クロスウォーズアドベンチャー
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第6話:物質融合
大輔達はデジタルワールドに迷い込んだ人間の1人である蒼沼キリハと対面していた。
「で?蒼沼…キリハさん?俺達に何か用ですか?」
何時でも動けるように警戒している大輔にキリハは自分の判断は間違っていなかったようだと笑みを浮かべる。
「あのネネとか言う女に聞いた。赤いXローダーとXローダーに似た物を持っている者達がスノーゾーンでバグラ軍幹部と鉢合わせているとな…」
「ネネさんに?それにしても、デジタルワールドにはまだ俺達以外の人間が迷い込んでいるかもしれないのか…」
「あっ…あの女、一体何を考えてんのよぉ~!!」
大輔の後ろでアカリが怒りに震えているが取り敢えずキリハの話の続きを聞くことにした。
「腹の底の知れん女だが…おかげで貴様らを無駄死にさせずに済んだ。俺はお前達の戦いをずっと見てきたのだ…俺の部下になれ工藤タイキ!!本宮大輔!!一乗寺賢!!お前達には将としての才がある…!!俺の元でその才を華開かせ、共にデジタルワールドに覇を唱えようではないか!!」
「えっ…ええっ!?これって…スカウトって奴~!?」
「なる程、確かにパイルドラモンはタクティモンと渡り合ったデジモン…そしてそのパートナーである大輔達はジェネラルからすれば喉から手が出る程に欲しい存在だわ…タイキもまだまだ未熟な点が目立つけど磨けば光るダイヤの原石…」
「タイキさんの素質を考えれば大輔君達と一緒に引き入れたいと思うのも当然だわ」
テイルモンとヒカリの言葉にキリハは頷いた。
「察しがいいな、ふむ…貴様らも貴重な空戦能力を持つようだし…貴様らも引き入れるとしようか。」
「おいおい、ジェネラル達ごと俺達の軍団を取り込んで戦力アップか?そりゃちょいと虫が良すぎるぜ兄ちゃん!!」
「俺が欲しいのはそこの工藤達とパイルドラモン達だけだ。貴様らのような屑デジモンは要らん…どこなりと消えてしまえ」
キリハが欲しいのはタイキ達とバグラ軍にも対抗出来るパイルドラモン達であって、シャウトモン達は眼中にないようだ。
「んにゃっ…んだとぉコラぁ!!?」
「あんな乳臭いデジモンといても将としての勘が鈍るだけだ…貴様らの才を伸ばすための兵と戦場…全て俺が用意してやる。バグラ軍を打倒するためにそれが最良の選択なのだ!来い!!」
「…断る!!」
タイキはキリハの誘いを断る。
「!何だと…?」
「俺はただ…こいつをデジモンキングにして、大声で歌って笑ってるデジタルワールドが見てみたいだけだ!!」
「タイキさん…」
「うおおおお、タイキィ~!!」
大輔はタイキの言葉に笑みを浮かべ、シャウトモンが感動の涙を流した。
「お前の手に入れるデジタルワールドがそんな世界だとは俺には思えない!!」
「!っ…貴様は…知りたくはないのか!?自らの才能をどこまで伸ばせるのか…己の力でどれだけ大きな野望を叶えられるのかを!!」
「…興味ないね!自分の力が試したいなら余所でやってくれ!俺達には俺達の目指す勝利があるんだっ!!」
付き合いきれないと言いたげにタイキはキリハに背を向けた。
「…それは…いずれ俺とも雌雄を決する時が来るということだぞ…!?その時、戦って勝つ自信があると…?」
「俺は正直お前のことなんてどうでもいい!けどいつか戦うってんなら…その時までにお前以上の強さを手に入れるまでだ!!」
「…ほう…フフ…フフフフフフフフ!!面白い…工藤タイキとはそんな男か!益々手元に置いておきたくなったぞ貴様を…!!」
キリハは顔に手をやりながら笑う。
しかしヒカリはそんなキリハを見て嫌な予感を感じた。
