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空の黒騎士

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第六章

 だがそれでもとだ、バーンは言うのだった。
「けれどあいつは勝った」
「そうだな、あいつの戦いにな」
「勝った、ドイツは負けてもあいつは勝った」
「最後まで騎士だったな」
「黒騎士の名前に相応しくな」
 こうボンズに言った、そしてだった。 
 ボンズにだ、こうも言ったのだった。
「また撃つか?」
「あいつをか」
「ああ、あの時みたいにな」
 まさにあの時と同じだった、ドライゼのフォッケウルフは彼等のB-17の横に来ている。機銃を放てば届く距離だ。
 そのことがわかっているからだ、バーンはボンズに問うたのだ。
「撃つか?」
「馬鹿を言え、当たる筈ないだろ」
 ボンズは自分に問うたバーンに肩を竦めさせて返した。
「それにな、アメリカは勝ってな」
「ドイツは負けてか」
「俺達は負けたんだぞ」
 自分達はというのだ。
「あいつは勝ってな」
「だからか」
「ああ、それじゃあな」
「撃つことはしないか」
「素直に胴体着陸に備えようぜ」
 生きる為にというのだ。
「そうしような、それじゃあな」
「ああ、じゃあな」
「今からな」
「胴体着陸に入ろうな」
 こう話してだ、そのうえで。
 ボンズは撃つことはせずそうしてだった、胴体着陸の用意に乗員として入った。ドライゼはその後も戦闘を行ったが。
 彼が率いている機で生き残っている者達の燃料も弾薬も尽きたので然るべき基地に移動した、そしてそこで言った。
「君達は好きな様にしろ」
「まだ戦うなり投降するなり身を潜めるなり」
「そのことはですか」
「そうだ、俺はもう投降する」
 戦うことはしないというのだ。
「俺の戦いは終わったからな」
「今の出撃で」
「だからですか」
「着陸した時に聞いた」
 まさにその時にというのだ。
「総統閣下は自決された、新しい総統はデーニッツ海軍元帥となった」
「総統閣下が」
「そうされたのですか」
「新しい総統閣下はこの基地については投降を言われている」
 尚東部では国民を少しでも多く西側に逃しソ連軍がもたらす災厄から逃れさせようと戦闘を続けさせている。
「だからだ」
「我々はですか」
「もう後はですか」
「我々が選ぶことですか」
「そうだ、生きるも戦うも好きな様にしろ」
 部下達に言うのだった。
「俺の戦いは終わったがな」
「では隊長は」
「これで」
「黒騎士の戦いは終わった」
 ドライゼは微笑んでこうも言った。
「だからだ、自決することはするつもりもないからな」
「だからですか」
「ここは連合軍に投降して」
「生きられますか」
「これからどうなるかわからない」
 ドイツは敗れた、そして自分は敵に投降するがというのだ。
「しかし今はそうする、君達もそれぞれ選べ」
「わかりました」
「それでは」
 生き残った部下達も応えた、そしてだった。 
 彼等は解散しそれぞれの道を選んだ、ドライゼは彼が言った通りに連合軍に投降した。
 彼の投降は連合軍でも話題になった、その話はボンズ達もイギリスに戻ってから聞いたがボンズはこの輪を聞いてこう言った。 
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