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永遠の謎

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516部分:第三十話 ワルキューレの騎行その十五


第三十話 ワルキューレの騎行その十五

「ですから少しだけです」
「では聞こう」
 王は冷静だが不機嫌なものも見せてだ。その侍従に述べた。
「卿は王に命令をできるのか」
「いえ、それは」
「そうだな。王に命令できるのは二人だけだ」
 その二人はだというのだ。
「教皇、そして皇帝だけだな」
「しかしです。続報は」
「後で聞く」
 こうも返した。
「そうさせてもらう」
「では今は」
「馬だ」
 それに乗ってだというのだ。
「少し時間をかける。それではだ」
「あの、本当に大事なことなのですが」
「結果はもうわかっている」
 王にはだ。それは最初からだった。
「ならば後で聞いても問題はない」
「そう仰るのですか」
「そうだ。では行って来る」
「左様ですか」
 こうしてだ。王は一人遠乗りに出た。そうして自然の中に馬を飛ばす。
 緑の森の中を抜け青い湖のほとりに来た。そこに来ると。
 あの騎士がいた。騎士は恭しく一礼してから王に述べてきた。
「御待ちしていました」
「ホルニヒの隣にいたな」
「お気付きでしたか」
「ホルニヒも妙に思っていた」
 彼の気配を感じてだ。王は騎士にそのことを話したのだ。
「卿の姿は見えなかったがな」
「悪戯になったでしょうか」
「そうだな。他愛のない悪戯だ」
 王は既に馬から降りている。そうして湖の傍に座っている。騎士はその王の傍らに来て立ちだ。そのうえで王に対して話をしている。
 その騎士にだ。王はまた話した。
「気にすることはない」
「それでは」
 王のいいという言葉を受けてからだ。騎士はあらためて王に問うた。
「それでなのですが」
「先程のことか」
「陛下はドイツの統一を喜ばれていますね」
「私とてドイツの者だ」
 湖、青いそれを見ながらだ。王は答えた。目はそこにある。
「それでそれを喜ばない筈がない」
「しかしですね」
「戦いは好きではない」
 そうだというのだ。
「そしてフランスとの戦いはだ」
「余計にですね」
「ドイツを心から愛している」
 王は言った。
「父なるドイツと言われるが私にとってはだ」
「騎士ですね」
「卿だ」
 その騎士に顔をやり。そうして答えたのだ。
「まさに卿だ」
「父ではなく騎士ですか」
「父となると。それは恐れ多いものになる」
 しかしだ。それが騎士となるとどうかというのだ。
「そこが違う」
「そうなりますか」
「騎士は傍に。いつもいてくれる」
 今そこにいる騎士とドイツをだ。一つにしての言葉だった。
「そこが違う」
「そしてその騎士なるドイツと」
「フランスが戦うことはだ」
 どうかとだ。王は憂いに満ちた顔になり。
 そのうえでだ。騎士に話したのだ。
「私はフランスも愛している」
「ドイツに次いで」
「そうだ。ドイツは第一だ」
 ドイツの者としてだ。これは否定しなかった。
 
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