そしてヒカリの予感は的中する。
「…だが…その生温い考え方だけは矯正する必要があるな…リロード…!!グレイモン!!」
キリハのXローダーから飛び出したのは太一のアグモンが進化したグレイモンとは細部が異なる存在であった。
呼び出されたグレイモンは跳躍し、パイルドラモン達に向けて尻尾を振るう。
「ブラスターテイル!!」
パイルドラモンは咄嗟に大輔達を庇う。
グレイモンの尾は地面に叩き付けられ、それによって凄まじい衝撃波を発生させた。
「あれ…グレイモンなの!?」
「う、うむ!!グレイモンはあまりの戦闘能力と凶暴さ故に時に主たるジェネラルすら食い殺すと言う…」
「僕達のいたデジタルワールドのグレイモンより相当凶暴そうだ!!」
「グレイモン!!工藤タイキのデジモン達を始末しろ!そんな甘い覚悟では…いずれ全てを失うのだということを今のうちに奴は知らねばならんのだ!!」
「ホーンストライク!!」
グレイモンが姿勢を低くし、頭部の角を突き出して此方に突撃してくる。
「パイルドラモン!!」
「エスグリーマ!!」
賢が指示を飛ばし、パイルドラモンはスパイクを出すとグレイモンの角に叩き付けた。
パイルドラモンとグレイモンの力比べはパイルドラモンが勝ち、グレイモンを吹き飛ばす。
「ほう…グレイモンが一方的に力負けしたか……パイルドラモン…ジェネラル共々、益々欲しくなったな…」
「グワッハハハハハハハハァ!!」
血を噴き出しながらも高笑いしながら起き上がるグレイモン。
「おい見たかキリハ!!奴め、俺のホーンストライクを弾き返しやがったぞ!!タクティモンと言い、強い奴ってのはいるもんだなぁ!!」
「ああ、蛇鉄封神丸を抜かせられなかったが、あのタクティモンと渡り合っただけのことはある。」
「蛇鉄封神丸…あのでかい刀の名前ですか…?」
「そうだ…あの刀、蛇鉄封神丸は一度抜かれればそのあまりの威力にゾーンその物を崩壊させてしまうと言われている…故に奴は自らそれを封印しているのだ。荒唐無稽な噂話だが…信じるか?本宮大輔」
「(…あの戦いを見た後だと、あながち噂だとも思えないんですけど…)」
「あんな化け物みたいな強さを見たらただの噂話とは思えないですよ。あの刀って、そんなにヤバい物だったのか…」
「怖じ気づいたか?本宮大輔?」
「ん~…そりゃあ怖い気持ちもありますけど、それ以上に本気のタクティモンと戦って勝ちたい気持ちの方が強いです!!負けっぱなしなのは性に合わないんで!!」
「「大輔君!?」」
大輔の予想外過ぎる発言にアカリとヒカリが思わず叫んだ。
「ふっ…やはり俺の見込んだ通りだ…此方も全力で行かせてもらうぞ!!メイルバードラモン!!グレイモン!!デジクロス!!」
「メタルグレイモン!!」
グレイモンとメイルバードラモンがデジクロスし、メタルグレイモンとなって襲い掛かる。
「メタルグレイモン…俺達の知ってるメタルグレイモンよりパワーがありそうだな!!頼んだぜパイルドラモン!!」
「おう、勝負だ!!エスグリーマ!!」
「トライデントアーム!!」
メタルグレイモンの超高温の爪とパイルドラモンのスパイクがぶつかり合う。
「やるな!!」
「そっちこそな!!」
パイルドラモンは距離を取り、生体砲を構え、メタルグレイモンも全兵装を展開した。
「デスペラードブラスター!!」
「ギガデストロイヤー!!」
2体の必殺技が激突する。
威力はパイルドラモンが上回っていたためにメタルグレイモンが多少だが、ダメージを受けている。
「ぶわっはっはっはっは!ギガデストロイヤーを押し返しやがった!面白くなってきたぞ!!」
楽しそうなメタルグレイモンに対し、パイルドラモンは顔を顰めている。
「(まずい…そろそろ限界だ…このままだとデジクロスが解除される。)」
