デジモンアドベンチャー Miracle Light
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第41話:X抗体
前書き
アポカリモンとX抗体の誕生経緯は近い気がする。
マグナモンの拳がアポカリモン本体に突き刺さり、怯んだ隙を見逃さずにそのまま乱打を叩き込む。
予想通り、確かに様々なデジモンの技を繰り出せるのは凄まじいが本体自体の戦闘力はピエモン程ではない。
しかしアポカリモンもこのまま殴られてくれる訳もない。
「デスクロウ!!」
デビモンの腕を模した触手がマグナモンに迫る。
マグナモンは一気に後退しながらミサイル格納部を展開してミサイルを放つ。
ミサイルを受けたデビモンの腕は爆砕し、アポカリモンは触手を引っ込めざるを得なかった。
「フフフ…無駄なことを、死に物狂いで私を倒したところでデータに分解された奴らを救うことなど不可能。データを再構成する設備も存在しない以上、お前達のしていることは無駄なのだ」
「無駄か…無駄かどうかは俺達が決めることだ。お前に言われる筋合いはないな」
「諦めが悪いな。」
「お前もそうだろ、古代種は諦めが悪いんだ。生まれつき寿命が短くてやれることが少ないからから色んなことに抗いたくなる。お前も俺と同じ古代種ならよーく分かるだろ?」
「ククク…流石は同胞。古代種の在り方がよく分かっている…さて、悲しいが同胞との楽しいお喋りはお終いだ。お前だけは死んだ後、データを取り込んで私の一部にしてやらんこともないぞ?」
「はっ!!そんなのごめんだ!!お前をこんな辛気臭い場所から引きずり出してやる!!」
マグナモンは一気にアポカリモンに接近し、アポカリモンはそれを迎撃した。
一方デジタルデータに分解されたヒカリ達は何もない真っ白な世界を漂っていた。
「ここは……どこだ?」
「データの世界です。僕達みんな、データに分解されてしまったんですよ……」
「今、暗黒世界でアポカリモンと戦っている大輔とマグナモンを除いてね」
「分解!?もう元に戻れないの!?」
「分かりません……」
「戻れなかったらどうなるんだ、僕達!?」
「もうお終い!?」
「分からないわ、こんなの初めてだもの!どうしたらいいの!?」
肉体はデータに分解され、紋章とタグはアポカリモンの手によって破壊された。
最早自分達に出来るのは大輔とマグナモンがアポカリモンを倒してくれるのを願うだけ。
最後の最後で最年少の大輔に全てを押しつけてしまうと言う情けない結果となり太一達は唇を噛み締めた。
「賢ちゃん、脱出する方法を考えよう!!」
「勿論さ、ここまで来たんだ。最後まで戦わないと気が済まないよ」
「賢君…でも…」
「ヒカリちゃんは諦めきれるのかい?」
「え?」
「あんなに頑張って、沢山怪我して。それでも戦い続けてきたんだ。それなのにこんなことで簡単に諦めきれるわけないじゃないか」
「あ…」
ヒカリの脳裏に、大輔達と会ってからの毎日が過ぎる。
ヒカリは基本的に見ていることしか出来なかったが、自分に出来る精一杯をしてきた。
今までの努力を考えれば簡単に諦められるわけがなかった。
「お兄ちゃん…私…諦めたくないよ…!!」
「ヒカリ…そりゃあ、俺だって諦めたくないさ…でも…どうやって…」
運良く元に戻れても成熟期以上の進化が出来ないと言う問題が残る。
アポカリモンがあのような魔法めいたことも出来るなら今の自分達では足手まといになるのがオチになる。
「太一、弱気になっちゃ駄目だよ。こうしてる間にも大輔達は戦ってるんだ!!」
「俺も最後まで戦うよ!希望を捨てちゃ駄目だ!何とか元に戻る方法を考えよう!!」
「そうよ。今までだって、もう駄目だって思ったことは沢山あったけど、いつも私達一緒に戦い抜いてきたじゃない!!今回も同じように戦えばきっと!!」
デジモン達もまだ諦めてはいなかった。
諦めたくないのはこっちも同じだ。
しかし、今までと違うのはまともな対抗手段がないのだ。
「そうだけど……!データに分解されてしまったなんて……敵を倒すどころか、人間の形に戻れるかさえも分からないのよ!?」
「例え戻れたとしても、紋章が無かったら進化出来ないじゃないか!!」
「こんなこと、今までなかった……自分のデータを分解されてしまった時の対処なんて、誰にも分かりません!!」
元に戻る方法が分からない、紋章とタグがないから完全体や究極体への進化が出来ない。
どうすればと苦悩する光子郎にテントモンは静かに語りかけた。
「………ほんなら光子郎はんは、今までの戦いでどうやったら勝てるか、いつも分かってはったんでっか?」
「え?」
テントモンの言葉は、物事の核心を突いていた。
どうやったら勝てるかなんて、そんなこと考えもしなかった。
何時も綿密な作戦を立てて、戦いに挑んだ訳ではない。
