思わぬ助け
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第三章
「いえ、私もです」
「行くというのか」
「はい、私にはこれがあります」
ここでだ、蓮花は。
何処からか見事な剣を出してきた、そのうえで夫にこうも言った。
「山なので馬には乗りませんが」
「馬にも乗れるのか」
「はい」
その通りだという返事だった。
「そちらも」
「そうなのか」
「それではです」
「今からか」
「はい、山に行きましょう。そしてです」
「そして?」
「あなたと家の方々は一つに集まってです」
そうしてというのだ。
「進んで下さい、それも慎重に」
「慎重にか」
「ああした賊達は必ず根城の近くに罠を置いています」
蓮花はこのことも話した。
「ですから慎重にです」
「進んでいくべきか」
「はい、そうしてです」
「攻めていくか」
「そうしましょう」
こう言ってだった、蓮花が先頭に立ってだった。李と彼の家の者達はそれぞれ戦えるものを持って山に向かった。
その途中にだ、蓮花は急に前に動いた。そうしてすぐに物陰にいた者を引っ立てて夫の前に戻って来た。
「この者は賊の下っ端です」
「まさか」
「はい、今も当家を見に来ていたのでしょう」
「まさか我々の動きに気付いたのか」
「いえ、まだです」
「気付いていないか」
「むしろ盗みに入れるかどうか」
それをというのだ。
「見に来たのでしょう」
「そうだったのか」
「ですが今捕らえました」
賊の下っ端の者をというのだ。
「この者から罠の場所や賊の状況を聞きましょう」
「そうするのか」
「若し嘘を言う様なら仕置きを与えます」
蓮花は夫に淡々と述べた。
「そうしつつです」
「先に進んでいくか」
「はい、一つでも嘘を言えた」
蓮花は強い声で言った。
「その時は殺しますから」
「ひっ・・・・・・」
賊は蓮花のその言葉に怯えた声を挙げた、その言葉に本気の凄みを感じたからだ。
それでだ、賊は蓮花が問うよりもだった。
自分からぺらぺらと喋っていった、そうして言うのだった。
「命だけは」
「わかったわ、お役人に話しておくわ」
「はい、ですから何でも喋りますので」
「まだ知っていることがあるのね」
「はい、全部喋ります」
こう言って実際にだった。
賊は何でも喋り李の家の者達を案内さえした、蓮花はその賊のすぐ後ろに立ち剣を構えつつ夫に言った。
「では行きましょう、若し賊が逃げても」
「その時はか」
「これがあります」
懐から小刀を出して言った。
「すぐに急所に投げて仕留めます」
「小刀も持っているのか」
「弓矢も使えますが」
それでもというのだ。
「今はです」
「それを使うか」
「山の、しかも深い森の中では」
「弓矢はか」
「木々が多いので」
だからだというのだ。
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