タクティモンとの戦いで相当体力を消耗したパイルドラモンは生体砲に触れる。
それを見たメタルグレイモンも全兵装を展開したが…。
「デスペラードブラスター!!」
砲撃はメタルグレイモンではなく地面に放たれた。
「何!?」
予想外の行動にメタルグレイモンとキリハが目を見開き、煙が晴れた時にはパイルドラモンや大輔達はいなかった。
「逃げたか…」
「んなああああ!?俺はまだ全然楽しみ足りんぞおおおお!?」
「奴はタクティモンとの戦いで消耗していたからな…」
「負傷した他の戦力のことも考慮し、このまま戦い続けては敗北の可能性があると判断したか。」
メイルバードラモンがそう言うとキリハも頷いた。
「ふん…戦闘力だけでなく判断力もあるようだな。そうでなくてはな。だが…このエリアのコードクラウンを持っていない限り、そう遠くへ行けた物でもない。すぐに狩り出してやるぞ…!!」
そして離脱したパイルドラモンは近くの洞窟の前に降りるとデジクロスが解除され、幼年期に退化している。
「チビモン…限界だったんだな…」
「ミノモン、初めてのデジクロスなのに無理をさせてすまない。」
「腹減った…」
「分かった食い物だな?沢山食って回復しろ」
大輔が鞄から食べ物を出してチビモンとミノモンに差し出す。
そしてタクティモンとの戦いでダメージを負ったシャウトモン達はキュートモンの手当てを受けている。
「お疲れ様大輔君、一乗寺君も…パイルドラモン、凄かったね」
「強いけど、1回の進化で幼年期に戻っちまった。あんまり気楽に使えないな」
「超進化と同じだ。慣れれば数回くらい出来るようになる。」
超進化経験済みのテイルモンが言うと大輔と賢も頷いた。
「でも、出来れば1人で完全体の力が出せるようになれればなあ」
「無理よ、一乗寺君はともかく大輔君は紋章がないじゃない…」
「うーん、フレイドラモンとライドラモンが完全体くらいの力を出せれば…ん…?もしかしたら……試してみる価値はあるかも」
「?どうし…」
「ドルルモン!!」
ヒカリが言い切る前にアカリの声が響き渡る。
その声に全員がそちらに向くと、傷ついたドルルモンがここから去ろうとしていた。
「どこ行くのよ、その体で…今は早く傷を治さないと…」
「言ったはずだ。次のゾーンまで便乗させてもらうだけだってな…それに、今のあいつに俺の怪我を治せるかな…?」
ドルルモンの言葉に全員がハッとなり、視線がキュートモンに向けられた。
「ド…ドルルモン…!」
キュートモンの脳裏にドルルモンとの思い出が過ぎる。
「俺がバグラ軍だったってことは本当だ…多くの街村を焼き滅ぼしたってのもな」
「確かにタクティモンはそう言ったけどさ…」
大輔は確かにタクティモンがそう言っていたことを思い出す。
「けど…今はそうじゃねえ!!何か理由があるんだろ!?バグラ軍にいたことだって…」
シャウトモンの問いにドルルモンは俯きながら口を開いた。
「理由なんてねえ…あの頃の俺は力だけが正義だと信じてた。強けりゃあ何をやっても許されるんだってな…正直…どれだけの村を滅ぼしたのかさえ、碌に覚えてねえのさ…その中に…キュートモンのいた村があったかどうかすら…な。」
「キュ!!キュウ~~~~ッ!!」
キュートモンは泣きながらドルルモンから逃げ出した。
「キュートモン…おい、ドルルモン。良いのかよ!!?」
食べ物を食べて回復し、成長期に進化したブイモンがドルルモンに駆け寄る。
「良いんだよ。ブイモン、シャウトモン。お前達は良い奴らだあいつと別れる前に…お前らと出会えて良かったよ。賢、お前のことを理解して罪さえ受け入れてくれた友達を大事にしろよ」
「ドルルモン…」
「キュートモンのこと…頼む!!」
