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永遠の謎

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513部分:第三十話 ワルキューレの騎行その十二


第三十話 ワルキューレの騎行その十二

「オットーではもう」
「そのオットー様ですが」
「今はです」
「御体調はいいです」
「そうですか。今はですか」
 王はそれを聞いてだ。少しだけ。
 その顔の憂いを晴れやかにさせてだ。言った。
「では少しの間にしてもですね」
「はい、陛下の代わりもです」
「務められますので」
「わかりました」
 そのことも聞いてだ。まただった。
 王は少しだけ晴れやかになった。そうしてであった。
 周りにだ。こう言ったのだった。
「将兵達には労いを忘れずに」
「我がバイエルンの兵達」
「彼等にですね」
「そうします。それと」 
 さらにだった。王は。
 このことをだ。彼等に話した。
「殿下のことですが」
「プロイセン王太子ですね」
「あの方ですか」
「あの方が私と御会いしたいそうですね」
 ドイツ南軍、南部の緒国家の連合軍の指揮を執るのが太子なのだ。その太子とだ。
 王はだ。会うというのだった。
「ではです」
「会われますか」
「是非共」
「はい、そうです」
 そうすると言ってだった。王は。
 周りに太子と会うことを約束した。そうしてだ。
 プロイセン軍の軍服を着た見事の金髪の太子と会った。太子はまずはバイエルン軍の軍服を着ている太子と敬礼を交えさせた。
 太子が先、王が後にだ。そうしてからだ。
 太子がだ。王に対して言った。
「今我が軍は勝っています」
「そうですね。順調に」
「このままパリまで進軍してです」
 そしてだ。どうかというのだ。太子は。
「ドイツ帝国が生まれるのです」
「そうなりますね。よいことです」
「バイエルン王もそう思われますね」
「はい」
 そうだとだ。王は言葉では応えた。
「私もまた」
「左様ですか。では今からですが」
「劇を御覧になられますか」
 王からだ。太子に話した。
「そうされますか」
「劇ですか」
「はい、ワレンシュタインですが」
「いいですね、あのシラーの劇ですね」
「そうです。あの劇は如何でしょうか」
 王は笑ってはいない。表情は何処か強張っている。太子もその顔を見ていた。
 だが太子はそのことについては何も言わずにだ。王にだ。
 微笑みをつくりだ。こう答えたのだった。
「はい、それでは」
「御覧になられますか」
「そうさせてもらいます」
 太子は微笑んで応えた。そうしてだ。
 そのうえでだ。こうも言うのだった。
「ワレンシュタインの敵はスウェーデンでしたね」
「そうですね。舞台においては」
「スウェーデン、あの時のドイツの敵でした」
 既にだ。太子の中ではだ。
 ドイツは一つになっていた。そしてそのドイツの敵は何なのか。
 太子は王にだ。そのことを話した。
「そして今はフランスですね」
「そうですね。フランスですね」
「そのフランスを我々は今倒しています」
 太子はここでは確かな微笑みになり述べた。
 
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