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デジモンアドベンチャー Miracle Light

作者:setuna
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第75話:ドラゴンコライダー

一か八かで試した進化でデュナスモンへの究極進化を果たしたブイモン。

「あれがブイモンの究極体…でもブイモンは普通の進化は出来ないんじゃ…」

「正確にはしなかったんだと思うよタケル君。ゲンナイさん曰わくブイモンはテイルモン達が転生を繰り返して現代種になったのに対して、ブイモンは大して時間もかけずに現実世界に来たからね。まあ、それを言ったらワームモンもなんだけど。ブイモンと比べればかなり遅かったし」

「さあて、あいつの究極進化がどれくらいのものかこの私が見てあげようじゃない」

「何でそんな上から目線なのテイルモン…?」

「君達はデュナスモンを見ていてくれ。僕達は変態仮面を」

「分かった、気をつけて」

賢はタケルとヒカリにこの場は任せると京と伊織を伴って治の元に向かう。

キメラモンは賢達に体当たりしようとするが、デュナスモンに角を片手で掴まれ、前進出来ない。

「へへ、この溢れるパワー感は久しぶりだ。」

パワーだけならマグナモンを上回るデュナスモンはそのままキメラモンを投げ飛ばす。

「凄いパワーだ…あのキメラモンの体当たりを片手で受け止めた上に投げ飛ばすなんて」

「あいつ、もう究極体の力を物にし始めてる。やっぱりマグナモンで究極体の力を体感してるからかしら?」

テイルモンが若干ふてくされたような表情を浮かべる。

それをパタモンは呆れた表情、ヒカリとタケルは苦笑だ。

「これで思いっきりお前をぶっ倒せる。覚悟しろ!!」

キメラモンの横面を殴り、壁に激突させた後、飛び蹴りを叩き込んで基地の外に。

「凄いパワーだなあ…パワーならマグナモンを超えてるんじゃ…」

タケルが思わず呟き、外に飛び出たデュナスモンとキメラモンがぶつかり合う。

「うおりゃああああ!!」

デュナスモンの拳とキメラモンの拳が激突するが、キメラモンが力負けし、スカルグレイモンの腕が吹き飛ぶだけでなく風圧で後方の岩が吹き飛んだ。

「この姿の特徴は全てを粉砕するパワーだ!!」

マグナモンが防御に特化したならデュナスモンは攻撃に特化している。

デュナスモンの鎧はマグナモン程ではないが高純度クロンデジゾイドなので防御を気にせず攻撃に集中することが出来る。

「おらあ!!」

キメラモンの脳天に踵落としを叩き込む。

キメラモンのカブテリモンの兜はクロンデジゾイドにも匹敵する硬度であるにも関わらず、無数の亀裂が入っている。

そのまま地面に激突し、巨大なクレーターを作り出す。

「はあっ!!」

デュナスモンはクレーターに着地と同時に勢い良く拳を突き出し、キメラモンに拳圧を飛ばす。

デュナスモンのパワーを持って繰り出された拳圧はキメラモンの腹部に炸裂し、錐揉み回転しながら吹き飛んでいった。

そしてようやく治の元に辿り着いた賢達は治を包囲する。

「さあ、お前も今度こそ終わりだ」

「終わり?愚弟如きが偉そうに」

「何が愚弟よ!!賢君の方があんたより何千倍も良い人よ!!あんたは最低!!あんなデジモンを作って町を滅茶苦茶にして…何も思わないの!?」

「別に?僕はこの世界を浄化しようとしているだけだよ。僕という優れた存在がいながら君達のような凡人を選ぶような愚かな世界や溢れかえった屑データなど一度綺麗に掃除した方がいいに決まってる。」

