永遠の謎
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527部分:第三十一話 ノートゥングその八
第三十一話 ノートゥングその八
「しかし。ああしてフランスを攻撃することはだ」
「どうしても認められませんか」
「許せないものがある」
実際にそうだと。王は述べた。
「どうしてもな」
「仕方ありませんね。しかしです」
「このことは解決できるか」
「時間によって」
時が全てを解決してくれる。そうだというのだ。
「ですから少しお待ち下さい」
「そうすればいいか」
「ワルキューレのこともありますが」
「あのことか」
「はい、ワーグナー氏もまたご立腹です」
「待てなかったのだ」
これは自己弁護だった。王にとってはいささか珍しいことに。
「あの作品を。そしてだ」
「これからもですね」
「指輪は最後まで観てこそだ」
ニーベルングの指輪四部作を全てだと。王は述べる。
「それも一刻も早く観たい」
「早急に」
「だからああしたのだ」
待てなかった。どうしてもだった。
「だがそれは」
「間違ってはいません」
「そうか。そしてか」
「ワーグナー氏も間違っていません」
彼もまただというのだ。間違ってはいないというのだ。
「ドイツ人として」
「そうだな。ドイツ人だからこそ」
「陛下はフランスを愛されています。しかし」
「そうだ。ドイツの敵だ」
「神聖ローマ帝国、ハプスブルク家とヴァロワ家の頃から」
王の従姉であるそのエリザベートが嫁いだだ。ハプスブルク家とだというのだ。
「ですから。どうしてもです」
「戦わねばならなかった」
「そしてドイツは勝ちました」
プロイセンと一つになっていた。ここでのドイツは。
「後は統一です」
「そうだ。それも間も無くだ」
「陛下はその統一されたドイツの中で」
「果たすべきことをするのだな」
「それまでの時間はあります」
騎士は微笑み王に述べる。
「じっくりと為されて下さい」
「そうか。時間はあるのか」
「それを果たされてから陛下のおられるべき世界に入る」
騎士はこう王に話していく。
「それが陛下の運命ですから」
「だからだな」
「はい、世界をゆっくりと築かれて下さい」
騎士の背にだ。その世界があった。
王は自室にいながらその世界を観てだ。騎士に述べた。
「そうしよう。ゆっくりとな」
「では私は今日はこれで」
「また来てくれるな」
「私は陛下の忠実な騎士です」
これが王へのだ。騎士の返答だった。
「ですから」
「では。また会おう」
「それでは」
こうした話をしてだった。騎士は王の前から姿を消したのである。そうしてだ。
王は一人でも城について考えていった。その考える世界はワーグナー、バロックやロココも入れたそれだった。神話とキリスト教、そして科学がその中にあった。
科学についてだ。王はアルプスを観つつホルニヒに話した。
アルプスは青と白がありだ。そして麓には緑が広がっている。
青い空の下にあるその世界を観つつだ。ホルニヒに話すのである。
「この世界を。アルプスの上を」
「アルプスの上を」
「飛びたいものだ」
こうだ。そのアルプスを観ながらの言葉だった。
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