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ダグラス君

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第三章

「それじゃあな」
「これ、ですね」
「俺達は帰るからな」
「私はこれで、ですね」
「休めよ、当直頼むな」
「わかりました」
 勝手は坪川の言葉に応えた、そうしてだった。
 基地の中に買い置きしてあったインスタントラーメンを夜食にして夜の十時になると資材班の事務所の端にあるソファーで寝た、シャワーは朝仕事に行く前に基地の外にある団地にある自分の部屋で浴びていたので浴びなかった。それでだった。
 ソファーの上で毛布にくるまって寝ようとしたが。
 ふと事務所の扉を叩く音がした、それで仕事かと思って扉を開いて出るとそこにだった。
 あの銅像がいた、サングラスをしてパイプを咥えている。銅像は扉を開けた勝手に対して聞いてきてた。
「少しいいか」
「いいかって貴方」
「そうだ、私のことを知らない者はこの基地ではいないな」
「ダグラス=マッカーサー元帥の銅像ですよね」
「違う、マッカーサーではない」
 銅像はそこは否定した、見ればパイプを咥えたままだがちゃんと人間の動きをしている。指までしっかりと動いている。
「マックアーサーだ」
「ああ、英語読みをしっかりすると」
「そうだ、それが私の名前なのだ」
 銅像はそこはしっかりと言った。
「覚えておくことだ」
「わかりました、それでマックアーサーの銅像が何の用でしょうか」
「それは事務所の中でじっくり話したいが」
「わかりました」
「尚コーヒーや煙草は気にしないでくれ」
 銅像はパイプを咥えたままそれはいいとした。
「何しろ私は銅像だから飲み食い、喫煙の必要がない」
「そりゃ銅像ですからね」
「だからこの心配は無用だ」
 こう勝手に語るのだった。
「一切な、それでだ」
「まずは事務所の中にですね」
「入れてもらおう」
「本当は部外者は許可なく立ち入り禁止ですよ」
「何を言うか、私は元帥だったのだぞ」
 銅像は常識を話した勝手に軍隊の階級で以て反論した。
「そして厚木どころかGHQの最高司令官だったではないか」
「だからこの事務所にもですか」
「入っていいではないか、そもそも君達はだ」
「はい、アメリカ軍からですね」
「場所を借りているからな」
「だからですか」
「ただ入って話をするだけだ」
 コーヒーもパイプに入れる煙草も不要だというのだ。
「だからだ」
「いい、ですか」
「私が言って駄目なことはこの基地ではないぞ」
「GHQの司令官だったからですか」
「アメリカ陸軍元帥でこの基地の象徴でもあるからな」
「色々立場があるんですね」
「そうだ、では入れてもらおう」
 何だかんだと強引に言ってだった、銅像は資材班の事務所に入った。そしてその中でソファーに座って共に座る勝手に話した。
「私は今は最後の審判を待つ身だ」
「お亡くなりになってますよね」
「それは歴史にあるな」
「はい、私でも知っています」
「だが魂はまだこの世にあってな」
 そうしてというのだ。 
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