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永遠の謎

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521部分:第三十一話 ノートゥングその二


第三十一話 ノートゥングその二

「全てはだ」
「そうしてドイツ帝国がですか」
「成立しますか」
「第二の帝国だ」
 ドイツにとってだ。そうした国だというのだ。
「神聖ローマ帝国を第一としてな」
「神聖ローマ帝国は多分に名前だけの国でしたが」
「その中には多くの独自の国家がいましたが」
 所謂領邦国家だった。途中皇帝、ハプスブルク家の力が強くなろうとしたが宗教対立によりそれは頓挫し三十年戦争とウェストファリア条約により帝国は事実上崩壊しナポレオンにより印堂を渡された。
 しかしその後にだ。再びだというのだ。
「ドイツに帝国が誕生する」
「そうなりますか」
「そうだ。我が国は東にも強大な国を抱えることになる」
 歴史的な宿敵であるイギリスと共にだというのだ。
「辛い時代が待っているな」
「この戦争の後で」
「そうした状況になりますか」
「だがそれでもだ」
 自国にとってそうした未来になるとわかっていてもだ。皇帝は。
 己の果たすべきことを果たす為にだ。玉座を立ち。
 そのうえでだ。重臣達に告げた。
「ではだ」
「はい、戦場にですね」
「赴かれるのですね」
「最後の最後は。せめてだ」
 権力を求め韜晦と欺瞞を駆使してきた。それはメキシコで破綻しマルクスによって暴かれその権威は失墜した。しかしそれでもだというのだ。
 皇帝は自国の為に最後の務めを果たす為にだ。今戦場に向かうのだった。そうして。
 セダンにおいてだ。皇帝は二十万の大軍と共にプロイセン軍に降伏した。それを受けてだ。
 ビスマルクはだ。周囲にこう言った。
「この降伏は受ける」
「受けられますか」
「フランス皇帝の降伏を」
「戦争は早く終わらせるに限る」
 だからだというのだ。
「私が自らセダンに赴きだ」
「フランス皇帝の降伏を受諾されますか」
「そうだ。そうする」
 自分自身がそうするというのだ。
「そして皇帝には礼を尽くす様にな」
「敵とはいえ皇帝ですし」
「そのことはですね」
「礼節をわきまえぬのは蛮人だ」
 ビスマルクは元々外交官だ。その外交官の立場からだ。
 彼は礼節を忘れなかった。それを周りにも言うのだった。
「いいな。それは守る様に」
「はい、それはよく」
「承知しています」
 周りも彼の言葉に頷きだ。そうしてだった。
 彼は自らセダンに赴きフランス皇帝と会いだ。降伏を受け入れた。これで戦争は終わった。
 だが、だ。ビスマルクは会見の後で戦局とフランスの現状を聞いてだ。こう言うのだった。
「フランスとの戦争は終わったがだ」
「後はベルサイユですね」
「そこに行かれてですね」
「遂に陛下がですね」
「ドイツ皇帝になられるのですね」
「それだけではない」
 ここではだ。ビスマルクの顔は残念そうなものだった。 
 その厳しい顔にそれを見せてだ。彼は言うのである。
「戦争は続くな」
「しかしフランスは降伏しました」
「フランス皇帝が自らそれを宣言しています」
「フランスの新政府もそれを了承する様ですし」
「それでは」
「政府が了承してもだ」
 それでもだとだ。ビスマルクは言うのだった。
 
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