「最低だ!!天才少年だか何だか知らないけど、あんたは人として大切なことを分かってない!!あんたは人間の恥だ!!」

「やれやれ、また凡人お得意の天才の拒絶かい?いい加減聞き飽きたよ」

「そうか、ならその腐りきった耳を塞いであげるよ。デジメンタルアップ」

「ワームモンアーマー進化、プッチーモン!!ハートナービーム!!」

指から光線を放って治を気絶させようとするが、額に直撃を受けた治の頭部が粒子となって消えた。

「…やられた!!あいつはここにはいない!!」

「偽物だったなんて…ムキィイイイイ!!」

「卑怯者!!」

偽物と言うことは本物は既にここにはいないということか。

何処までも人を見下したような治に京は怒り心頭だ。

「だったら、もうこの基地にいても無駄か」

「むむむ…あ、そうだわ」

「「?」」

「ここってあいつの本拠地よね。だったらあれがあるはずだわ!!」

京は部屋を勢い良く飛び出した。

「…あれって何だろうね伊織君?」

「…さあ?」

互いに見合いながら疑問符を浮かべる賢と伊織であった。

一方、デュナスモンとキメラモンの戦いも終わりが近付いていた。圧倒的なパワーによる連続攻撃。

ただの打撃攻撃でキメラモンの全ての腕を粉砕し、兜の角がへし折れていた。

「そろそろ終わりだ!!ドラゴンズロア!!」

両手から放ったエネルギー弾がキメラモンに向かって放たれた。

それはキメラモンに炸裂して基地の外壁に激突させると京達とヒカリ達が基地から飛び出してきた。

「デュナスモーン!!あの変態仮面はこの基地にはいなかったわ!!」

「は?何だって?」

「いたのは偽物。本物の変態仮面はとっくの昔に別の場所のようだ」

「あの変態仮面め…!本当に腹が立つ奴だ。こうなったら憂さ晴らしに、あの基地を塵一つ残さず消し去ってやるぜ!!」

デュナスモンはキメラモンが向かって来るのも構わず、全身からオーラによる無数の飛竜を出現させ、対象の周りを覆った。

「ドラゴンコライダー!!」

一気にそれを一点に集中させ巨大な温度爆発を起こす。キメラモンと基地は渦の中心にいたため、一瞬で蒸発した。

「え、ええええ!?何あれー!?キメラモンとあの基地が一瞬で蒸発しちゃったんだけどー!!?」

「わあ、これは凄い。マグナモンは防御が凄かったけどデュナスモンはとんでもないパワーだ」

あの規模の基地とボロボロとは言えキメラモンすら巻き込んで一瞬で消し去ってしまうパワーには感嘆を覚える。

「ふん」

促したのは自分だが、ブイモンばかり強力な進化をするのは気に入らないようだ。

「まあまあ、テイルモン」

パタモンはテイルモンの手を置いた。

「嫉妬は醜いよ☆」

満面の笑顔。

「…………」

数秒後。

「ふぎゃあああああ!?」

「ストップ!!止めて下さいテイルモン!!パタモンが死にますよ!!」

「死なないように手を抜いてるから大丈夫よ……」

テイルモンにボコボコにされたパタモンと鬼のような形相のテイルモンの間に入って止めようとするホークモン。

「……そういう問題じゃないだぎゃ…」

アルマジモンの呟きが妙に響き渡った。

そして一乗寺治の野望を一時的に食い止めた大輔達は現実世界に戻って太一達に現状報告。

「そうか、逃げられたか。まあ、基地をぶっ壊してキメラモンも倒したんだ。簡単に立て直しは出来ないだろ。お疲れ」

「お疲れさまでした」

太一と芽心が労うように言う。

取り敢えずカイザーの暴虐を食い止めることには成功したのだし、これ以上は求めることは酷だろう。

「へへへ、でも私達も逃げられっぱなしで終わりじゃありませんよ!!ジャーン」

大きめの布袋に入っていたのはかなりの数の暗黒のデジメンタル。

ざっと数えて30個くらいはある。

「これ……どうしたんだ?」

「カイザーの基地から取って来ました!!」

「京さんの言っていたあれってこれのことだったんですか!?駄目ですよ京さん、泥棒ですよ!!」

「何よー。あいつが使わない道具を私達が活用するの。謂わばこれはリサイクルよ」

「屁理屈言わないで下さい!!」

「まあまあ、伊織君。これはかなり助かるよ。多分変態仮面はまだ懲りてないだろうからこれを複数持てるのはありがたいよ。」

賢が伊織を宥めながら言うと伊織も渋々黙った。

「それにしても、基地を壊された変態仮面さんはどこに行くんでしょうか?」

「知らねえよ。凶悪なデジモンにでも追いかけ回されてりゃいいんだよあんな奴。」

