永遠の謎
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564部分:第三十三話 星はあらたにその九
第三十三話 星はあらたにその九
「その絵画もあります」
「聖杯城の主といいますと」
カインツも気付いた。そのことに。
「陛下は」
「そうですね。そうなりますね」
カインツに言われてその通りだとだ。王も微笑んで答えた。
そうしてだ。彼に対してこう言うのだった。
「私はパルジファルですね」
「そう思うのですが」
「清らかな愚か者」
何時しか微笑みだ。王は述べる。
「私はそれですか」
「はい。失礼ながら」
「いえ、失礼ではありません」
「それならいいですが」
「そうですか。ワーグナーも言っている様です」
他ならぬだ。彼もだというのだ。
「私はパルジファルだと」
「あの洞窟はそのパルジファル王の子息の」
「ローエングリンですね。そうでしたね」
「そうした意味でもここはモンサルヴァートですか」
「この城以外の。ノイシュヴァンシュタインやヘーレンキムゼーもです」
リンダーホーフ以外にもだというのだ。そうした城は。
「私の築く城は」
「外観や内装が違っていても」
「モンサルヴァート。この世にあるそれは一つとは限りません」
「この世にあるならですか」
「あちらの世にあるあの城は一つですが」
それでもだった。この世にあるのは。
「幾つもあっていいと思いまして」
「幾つもですか。それはどうして」
「私にもわかりません」
王はカインツの今の問いにはだ。この返答だった。
憂いの、王の非常によくあるその顔になってだ。それで言うのだった。
「ですがそれでも。幾つも築けと」
「築け、ですか」
「そう言われる気がしてです。いえ」
言葉を訂正させた。その訂正した言葉は。
「言われています」
「誰にでしょうか」
「騎士です」
あの騎士のことをだ。王は述べたのである。常に王に語り掛けてくるあの騎士のことを。
「その騎士に言われた様に思えまして」
「騎士ですか」
そう言われてだ。カインツはだ。
その騎士が誰なのか彼の考えられる中で考えた。そうして。
こうだ。王に答えたのである。
「ホルニヒ殿でしょうか」
「彼が私の騎士だというのですね」
「はい、違うでしょうか」
「ではそう思われて下さい」
カインツにはわからないと見てだ。王は述べた。
「その様に」
「はい、それでは」
「ではです」
また言う王だった。
「城の中を見回りますか」
「まさか陛下が」
「案内させてもらいます」
王自らだ。彼を城の中に案内していくというのだ。
「そうさせてもらって宜しいでしょうか」
「有り難き御言葉」
王にそうしてもらえるとは流石に夢にも思わずだ。こう答える彼だった。こうしてだ。
カインツもまた王の傍にいるようになった。そうして王の庇護を受けてだ。彼は俳優として大成していくのだった。だが王は次第にだった。
人を拒む様になっていた。さらに深く。しかしその中でもだった。
王はだ。バイロイトのことをだ。ホルニヒに尋ねたのである。
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