老人の亡霊
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第四章
布団が敷かれていてその中にマミーの老人が横たわっていた、静かに眠っている感じだ。だが織田はその老人を見て言った。
「死んでいますね」
「そうか、寝てるんじゃなくてか」
「マミーですから腐っていませんが」
「魂はないのう」
「そうですね」
「待て、御前等何しに来た」
ここでだった、二人の前に色々な妖怪達が出て来た。
から傘に粉記事爺、一反木綿に河童、砂かけ婆に塗り壁。他には一つ目小僧やろくろ首といった日本の妖怪達だ。
彼等が出て来てだ、老人を護る様に囲んで二人に言ってきたのだ。
「お爺ちゃんに触るな!」
「御前達もあいつの仲間か!」
「仲間?あいつとは」
織田は妖怪達の言葉に首を傾げさせて言葉を返した。
「一体」
「村長に決まってるだろ」
「お爺ちゃんが子供がいないからいつも死んだら財産を寄越せって言ってただろ」
「お爺ちゃんは寄付するって言っていて言い合いになったじゃないか」
「それで御前等がお爺ちゃんをここで殺したんだろ」
「庭にある石で頭を殴って」
「いや、それは」
どうかとだ、織田は妖怪達に話した。
「拙僧達は星の者で」
「この村には神託を受けて来たぜよ」
正岡も妖怪達に話した。
「というかわし等もあの村長には胡散臭いものを感じてるぜよ」
「明らかに悪い人ですね」
「村の評判も散々ぜよ」
「拙僧達も何とかしようと思ったのですが」
「あれっ、違うんだ」
一つ目小僧が二人の言葉を聞いて言った。
「そういえばこの村ではじめて見る顔だな」
「二人共な」
「しかも悪い気配は感じないし」
「じゃあ村長の一味じゃないんだ」
「清原達とは違うんだ」
「違います」
はっきりとだ、織田は妖怪達に答えた。
「断じて。ただ先程の村長さんの殺人のお話は」
「捨て置けんぜよ」
正岡もこう言った。
「ちょっと話してくれるかのう」
「財産がどうとか言われてますし」
「どういうことじゃ」
「だからさっき言った通りで」
塗り壁が言ってきた。
「お爺ちゃんの財産を狙った村長がお爺ちゃんを殺して」
「それで、ですか」
「財産を奪ったと」
「そうした事情でしたか」
「そうだよ、わし等はお爺ちゃんがとてもいい人で若い時から仲良しで」
それでというのだ。
「一緒に暮らしていたんだけれど」
「その時にですか」
「わし等が山で遊んでいて帰ったらお爺ちゃんが殺されていえお爺ちゃんが冥土に旅立つ前に幽霊となって教えてくれたんだ」
「幽霊、ですか」
「もうお爺ちゃんは寿命だったみたいだけれど」
「殺人は事実ですね」
「優しいお爺ちゃんは村長さんについて何も言わずに冥土に言ったけれど」
「罪は見逃してはなりません」
織田は強い声で言い切った。
「では」
「どうするの?」
「ひょっとしてお二人がお爺ちゃんの仇を取ってくれるの?」
「そうなの?」
「そうします、では翌朝皆さんには一つお願いがあります」
織田は妖怪達に言った。
「庭の石で殴り殺したと聞きましたが」
「その石あるよ」
「今も庭にね」
「お爺ちゃんが幽霊になった時に僕達に教えてくれたよ、どの石か」
「庭の端にあるから」
「まだ血も付いてるよ」
「その石を持って明日村長さんのところに行きましょう」
こう言ってだ、この夜は話を終えてだった。
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