キュートモンのことをタイキ達に託し、ドルルモンは洞窟から飛び出して行く。
「えぇ…あ、おい!!待てよぉ!!」
「ドルルモン!!」
「タイキっ!?」
「あいつを行かせちゃ駄目だっ!!みんなの心を1つにしないと…俺は…俺達は勝てない!!…どあっ!?」
ドルルモンを追い掛けようとするタイキだが、何かに躓いて転んでしまった。
「大丈夫ですか?タイキさん?」
「っててて、くっそ~。な…何か雪に埋もれて…って、うわあ!?」
「う…ううう…」
「タクティモンの部下のムシャモン…にしては少し変ですね…?」
「うん、何かボロボロっぽい」
賢とワームモンが雪に埋もれながら倒れているムシャモンっぽい何かを見遣る。
「とっ、殿ーっ!!あれ!!?」
「わっ!?」
突如跳ね起きたムシャモンっぽい何かがタイキ達に気付くと大袈裟に驚く。
「なっ…何じゃお主らっ!!?さ…さては落ちのびた拙者を追って参った落ち武者狩りかぁ~!?かくなる上は徒に抵抗する気はござらん。某とて武士の端くれ!往生際は心得てござる!!さあ、煮るなり焼くなり好きにするが良い~っ!!さあさあ…あれ?」
タイキ達はムシャモンっぽい何かに攻撃するどころか逆に距離を取り、全員を代表してヒカリが言う。
「あ…あの、私達はそれどころじゃなくて…攻撃しないなら逃げてもいい…」
「そ…そんなこと言わずに煮たり焼いたりしてくれい!!拙者の一世一代の見せ場なんじゃ~!!」
「いやああああああ!?」
「何してんだてめえーっ!!」
ヒカリにしがみついたムシャモンっぽい何かにヒカリは悲鳴を上げ、大輔はムシャモンっぽい何かに回し蹴りを繰り出した。
「あ!珍しい~!!そいつムシャモンじゃなくてオチムシャモンよ!!」
【オチムシャモン…?】
リリモンの言葉に全員が疑問符を浮かべ、しばらくして全員が落ち着いた頃にオチムシャモンが語り始めた。
「如何にも…拙者はオチムシャモン!!立派な落ち武者となるべくバグラ軍に入ったが…タクティモン様が強すぎて中々良い負け戦に巡り会えなくてのう」
「お前みたいな部下がいたんならタクティモンが滅茶苦茶苦労したのが分かるな。」
「ええ」
大輔とテイルモンが蔑みの目でオチムシャモンを見遣る。
「そうこうしているうちに今度の戦でお主らの攻撃で吹っ飛ばされて、主君と離れ、1人迷子になっておったのじゃ…」
「オチムシャモンはムシャモンの亜種でね。戦に負けて落ち延びるロマンに全てを賭ける変わり種のデジモンなのよ!!」
【ええ~…?】
「捻くれ過ぎだ。そのロマンは!!」
「デ…デジモンって本当色んな奴がいるんだなぁ…」
オチムシャモンの捻くれ過ぎにも程があるロマンに全員が微妙そうな顔になる。
「そういうわけで大輔殿!拙者を蹴り飛ばしたついでに打ち首獄門にして川原ににさらしたりしてくれんかのう?」
「するか!!!」
怒鳴りながらオチムシャモンを蹴り飛ばす大輔。
「痛たたた…おや、そう言えば…お主らの隊にドルルモンがおらんかったか?奴はどうしたんじゃ?」
オチムシャモンの言葉に全員が目を見開く。
「!!…お前…!ドルルモンのこと知ってるのか!?」
「おうともよ!!共にタクティモン様の軍で同じ釜の飯を食った仲じゃ!ドルルモンは代々戦士の一族らしくてな。直向きに強さを求めて戦う猛々しい男じゃったよ…まあ、縁起が悪いとか言われてあまり仲良うはしてもらえんかったがのう…全く付き合いの悪い奴じゃったわい!!」
【いやそれはドルルモンが正しい】
オチムシャモンの発言に全員がツッコんだ。
「待てよ…じゃあ…お前、ドルルモンがバグラ軍を抜けた理由を知らないか!?」
「そうよ!強さが全てだったドルルモンが何であんなキャラに変わっちゃったの…?」
