周日清
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第一章
周日清
この時清の乾隆帝は江南の方に巡幸に出ていた、その目的は美食を愛する彼が江南の料理を楽しむ為だったがそれだけではなかった。
彼は北京を出る時にある少年を自分の部屋に密かに呼び出してそのうえで囁いた。
「どうもな」
「またしてもですね」
「悪い知事が出ている」
「あちらの方に」
「他にならず者達もな」
「官憲の目を盗んだうえで」
「出て来ている、だからな」
それでというのだった。
「また巡幸に出てな」
「その中で、ですね」
「そうした知事やならず者達を成敗したいが」
「はい、よいことです」
周日清は皇帝に即座に答えた。
「天下の悪をのさばらしていますと」
「その悪が次第に増えて大きくもなりな」
「天下を乱してしまいます」
「その通りだ、清朝は広い」
皇帝は自身が治めるこの国のこのことも言った。
「そして人も多い」
「それだけに」
「朕の目が行き届かないところもありな」
「悪人も多いですね」
「そうだ、しかしその悪人達をな」
「常にですね」
「成敗するのも国の主である皇帝の務めだ」
こう言うのだった。
「だからこそだ」
「再び巡幸をされて」
「そしてだ」
「その者達を成敗していきますか」
「既にどの省の知事や役人が悪いかわかっているしだ」
「ならず者達もですね」
「どの街や村にいるかわかっている」
そうしたことは既に調べさせている、皇帝が独自に持っている諜報網は明王朝が持っていた錦衣衛の様な組織を自分で持っていて悪人達を調べさせていたのだ。それで彼等のことも正確に把握しているのだ。
それでだ、今周日清で言うのだった。
「だから後はだ」
「彼等のところに赴かれ」
「成敗していく、いいな」
「ではその為に」
「巡幸だ、そしてだ」
「私もですね」
「共に来てもらう、いいか」
「はい」
周日清は即座に答えた、こうしてだった。
皇帝は巡幸に出た、その傍には周日清が控えていた。清の高官達はその出発の中に彼がいるのを見てすぐに察した。
「そうか、万歳翁はこの度もか」
「世の悪を成敗されるか」
「その為の巡幸か」
「そういうことか」
彼等も察した、そしてだった。
周日清は皇帝の近侍の少年の一人として巡幸に参加しそうしてだった。
皇帝が行く先々で世の悪を成敗していった、ある街にいるならず者達に対して。
夜に彼と周日清のところに行った、そしてだった。
ならず者達のところに押し入った、この時二人はごく普通の市井の男の恰好をしていた。それでならず者達も言うのだった。
「何だ、手前等」
「俺達に何か用か?」
「俺達の仲間に入りたいなら銭持って来い」
「それか女も持って来い」
「どちらも持って来るつもりはない」
街の男の恰好をした皇帝は彼等に平然と返した。
「一切な」
「じゃあどうしてきたんだ」
「俺達に何の用があって来たんだ」
「どうして来たんだ」
「知れたこと、お主達を成敗しに来た」
これが皇帝の返事だった。
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