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永遠の謎

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432部分:第二十七話 愛を呪うその二


第二十七話 愛を呪うその二

 その立場からだ。こう言ったのだった。
「しかし。そのことによってです」
「そのことによってですね」
「オーストリアとバイエルンの関係ですね」
「両国の関係は」
「破綻させてはならないです」
 それはだ。決してだというのだ。
「影響を最低限に抑えましょう」
「そうですね。そのことはです」
「皇帝陛下にお話してです」
「そうしましょう」
 ゾフィーがだ。皇后の妹だからだ。婚姻が破綻したならばバイエルンとの関係に間違いなく影響が出る。しかしそれをだというのだ。
 それを最低限に抑える為にだ。為るべきことをしようというのだ。
 そのことを話しているのはオーストリアだけではなかった。プロイセンもだ。
 ビスマルクがだ。密かに側近達に話す。
「あの婚礼はならない」
「バイエルンにおけるですか」
「王の婚礼は」
「そうだ。ならない」
 こう言うのだった。
「最早それが決まった」
「決まった!?まさか」
「それがですか!?」
「公にですか」
「公ではない」
 ビスマルクはそれは否定した。しかしだった。
 彼はだ。こう言うのであった。
「だが。あの方の中でだ」
「それが決まったのですか」
「婚約の破棄がですか」
「あの方の中では」
「そうなのですか」
「あの方はあれでいてだ」
 バイエルン王の気質、それはだった。
「頑固なところがあるのだ」
「頑固ですか」
「あの方は」
「そうなのだ。あの方は一途だ」
 その一途さがだというのだ。
「頑固さになっているのだ」
「その頑固さ故に」
「一途から来る頑固さが」
「それがなのですか」
「婚約の破棄にですか」
「あの方を決断させたのですか」
「そうさせているのだ」
 ビスマルクの声は苦い。彼にしては珍しくだ。
 政治的なものに感情を見せつつ。そのうえで話していく。
「あの方をしてだ」
「そういえば十六の頃にだったとか」
「ワーグナー氏のローエングリンを観られてでしたね」
「そのうえで今もだとか」
「ワーグナー氏を深く」
「そこに最もよく出ている」
 そのだ。王の一途さから来る頑固さがだというのだ。 
 それを話してだった。ビスマルクはこうも話した。
「まことに残念なことにだ」
「婚約の破棄がですか」
「それがなのですか」
「そうだ。そしてそれと共にだ」
 今彼が残念に思うのはだ。もう一つあった。
 そしてそれは。彼が王に対して常に思っていることだった。
「あの方は何故男なのか」
「女性でないのか」
「そうですね」
「神はこのうえなく残酷だ」
 ビスマルクとてクリスチャンだ。しかしだった。
 その信じている神にだ。無念の言葉を漏らしてしまった。
 その無念さをだ。さらに出して話す。
「あの方は女性であるべきなのだ。しかし」
「しかし?」
「しかしですか」
「あの方が肉体的には男性であるから」
 それならばだというのだ。そこからだ。
 
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