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永遠の謎

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614部分:第三十五話 葬送行進曲その十三


第三十五話 葬送行進曲その十三

「私は。そして私と心を同じくする彼等も」
「そうだな。卿等はそうするな」
「はい、そうします」
「それと同じだ」
 王は静かに述べた。
「私は助けは求めない。他の誰にもだ」
「陛下もまた。私達と同じだからですね」
「心は違うがな」
「ですが私達はです」
「愛による救済か」
「はい、それを受けるのですが」
「ホルニヒ、シシィ、ビスマルク卿」
 先に挙げた彼等だった。王に忠誠を誓う者、理解してくれている者。 
 その彼等の救いの手がある。しかしそれはだというのだ。
「彼等による救済か」
「それはどうされますか」
「私が果たすべきことを終えているのなら」
 それならばだというのだった。
「私には届かないな」
「そうですね。その時は」
「むしろ。私に救済を向けるのは」
 それはだ。誰かというとだった。
「卿だな。その時に現われるな」
「そのつもりです」
「では卿だ。私は卿を待つ」
 騎士を。まさにその彼をだというのだ。
「そしてそれは間も無くだな」
「そうです。隠しはしません」
「そうだな。卿は私を迎えに来てくれる」
「それは近いですし」
「ホルニヒは。私にあくまで忠誠を誓ってくれていて」
 そしてなのだった。
「シシィもビスマルク卿も私を理解してくれて。救いの手を向けてくれるがだ」
「陛下をお救いするのは私になりますね」
「ではその時までか」
「それが何時か御存知になりたいでしょうか」
「卿はその時を知っているのか」
 王は騎士を見た。そのうえでだ。
 騎士自身に対してだ。そのことを問うたのだった。
 騎士はそのことに対して言おうとする。しかしだった。
 王はその言葉をだ。途中で遮ってしまったのだった。
「いや、いい」
「宜しいですか」
「私がそれを知ってはよくはないことだ」
 本能的にそう察してだ。いいとしたのである。
「だからだ。それはいい」
「わかりました。それでは」
「では私はその時まで旅を続けよう」
 パルジファルとしてだ。そうするというのだ。
 それでだ。王はだ。
 ワインを一杯飲み。それから述べたのだった。
「聖杯城に着くまでな」
「城は何時でも陛下をお待ちしております」
「その玉座にか」
「そここそが陛下の玉座です」
 聖杯城のだ。そここそがだというのだ。
「ですから。旅を終えられれば」
「わかった。それではな」
「その時まで。生きられて下さい」
 そしてだった。それからは。
「そしてあの城で永遠の生を」
「私があの聖杯と槍を手にするのだな」
「左様です。王として」
「私の夢はこの世で果たされ」
「あの城においても果たされるのです」
「私は幸運だな」
 王はふとこんなことも口にした。
 
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