こくり婆
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第二章
「あれ結局織田作さんの言葉言ってるだけでしたね」
「正確に言うとあの人行きつけだったお店に書いてある言葉をね」
「別に怖くなかったですね」
「怖くないけれど大阪もね」
「妖怪のお話多いんですね」
「そうよ。だからね」
「私達もこれからも大阪にいたら」
「会うわよ」
大阪にいる妖怪達にというのだ。
「輪入道以外にもね」
「ううん、怖い妖怪じゃなかったらいいですね」
リィナはイカゲソを焼いたものを食べつつマネージャーに応えた。
「くれぐれも」
「そうよね。けれどね」
「怖い妖怪がいます?」
「殆どいないから」
「あっ、じゃあ大丈夫ですか」
「大阪はお笑いの街のせいか」
某芸能事務所のせいかそうなっていると思われがちだが江戸時代から落語等が発達してきた街である。その時からのことと言っていい。
「別にね」
「怖い妖怪はいないですか」
「あの輪入道みたいですか」
「だからね」
それでと言うのだった。
「そこは安心して。ただね」
「ただ?」
「ただっていいますと」
「急に出て来ても」
そうなってもとだ、マネージャーは二人に話した。
「怖がらないことよ」
「別に、ですね」
「妖怪がいきなりすぐ傍に出ても」
「そうよ。妖怪は観ようと思えば観られないけれど」
「観ようと思わないとですね」
「出て来るものですね」
「そうよ、そうしたものだから」
それ故にというのだ。
「逆に急に出て来てもね」
「怖がらない」
「このことが大事ですね」
「そうよ、例えば今この居酒屋に鬼の団体が来ても」
それでもとだ、マネージャーは今度はせせりのぽん酢あえを食べつつ述べた。煮たものをそうして味付けしたのだ。
「驚かないことよ」
「人を襲って食べないとですか」
「怖がることはないですか」
「世の中妖怪よりずっと怖い人達がいるでしょ」
二人にこうも言った。
「そうでしょ」
「はい、ヤクザ屋さんとか」
「サイコ殺人鬼とかいますね」
「サイコ殺人鬼は妖怪より怖いだよ」
こうした類の連中はというのだ。
「だって理屈も何もなくね」
「殺してきますからね」
「それも滅茶苦茶な方法で」
「そんなのと比べたら」
それこそというのだ。
「もう遥かにましでしょ」
「ですね、妖怪の方が」
「リアルで」
「だからね」
「はい、妖怪も何もしてこないといい」
「人間も注意しろ、ですね」
「特に貴女達の仕事はね」
アイドル、この職業にあるならというのだ。
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