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永遠の謎

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486部分:第二十九話 人も羨む剣その八


第二十九話 人も羨む剣その八

「私は。あの方をお助けしたい」
「だから政治利用はこのことだけにして」
「後はですか」
「そうしていく」
 ビスマルクとて人間でありだ。人の心はあった。それでだ。
 バイエルン王に対してもだ。節度、そして敬意を持って接していた。そしてそれはだ。バイエルンの民達、彼等も同じであった。
 確かに婚姻は破棄された。しかしだった。それでもであった。
 王に対してだ。静かな敬意を以てだ。その乗る馬車を見て言っていた。
「見事な馬車だな」
「あの方に相応しい」
「もっとお姿を見せて欲しいのだが」
「折角あそこまでお奇麗なのだから」
 王の容姿の麗しさは男性であってもだった。
 誰から見ても惚れ惚れとするものでだ。こう言わせるものがあった。
 それでだった。彼等もだ。
 その王の乗る馬車を見て。残念に思っていた。
 しかし王はだ。馬車から出ようとしない。顔を見せようとしない。
 そのうえでだ。ミュンヘンからある場所に向かっていた。 
 馬車に共に乗るホルニヒがだ。その王に尋ねた。
「アルプスに行かれるのですか」
「そうだ。あの場所にだ」
 行くとだ。王は静かな面持ちで答えた。
「今考えていることがあるのだ」
「それでなのですか」
「そうだ。あの場所こそが相応しいだろう」
 アルプスの白と青の世界を瞼に思い浮かべ。そしてだった。
 静かにだ。言うのだった。
「私の夢を築き上げる場所は」
「あの地に陛下の」
「夢がある」
 王はまた言った。
「そして理想もだ」
「それもですか」
「そうだ。緑の森に」 
 最初に語ったのは。ドイツのその森だった。
「そして青い空、白い山」
「その三つがあるあの場所で」
「私は夢を築くのだ」
 そうするというのだ。
「必ずな」
「だから今そこに向かわれ」
「既に人も集めている」
 それもなのだった。
「そうしてだ」
「その夢とは」
「それはあの地で語りたい」
 この馬車の中ではないというのだ。それは。
「そうしていいか」
「はい」
 ホルニヒに異存はなかった。ここでもだ。
 そしてだった。王も彼のその言葉を聞いてだ。
 笑み、気品のあるそれになってだった。
「あの場所では人もいない」
「人もですか」
「もう人の喧騒に耐えられないのだ」
 そうなっていた。確かに。
「ミュンヘンはかつてワーグナーを追い出した。その町の声には」
「耐えられないのですか」
「この町は私の生まれ育った町だ」
 このことは否定できなかった。そうした意味で王の父であり母である。
 しかしその父と母にだ。王は今はこう言うのだった。
「だが。私はこの町に相応しくないのかも知れない」
「ミュンヘンに」
「そんな気もするのだ」
 王はこうした考えも持っていた。
「どうもな」
「まさか。それは」
「ただそんな気がするだけかも知れない」
 だがそれでもだと。王は話していく。
 
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