永遠の謎
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630部分:第三十六話 大きな薪を積み上げその七
第三十六話 大きな薪を積み上げその七
すぐに察した。そうしてこうオスターホルツァーに問い返したのである。
「ではヘッセルヴェルトは」
王の今現在の側近の一人、彼のことを問うたのだ。
「何処にいますか?」
「下でミュンヘンから来た者達と話しています」
「そうですか」
それを聞いても動じなかった。今の王は。
そうしてだ。冷静にだった。オスターホルツァーや周囲に残っている者達に告げるのだった。
「衛兵を呼びなさい。そして」
「はい、さらにですね」
「地元の警察や消防団にも連絡を」
「わかりました」
周囲も応える。こうして慌しく迎撃の用意が為される。
その中でだ。従者の一人が王に進言した。
「陛下、デュルクハイム大佐にも電報を」
「彼ですね」
「はい、あの方なら」
「わかっています。ただ」
「ただ?」
「はじまったのですね」
不意にだ。寂しい顔になり言う王だった。
「遂に。旅が」
「旅とは?」
「いえ、何でもありません」
従者の怪訝な問いには答えない王だった。
そしてだ。あらためてだった。周囲にこう言うのであった。
「では、です」
「はい、これからですね」
「城を固めます。彼等を入れてはなりません」
「そうします。すぐに」
こうしてだった。城の警護が固められる。外を中心として。その城にだ。
ホルンシュタイン達が来た。彼等はそのまま城の正門に迫る。その途中でだ。
一人がだ。こうホルンシュタインに尋ねた。
「やはり衛兵達がいるでしょうね」
「そうですね。ですが」
「ですが?」
「他にも来ているかも知れません」
正門の前を見ればだ。多くの者達がいた。その彼等を見てだ。
一行はだ。怪訝な顔になりそれぞれ囁き合った。
「あれは一体?」
「衛兵にしては多いな」
「あの城にあそこまでの衛兵がいたのか」
「従者達を入れてもまだ多いが」
彼等は正門の前に見られる人影の数の多さに奇妙なものを感じた。そしてそこに来るとだ。
それぞれの手に鍬や鎌、斧等を持った農民や樵達がいた。民衆だった。
彼等が正門のところに集りだ。そうして衛兵達と共に警護を固めていたのだ。それを見てだ。
一行はだ。慌てふためきそれぞれ言うのだった。
「何っ、民達がか」
「陛下の前に集っているのか」
「まさか」
「いえ、考えられたことです」
ホルンシュタインは苦い顔になり一行に述べた。
「これもまたです」
「民衆が陛下の御前に集う」
「そのことが」
「そうです。陛下は築城にあたって彼等を雇いましたが」
当然その築城の人手としてである。その為にだ。
そしてそれにあたってだ。王が何をしたかというとだ。
「その際彼等に多くの金を使っていますから」
「それによってか」
「彼等は今こうして陛下に従っているのか」
「それが為に」
「それだけではありませんね」
ホルンシュタインの読みは続く。さらにだった。
「あの方の。生来持たれているカリスマもありますから」
「だからですか」
「この様にして」
「そうです。陛下の御力を甘く見ていた様です」
ホルンシュタインも王のことはわかっていた。だが彼の予想を超えていたのだ。
だがそれでもだ。彼等にしてもだ。
退く訳にはいかずだ。正門の衛兵や民衆の中にいる将校にだ。こう言ったのである。
「通してはくれないか」
「いけません」
将校も王に忠誠を誓っている者だ。だからだった。
頑としてだ。こうホルンシュタイン達に言ったのである。
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