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65部分:第五話 喜びて我等はその三


第五話 喜びて我等はその三

「王宮で。御会いしたいとのことです」
「王宮でとは」
「それも今日ですから」
「今日御会いするとなると」
 ワーグナーは王宮で会うということにも驚きを隠せない。しかしそれ以上にだった。今は時間について強く思うのであった。
 そしてだ。それを言葉に出した。
「夜になりますが」
「それでもとのことです」
「私と」
「そうです。御会いしたいとのことです」
 そうだというのだった。
「それで如何でしょうか」
「そうなのですか」
「はい、貴方はそれで宜しいでしょうか」
 男爵はワーグナー自身に問うた。
「夜でも」
「はい」
 ワーグナーに異存はなかった。すぐに答えたのだった。
「私としましては」
「左様ですか。それでは」
「しかし本当なのですか」
 まだ信じられないといった顔だった。それは彼も隠せなかった。
「王が。私に王宮で」
「そうです。陛下は嘘を吐かれません」
「左様ですか」
「陛下は嘘がお嫌いです」
 これもまた事実だった。王は虚言を嫌った。人の心のそうしたことをだ。彼は何よりも嫌い忌んでいたのだ。それはかなり強いものだった。
 男爵はこのことを話してであった。
「ですから」
「それでも。まだ」
「信じられませんか」
「どうにも」
 そのことを話さずにはいられないワーグナーだった。
「ですか。それならば」
「夜に王宮に」
「窺わせて頂きます」
「それでは」
 こうしてだった。ワーグナーは夜の王宮において王と会うことになった。そしてその時が遂に来た。しかしそれはなのだった。
「駄目か」
「申し訳ありません」
「やはり夜は」
「そうか」
 王はだ。周りの言葉を聞いて無念の声をあげた。
「明日になるか」
「既にワーグナー氏はミュンヘンに到着しています」
「間違いなく会えますので」
「ですから今は」
「御辛抱下さい」
「わかった」
 夜の謁見を止められだ。王は渋々ながら頷いた。
 しかしそれと同時にだ。彼はこう言うのだった。
「明日になればだな」
「そうです。間違いなくです」
「ワーグナー氏が王宮に来ます」
「時間は昼とのことです」
「既にあちらには礼装を渡しています」
「頼む」
 王は厳粛な声で告げた。
「昼だな」
「では今はお休み下さい」
「夜も遅いですし」
「ですから」
「寝られはしない」
 王はだ。深刻な顔でこう述べた。
「とてもな」
「明日のことを思えばなのですか」
「それで、ですか」
「今は」
「そうだ。明日のことを思えば」
 やはりそれであった。明日ワーグナーと会う、そのことを考えただけで王は目が冴えてだ。どうしても寝られなかったのである。
 
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