タイキとアカリは同僚だったオチムシャモンならドルルモンがバグラ軍を抜けた理由を知っているのではと思って尋ねた。
「ああ…そりゃ、あの事件がきっかけじゃろうなぁ…」
「「事件…!?」」
“事件”と言う単語にタイキと大輔が反応する。
「昔…とある戦場でな。奴は幼いデジモンばかりで構成された訓練中の部隊を指揮しとった…それが何故か敵部隊の主力の足止めを命ぜられたんじゃ。タクティモン様の指示でな…ドルルモンが隊を離れたその時…タクティモン様はその戦線を仲間ごと砲撃するように命ぜられた!!大戦果じゃったよ…何せ、こちらの弱小の部隊と引き換えに敵の主力を一網打尽に出来たんじゃからのう!じゃが…戦場に戻ったドルルモンが見た物は…累々と横たわるかつての教え子達の姿じゃったと言う…それ以来…あらゆる犠牲を厭わず、ただ勝利だけを目指していた奴の戦い方は変わっていった…。」
「…それで?」
大輔がオチムシャモンに話の続きを促す。
「そしてある日、同じように捨て駒にされようとした部隊を命令に背いて脱出させ、自らも姿を眩ませたんじゃ…その作戦は…タクティモン様の戦史に残る数少ない、失敗の記録となったよ」
「だからドルルモンは僕にあんなことを言ったのか…」
賢の気持ちを察しているような言葉は同じ罪を犯した者だからこそ言えたのだろう。
「ドルルモンは…その時、初めて仲間を失う辛さを知ったんだね…」
オチムシャモンの話を聞いて、キュートモンは涙を滲ませながら口を開いた。
「ド…ドルルモンは…僕の前で一度も心の底から笑ったことが無かったキュ…いつも冗談めかしたり…淋しそうに笑うだけで…!!(そんな…そんな傷付いた心を隠して僕のことを…!!)」
「キュートモン!!」
洞窟の入り口に向かって駆け出すキュートモンに全員が振り返る。
「僕…僕、謝りに行ってくるキュ!!ドルルモンはまだきっとすぐ近くに…キュ!!?」
洞窟の入り口付近で急停止するキュートモン。
そこには何と、メイルバードラモンがいた。
「メイル…バードラモン…!!」
「しまった…見つかっちまったか……」
大輔は思わず顔を顰め、舌打ちした。
「…俺は耳も利くぞ…こんな雪の降る音しかしないような場所で大声で話すものではないな…」
「(まずい…ブイモン達もシャウトモン達も回復しきってない…でも、このままじゃ逃げられない…よし!!)賢、キュートモンと一緒にドルルモンを連れ戻してくれ。」
「本宮君…!?」
「アカリ…お前も賢と一緒に行ってくれ!!このまま逃げ出したんじゃあいつは独りぼっちになっちまう!それじゃ駄目なんだ!!そんな戦い方してちゃ…俺達は前に進んで行けないんだ!!」
「…うん!!」
「分かった…頑張ってくれ!!」
賢とアカリは力強く頷くと、キュートモンを連れてドルルモンを追い掛ける。
「?…何だ何だ、まだ何かゴタゴタしているのか?やれやれ…こんな奴ら俺1人で簡単に片付けられるものを。お前が出るまでも無いんじゃないか?キリハ…」
「全戦力を持って完膚無きまでに叩き潰す!!その甘さへの絶望を奴の魂に刻みつけてやるのだ!!」
「ヒカリちゃんとテイルモンはメイルバードラモンを頼む。グレイモンは俺とブイモンが…シャウトモン達は他の奴らを頼む!!デジメンタルアップ!!」
「ブイモンアーマー進化、燃え上がる勇気!フレイドラモン!!」
進化するのと同時に一気にグレイモンに肉薄し、殴り飛ばす。
「ぐおっ!?」
そして倒れたグレイモンの尾を掴み、砲丸投げの要領で振り回す。
因みに接近してきたガオスモンはフレイドラモンが振り回しているグレイモンを叩き付けることで吹き飛ばした。
そして勢いが充分に乗ってきたところでグレイモンを投げ飛ばす。
「うおりゃああああああ!!」