芽心の呟きに太一は吐き捨てるように言う。

「と言うわけで泉先輩。これの調整をお願いします。私も手伝いますんで」

「勿論です。賢君も手伝ってくれますか?」

「喜んで」

回収した暗黒のデジメンタルの調整作業を開始する光子郎達。

「お前らもしばらくはゆっくり休めよ。疲れを取って変態野郎の暴走に備えないとな」

【はい!!】

こうして大輔達は、一乗寺治の暴走を一時的に止めることが出来た。

しかし、それは新たな戦いの始まりでもあり、治は基地から脱出して高みの見物をしていたのだが、今では怒り狂っていた。

「くそ!!くそ!!僕の作ったキメラモンが負けただと!?あんな凡人のパートナーデジモンなんかに!!こんなの、こんなの最低だ……最低のバッドエンディングだよ!!こうなったら、もっと質の良いデータを集めて…いや…僕としたことが凡人に負けたことで頭に血が上ってしまったようだ…キメラモンを一から作り直すには時間と手間がかかる。もっと良い方法がある…」

治は聳え立つダークタワーを見つめながら呟く。

「アルケニモン、マミーモン」

「「はい」」

「お前達はこれからダークタワーを使ってデジタルワールドを浄化しろ。反抗する奴は全て消し去ってしまえ」

「分かりました」

「いいか、お前達は僕の遺伝子情報を基にして作ったデジモン。天才の僕に相応しい働きをしろ」

「はい(ふん、何が天才よ。浄化だの何だの言いながら結局のところやろうとしてることは、単なる八つ当たりじゃないのよ馬鹿馬鹿しい)」

アルケニモンと呼ばれた赤い服の女は胸中では治を蔑みながら頷いた。

「(俺はアルケニモンといられればいいんだけどなあ)」

マミーモンと呼ばれた青い服を着たデジモンも胸中で溜め息を吐きながら治の話を聞いていた。

しばらくして治がいなくなり、アルケニモンとマミーモンだけになった。

「なあ、アルケニモン。本気であんな奴の命令聞くのか?」

「一応創造主様だからね。取り敢えず命令だけは聞いてやるよ。あんなクソガキの命令でも私達も目標が欲しいしね」

「ふーん。じゃあ俺は情報の収集に向かうよ。」

「ドジるんじゃないよマミーモン。」

「おう!!(へへ、今日のアルケニモンは優しいなあ。まあ、今まであんな薄暗い基地の中から出られたからなんだろうけど)」

今まで薄暗い基地の中でストレスが溜まっていたから、ようやく外に出られて嬉しいのだろう。

「さあて、選ばれし子供達。あんたらのおかげであんな薄暗い基地からおさらば出来たんだ。礼にしばらくの間は何もしないでおいてあげる。精々夏休みとやらを満喫しな」

アルケニモンはまず暇潰しに外の世界を見て回ろうとするのだった。

一方、大輔達は始まりの町にいた。

「よう、久しぶりだな」

「うん、エレキモンも元気そうで何よりだよ」

久しぶりに会ったエレキモンにタケルとパタモン達は会話を弾ませた。

「それにしても、やっぱりデジタマが増えたね…」

「ああ、最近デジタマの量が多いんだ。仕事があるのは俺としては嬉しいことなんだけどよ。デジタマの数と同じくらいデジモンが死んだことを考えるとそうはいかねえんだよなあ…記憶を持って生まれ変わったベビー達なんかキメラモンやカイザーが怖いのか夜泣きが酷いんだ」

「だろうな、いきなり襲われていきなり殺されたんだからな。」

大輔が呟いた途端、賢に向かって泡が飛んできた。

「賢ちゃん!!」

咄嗟にワームモンが盾になった。

泡が飛んできた方向を見遣ると幼年期のデジモン達が賢を睨んでいた。

「おい、止めるんだ。」

ブイモンが近寄って幼年期達を宥める。

どうやら賢を治と勘違いしたらしく、多分兄弟だからか臭いが似ているのだろう。

「賢君も苦労するわね。」

「これからも相当苦労すると思いますよ。大丈夫なんですか賢さん?」

京と伊織が心配そうに賢を見つめるが、賢は苦笑しながら呟く。

「少しずつみんなに信じてもらえるように努力する。それしかないと思うからさ」

「僕達も賢君に協力するよ」

タケルの言葉に全員が頷いた。

「みんな、ありがとう。さあ、今日も頑張ろう」

今日は始まりの町のベビー達のお世話だ。

今日も1日頑張るとしよう。 
 

 
後書き
アルケニモンとマミーモンは今まで薄暗い基地の中にいたので創造主である治に対するストレスがかなりあったり。 
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