デジモンアドベンチャー Miracle Light
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第68話:ダゴモンの海
前書き
大輔とブイモンに早めに会ってるから滅茶苦茶短いです
治によってアグモンが暗黒進化させられたことで一時的に現実世界に避難させられたアグモン達。
サジタリモンとエンジェウーモンから受けた傷は既に癒えており、今も美味しそうにバクバクと口の中に裕子の作った料理を頬張っていた。
「美味しい美味しい♪」
「ブイモンもだけど、こいつも食いしん坊ねヒカリ」
「…………」
呆れたようにテイルモンが言うとヒカリの反応を待つが、何時まで経っても返事がないことに疑問符を浮かべて振り返る。
「ヒカリ?」
「…………え?」
無表情だったヒカリがテイルモンの声にハッとなって振り返る。
「どうしたの?」
「う、ううん。何でもないの」
嘘だとテイルモンは確信していた。
ヒカリは嘘を吐く時、必ずと言っていい程に作り笑いをする。
時間となり、ヒカリはランドセルを背負うとテイルモンは鞄の中に入り込んで一緒に学校に向かう。
ヒカリはテイルモンにああは言ったが、大丈夫ではなかった。
波の音、風の音が耳に入り込んでいく。
今日は天気が穏やかでそんな音などするはずがないのに。
「ヒカリ、顔色が悪いわ。今日は学校を休んだ方が……」
「だ、大丈夫…」
何が大丈夫なのだろうか?
顔色も悪いし、体だって小刻みに震えている。
これで体調が悪くないなんて良く言える。
ヒカリの耳にまた波の音が入っていく。
「(お兄ちゃん、大輔君、ブイモン……)」
ヒカリが最も信頼する者達が脳裏に浮かんだ。
何時までも3人に甘えていては行けないというのに。
波の音が大きくなった瞬間、ヒカリの目の前が真っ白になった。
「ヒカ…」
「ヒカリちゃん」
「ほれ、しっかりしろヒカリ。深呼吸深呼吸」
倒れそうになるヒカリにテイルモンが助ける前に大輔がヒカリを支えてブイモンが軽い口調で深呼吸するように促す。
「…あ……」
大輔とブイモンの姿を見て、精神的に安定してきたのか、ブイモンの言う通りに深呼吸を繰り返すと少し落ち着いた。
「ヒカリちゃん、少しは落ち着いたか?」
「う、うん…ありがとう…もう大丈夫」
「はいはい、嘘だな。ヒカリは嘘吐くの下手すぎ」
大輔の問いにヒカリは大丈夫と言うが、ブイモンは嘘だとあっさり見破る。
伊達に長い付き合いではないのだ。
ヒカリの考えなど手に取るように分かる。
「なあ、ヒカリちゃん。もしかして黒い海か?」
「ヒカリを呼ぶ変な海か?」
「うん、大輔君とブイモンに会ってからは全然何もなかったのに…どうしてまた…」
「………」
「怖いよ……」
訳の分からない、光が差さない世界に連れて行かれそうな恐怖からか、今まで耐えていたヒカリもとうとう泣き出してしまう。
大輔はポンと優しくヒカリの頭に触れた。
「ヒカリちゃん、本当に辛い時は俺とブイモンを呼べばいい。そんなふざけた世界に連れてかれそうになっても俺達が助けてやるから」
「大輔君……」
「ヒカリちゃんはもっと思ったことを口に出して良いんだ。京みたいになるのは困るけど、ヒカリちゃんに何かあったら俺が嫌だしさ。」
「……うん」
「ヒカリちゃんがいなくなったりしたら俺もブイモンも悲しいから…俺達のためにも…さ」
「そうそう、からかいがいのあるヒカリがいなくなったら退屈だし」
「グス…鬼…」
ヒカリは泣きながらもブイモンの言葉に笑った。
ヒカリを元気にしていく大輔達にテイルモンは複雑な表情を浮かべる。
「それじゃあ、学校に行こうぜヒカリちゃん」
「うん」
大輔とヒカリはゆっくりと学校に向かって歩き出す。
その後ろ姿をテイルモンは複雑そうに見つめる。
やはりこういう時、頼りになるのはヒカリとは違う種類でも不思議な感覚を持つ大輔でないと引き上げられないのか。
「何辛気臭い顔してるんだネズミ」
「何ですって?」
「お前のことだ、ヒカリを救い上げたのがお前じゃなくて大輔だったのが複雑だったんだろ?」
「う…」
「当たり前だろ馬ー鹿。大輔とヒカリはお前より長くいたし、色々秘密を共有してたんだ。信頼されるのは当たり前だ」
「……………」
「大輔もヒカリと同じくらい不思議だからな。でも、お前だから頼られる部分も沢山あるぜ。例えばヒカリの個人的な別の悩み事とかな」
「…ああ、そうだな」
ブイモンの言葉にテイルモンも頷く。
「まあ、そんなに焦るな焦るな。自分に出来ることをしていけばいいさ。今はな…お前が何時までもそんな辛気臭い顔していたら…からかいがいがない」
「うるさい」
からかうように言うブイモンにテイルモンはムスッとしながら言う。
何だかんだでブイモンには色々助けられている。
自分をからかい倒してくるが、仲間思いだし、面倒見もいい。
正直ブイモンがいなければ仲間になってもすぐには受け入れられなかったろう。
悔しいがブイモンに深く感謝している自分がいる。
ブイモンは大輔達が向かっている学校の方向を見遣りながら口を開く。
「ほれ、早く行かないと置いてかれるぞネズミ!!」
「うるさい馬鹿犬!!」
先に進んだ大輔とヒカリを追い掛けていくブイモンとテイルモンであった。
ページ上へ戻る