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永遠の謎

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445部分:第二十七話 愛を呪うその十五


第二十七話 愛を呪うその十五

「ゾフィーには。しかし」
「いえ、それでもです」
「それはなりません」
「何があってもです」
 側近達は必死の顔になってだった。王を止めにかかる。
「御気持ちはまた変わります」
「ですから。今はです」
「発言を公にされない様に」
「熟考を御願いします」
「止まれというのですね」
 王はその彼等を見てだ。こう言った。
「しかし私の気持ちは」
「どうかここは」
「本当に少し御考え下さい」
「そうすればお気持ちも変わるでしょう」
「ですから」
 彼等は王がよくあるマリッジブルーになったと思っていた。これは女だけでなく男もなるものだ。そして人一倍繊細な王ならばだ。
 そうなっても当然だとだ。こう考えて止めたのだ。彼等は王と騎士の会話を知らない。それどころか騎士の存在すら知らない。
 だからだ。彼等は王に必死に進言するのだった。
「では今宵は舞台があります」
「それに行かれてはどうでしょうか」
「御気持ちを晴らしに」
「そうですね」
 彼等が引かないと見てだ。王は静かに頷いた。
 そのうえでだ。こう彼等に返したのだった。
「では今宵は」
「シラーの劇です」
「陛下もお好きでしたね、彼の作品の劇は」
「シラーは癖があり彼の主観が強いです」
 王はシラーのその作品のことについての話に入った。
「何かというとハプスブルク家を批判します」
「そうですね。確かにそうしたところがありますね」
「それが作品に強く出ています」
「それは否定できません」
「ヴェルディも彼の作品を歌劇にしていますが」
 そのだ。ヴェルディ、イタリア人の作品にも影響が出ているというのだ。
「そこにも影響が出ています」
「エルナーニですね」
「あの作品ですね」
「それにドン=カルロも」
 どちらの作品にもハプスブルク家が出て来る。そこではその欧州随一の名家は敵役だったり考え方やあり方が否定される立場だったりするのだ。
 そのことについてだ。王は話すのだった。
「ドン=カルロ自身にしても非常に問題のある人物でしたね」
「どうもかなり情緒不安定で」
「狂暴な方だったそうですね」
「その様ですね。狂気」
 狂気という言葉を出すとだ。王の顔が微妙に歪んだ。
 そしてだ。王は言ったのだった。
「あれに捉われていた人物だったそうですね」
「少なくともあの劇の様な人物ではなかったのですね」
「かなり美化されているのですか」
「あの劇では」
「美化しても美化しきれていないところがあります」
 王は今度は歌劇から話す。
「情緒不安定で。自身の立場と行動がわかっていません」
「ハプスブルク家はカトリックです」
「そしてスペインという国もです」
 そのカトリックということがだ。ハプスブルク家をハプスブルク家にしていると言ってもよかった。これはこの時代でも同じなのである。
「神聖ローマ帝国皇帝家ですから」
「そしてスペインはカトリックが絶対ですね」
「イタリアと並ぶ程です」
「我が国以上の」
 そこまでだ。スペインはカトリックへの信仰が強いのだ。
 そういうことがあってだ。スペインもその王家であったハプスブルク家もプロテスタントが叛乱を起こしているフランドルに強硬的な政策を採らざるを得なかったのだ。ただドン=カルロではこのことが無視されている。
 
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