永遠の謎
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634部分:第三十六話 大きな薪を積み上げその十一
第三十六話 大きな薪を積み上げその十一
「そして公に陛下の退位を発表されます」
「成程、だからですか」
「それでなのですか」
「はい、そうです」
こうだ。落ち着いたまま同志達に話すのだった。しかしだ。
ここでだ。彼はこうも言ったのだった。
「ですがそれでもです。ベルリンは厄介ですね」
「問題はビスマルク卿の介入を防ぐこと」
「それですが」
「陛下は暫く。そう、一年と一日の間だけですが」
この時間だけだった。彼等が注意する時は。
「静かに。誰も知らない場所で、です」
「いて頂く」
「そうしてもらうのですね」
「ビスマルク卿も知らない様な場所にです」
これが彼の考えだった。
「バイエルンの為に。時々移動して頂くことも考えておきましょう」
「はい、それが宜しいかと」
ここでグッデンもホルンシュタインに応えてきた。
「陛下の。そのご病状には移動も宜しいでしょうし」
「気分転換ですね」
「せめてです」
どうかというのだ。今度は。
「朝に起きられて夜に休まれるべきです」
「夜型の生活はよくないと」
「これは確かです」
医師としての言葉だった。純粋に朝型の生活を勧めたのである。
「夜は。よくありません」
「それがあの方をああさせてしまった一因ですか」
「夜は全てを覆い隠してしまいます」
トリスタンとは別の主張だった。
「その中におられては」
「月は神の世界のものではありませんし」
「そうです。人は太陽の下で生きるべきなのです」
これがグッデンの見るところだった。彼はあくまで昼の世界の者なのだ。
だからだとだ。ホルンシュタインに話していくのだった。このことは誠実に。
「そしてです。御気持ちが晴れられないのなら」
「場所を移していってですね」
「ビスマルク卿に気付かれないのならさらにいいでしょう」
こう話すのだった。
「旅にもなりますし」
「あの方は旅も好まれますし」
従姉であるオーストリア皇后と同じくだ。やはり二人は似ていた。
「では宜しいですね」
「はい、ではその様に」
「その朝です」
ホルンシュタインはまた周囲に話した。
「朝になれば全ての決着がつきます」
「大公殿下によってですね」
「全ては」
「そうです。朝を待ちましょう」
こうしてだった。ホルンシュタインは朝を待った。そしてだ。
朝になった。そのミュンヘンの王宮では。
大公が項垂れた顔でだ。周囲に告げていた。
「ではだ」
「はい、それではですね」
「今からですね」
「発表しよう」
こう言ったのだった。彼等にだ。
「私は摂政に就く。そしてだ」
「陛下は退位ですか」
「そしてオットー様が」
「オットーは公には出られない」
王以上にだ。そうだというのだ。
「だがそれでもだ」
「それしかないのですね」
「退位しか」
「バイエルンの為だ」
項垂れたままだ。王は話していくのだった。
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