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魔法が使える世界の刑務所で脱獄とか、防げる訳ないじゃん。

作者:エギナ
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第一部
  第4話 小ネタ詰め

◆ 誰がモテる? ◆

 昼頃。昼食の時間が終わり、囚人達は房に戻っていた。

「ねぇ、琴葉ちゃん」

 巡回の途中、九〇四番に声を掛けられ、脚を止める。

「…………何だクソ野郎」
「酷くない? まぁ、それは置いておいて、俺達四人の中で、誰が一番モテると思う? やっぱり俺だよねっ?」
「無いねあと自惚れるなクソ野郎」
「即答!?!?」

 そんなくだらないことで私の仕事を邪魔すんなとツッコみたいが、少し待ってやる。ここで答えを出しておけば、少しの間話の種を見付けられず、静かになるのでは無いかと思ったからだ。
 此奴等のことだから、きっと誰が一番モテるかで揉めて、女である私に聞こうと思ったのだろう。

「誰が一番かと言ったら、レンじゃ無いの? イケメン担当(仮)の二人のどちらかだったら、レン。四番はあれだ、『御前は僕の下僕だ。一生僕に仕えろ』とか言うだろ?」
「貶しているのか? 褒めているのか?」
「知らない。もういい、仕事残ってるからじゃあね。絶対脱獄しないでね脱獄したら今度は監禁するから」

 四番のツッコミを捌いて、すぐに踵を返す。まだ仕事は途中なのだ。
 後ろでぎゃいぎゃい騒いでいる声が聞こえたが、暫くして収まったので、気にしないでおこう。

904「レンー、今のどう思ったー?」
100「……嬉しいけど」
4「何だ? 照れてるのか?」
89「レンくんかわいー!」
100「…………何言ってんだよ」
904「……俺、気付いたわ」
89「なになにー!?」
904「レンと、琴葉ちゃんって、両想いじゃね?」
4「いや、恋まで発展している訳が無いだろうが」
89「ねー。流石変態担当、妄想の度が違う」
100「あー確かに」
904「ひどくね……?」



◆ クリスマスの準備 ◆

 私が納める(?)この一舎は、毎年恒例行事の真っ最中である。

「おらー囚人共ー! さっさと飾り付けしろー」
「「「はーい」」」

 一二月二五日、クリスマスの準備だ。
 一舎では、クリスマスツリーの飾り付けを、(面倒臭いから)囚人達にやらせているのだ。モミの木が飾ってある広場の飾り付けもセットで行っている。

「赤いのはこっちー。黄色いのがそっちー。あ、その青いのもうチョット右にしてー。あ、おっけー」

 飾り付けの仕方を説明しよう。
 まずは飾り製作班。ツリーの下辺りで、魔法を駆使して飾りを製作。赤、青、黄色の球体の飾りや、綿の様なふわふわした飾り、ツリーに巻き付けるような飾りを作っている。
 次に飾り付け班。魔法を使って、飾り製作班が作った飾りを浮かせ、上手くモミの木に飾る。配色もしっかりと考えているようで、流石魔法を使いつつ作業する、その集中力や頭の回転は流石だなぁと感心する。
 最後に最終チェック班。飾り付け班が付けた飾りの位置を、魔法によって微調整する。御陰で、人の数十倍もの大きさをしたモミの木が、市販の小さなクリスマスツリー並みの精度で仕上がりつつあった。

 因みに巨大モミの木は、第一魔法刑務所の一の阿呆が買い、苗から魔法によって一瞬で育てたモノである。


「……ここまでは順調…………って、オイ!!」

 モミの木の上の方を見て、私は絶句した。
 やはり間違いだったか…………!

「レン、下りて!」

 木の天辺付近に、巨大な星を抱えたレンが居た。
 魔法は使っておらず、滑ったら真っ逆さまに落ちていき、地面に頭からぶつかって、確実に死ぬ。

 取り敢えず、この作業を九〇四番、八九番、四番、レンに任せたのが間違いだった。飾りの製作も、飾り付けも、飾りの微調整も出来ないだろうと考え、一番単純なクリスマスツリーの、あの天辺の星を付けろと指示したのが悪かった。

 少しすると、やはりレンは脚を滑らせ、飾りを抱えたまま落下してくる。
 周りの囚人が悲鳴を上げる中、咄嗟にレンの落下地点付近まで走る。脚を一瞬だけ魔法で強化し、地面を強く蹴る。そして、レンを俗に言う"お姫様抱っこ"して、地面に着地。すぐに九〇四番達が近寄ってきて、レンを心配し始める。そんなんだったら自分で行けやボケ。

「……ありがとな、琴葉」

 レンがお礼を言ってくる。こうやって面と向かって言われると、何というか小っ恥ずかしい気がしてくる。

「囚人を守ることは私の仕事なんだけど?」

 照れ隠しでは無い。自然と出て来た言葉で返す。が。

「ツンデレかー琴葉ちゃんはー」
「照れてるー」
「素直に『どういたしまして』で良いんじゃ無いのか?」

「煩い九〇四番、八九番、四番!!」

 暫くの間九〇四番と睨み合った後、申し訳なさそうに星の形をした飾りを抱えているレンに気付く。
 
 仕方が無いので、レンの膝と背中に腕を回し、再度"お姫様抱っこ"の状態にする。レンが慌て始めるが、気にせずに飛行魔法を使い、騒ぎの間に完成したクリスマスツリーの天辺まで上昇する。

「ほら。付けなよ」

 クリスマスツリーの近くまで寄ると、レンは星の飾りを天辺に付けた。すると、下の方で拍手が起こる。かなりの距離があるのに聞こえると言う事は、相当な音量なのだろう。


「イケメン死ねええええええええええええ!!!!!!」
「九〇四番!! てめぇ一回黙れぶっ殺す!!!!」


 変態担当は、何時だって、ぶれない。から死ねばいいのになぁ。

 
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