投げ飛ばされたグレイモンは勢い良く地面に叩き付けられ、雪を舞い上げた。
「デジメンタルアップ!!」
「轟く友情!ライドラモン!!ブルーサンダー!!」
フレイドラモンからライドラモンに切り替え、倒れているグレイモンに電撃弾を連射する。
「まだまだまだまだあ!!」
発射回数が10を軽く超えた時、ライドラモンは息を荒く吐きながら煙が上がっている場所を見つめる。
「ぬおおおお!!」
グレイモンが煙を突き破り、ライドラモンに向かって突撃してきた。それを見たライドラモンはすぐに回避する。
「ブルーサンダーを10発以上喰らったのにまだ動けるなんてな。タフにも程があるぞ」
「ぶわぁっはっはっは!!これくらいの傷で伸びていられるか!!久しぶりに大暴れ出来る相手に出会えたんだからなあ!!」
「そうかよ!!ブイモン進化、エクスブイモン!!」
ライドラモンからブイモンに退化、直後にエクスブイモンに進化し、グレイモンに突撃する。
「どりゃああああ!!」
「グルオオアアアア!!」
エクスブイモンとグレイモンの拳が激突し、周辺に凄まじい衝撃波が迸る。
「戦況に応じてパワー重視とスピード重視、バランス重視に切り替える能力か…デジクロスもせずに単体であのような戦いが出来るとは…あのデジモンの値打ちは上がるばかりだな…中々良いデジモンを従えているな本宮大輔。」
「へっ!!まだまだ俺達の力はこんな物じゃないですよ!!」
「ほう?切り替え能力だけでなくまだ有るというのか?」
「まあ、まだ成功するかまでは分かりませんけどね!!」
大輔は軽く戦況を見る。
シャウトモンX2はガオスモン達を抑え、ネフェルティモンはメイルバードラモンを抑えているが、此方の体力は万全ではないためいずれ不利になる。
ならば短期決戦を仕掛けるしかない。
「一か八かの賭けだ!!勇気のデジメンタル!!友情のデジメンタル!!マテリアルクロス!!」
「え!?」
「道具の…デジクロスだと!?」
ヒカリとキリハが1つになるデジメンタルを見つめる。
勇気と友情のデジメンタルは1つとなり…新たなデジメンタルとなる。
「き、希望のデジメンタル!?よりにもよってタケルのかよ!?くそ!!デジメンタルアップ!!」
「ブイモンアーマー進化、地上最大の希望!サジタリモン!!」
ブイモンが希望のデジメンタルでアーマー進化したのは、どことなくフレイドラモンとライドラモンの面影を持つデジモンであった。
「まさか…デジメンタルをデジクロスさせたの!?」
「デジクロスアーマー体と言ったところかしら…」
ヒカリが目を見開き、ネフェルティモンが呟くと、キリハがXローダーを構えた。
「フレイドラモンとライドラモンがデジクロスした姿と考えて良さそうだ。単体でデジクロスをするとは面白い。此方も全力で行かせてもらうとしよう…メイルバードラモン!!グレイモン!!デジクロス!!」
「メタルグレイモン!!…さあ、お前の力を見せてみろ!!」
「へっ、サジタリモンの力を甘く見るなよ!!」
メタルグレイモンの兵装がサジタリモンに向かって展開され、勢い良くビームを発射した。
「サジタリモン、回避しながら距離を詰めるんだ!!」
サジタリモンはビームを軽やかにかわしながらメタルグレイモンに肉薄した。
「ライドラモン以上の高速移動だと!?」
「スピードだけじゃないですよ、パワーだってフレイドラモン以上だ!!何故なら…」
「喰らえ!!」
「ぐおっ!?」
「ただのアーマー進化じゃない、進化の力に加えてデジクロスのパワーも合わさってるんだ!!」
メタルグレイモンがサジタリモンの拳を顎に喰らい、仰向けに倒れた。
キリハとの戦いはまだ続く。
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