いつだって行き当たりばったりで予想外なことが起きてもおかしくはない状態だった。
実際に予想外なことも沢山起こった。
「そうさ、冒険はいつでも初めてのことばかり」
「こういう時にはこうしたらなんて、何時だって知らなかったじゃないか!!」
デジモン達の言葉に子供達の胸から何かがこみ上げる。
「このデジタルワールドのことは何も知らなかった。次から次へと心臓が止まりそうになることばかり」
「でも、丈がいて仲間がいて、みんなで一緒に切り抜けてきたよ!!」
太一達の冒険と戦い、恐ろしい目に遭いながらも太一達は仲間達と協力し、苦難を乗り越えてきた。
「……その、初めはこんな所、早く逃げ出したいとばっかり思ってたけど。おかげで受験勉強してるだけだったら気がつかないこと、沢山経験したよ」
ファイル島の冒険から最上級生として丈は全力で頑張ってくれた。
その想いが空回ることの方が多かったけれど。
「嫌なことも泣きたいことも沢山あったけど……」
「私と友達になれてよかった?」
「うん。みんなと出会えて、私強くなったと思う!!」
最初は初めての異世界に訳も分からず泣いていたミミ。
我が儘を言ってみんなを困らせていたはずの彼女は今、成長して仲間と共にこの場に立っている。
「タケルに会うまでは、僕、進化なんてしなくてもいいと思ってた。でも……」
「僕もね、パタモンに会ってから戦うことも大切なんだって分かったような気がするよ」
弱いままでは何も守れなかった。
最初の冒険の選ばれし子供の中で一番幼かったタケルとパタモンは力の大切さを知っている。
「空はいつでも、私のことを考えていてくれたね」
「ピヨモン……」
「みんなもそんな空のこと何時も大好きだったよ!!」
仲間を何時も支えていた空。
そしてそんな彼女が時として挫けそうになるのを支えてくれたのは他でもないピヨモン。
「光子郎はん。光子郎はんがいてくれはったおかげで、いろいろお勉強出来ましたわ。まあ光子郎はん、コンピューターに向かってると、他のことに目が行かへんようになるのが玉に瑕ですけどな」
「テントモン……」
「でもそれがまた、光子郎はんのいいとこですわ」
良いところも悪いところも含めて光子郎と言う人間なのだとテントモンは理解していた。
そして光子郎はそんなテントモンに言葉では言い表すことが出来ないくらいに感謝していた。
「ヤマト……」
「何も言わなくていい…分かってるよ。」
ガブモンの言葉を制するヤマト。
ガブモンの言いたいことくらい聞かなくても理解出来るくらいの深い絆が2人にはあった。
「ねえ、太一!僕と太一が一緒にいたら無敵だろ?」
「……当然だぜ!!」
何時も前に立って仲間達を導いてくれた太一とアグモン。
いなくなった時、仲間達がバラバラになるほどに彼らの存在は大きかった。
「今ここで倒れる訳にはいかない。それでは、何のためにヒカリを捜し続けたのか……」
「テイルモン……」
「ヒカリに出会うため、ヒカリを守るため、ずっとその日が来るのを待っていたのだから……それに」
「それに?」
「ここで諦めてブイモンに馬鹿にされるネタを増やしたくない。簡単に諦めたら馬鹿にされても言い返すことさえ出来なくなるしな」
「もう……」
ヒカリに会う。
ただそれだけを思ってテイルモンは待ち続けていた。
そしてようやく会えたのにここで終わりなんて認められない。
そして少しでも諦める素振りを見せればあいつがあの憎たらしい笑みを浮かべながら自分をからかう可能性が高い。
例えば、“所詮はネズミか…”とか…自分で思って腹が立った。
「ワームモン、最後の戦いだ。頑張れるかい?」
「うん、勿論だよ」
独りだった自分の傍にいてくれたワームモンには賢は感謝しても仕切れない。
ワームモンもまた彼の優しさを受けて、より頑張りたいと願うのだ。
子供達に良い意味での異変が起きるまで……。
「プラズマシュート!!」
「ぬうっ!?」
マグナモンが放ったプラズマ弾とミサイルを受けたアポカリモンが仰け反る。
「エクストリーム・ジハード!!」
「∞キャノン!!」
標的に向かって伸びるエネルギー波とエネルギー砲がぶつかり合い、相殺となる。
「ぐっ……」
エクストリーム・ジハードの反動で動きが鈍ったマグナモンを見て好機と見たアポカリモンは全ての触手をムゲンドラモンの大砲に変形させるとマグナモンに向けて放った。
「終わりだ!!データの海に還れ!!」
勢い良く伸びていく複数のエネルギー砲。
マグナモンは肩で息しながらもそれらを睨みつけた。
「終わり…?いや、まだだ…まだ…終わらない!!」
マグナモンの脳裏に現実世界での4年間が過ぎる。
生きてまた帰る。現実世界にいる家族の元に。
生への執着が大輔のデジヴァイスにインストールされたプログラムを起動した。
「あ!?」
デジヴァイスから青白く輝く光球状のプログラムが飛び出し、マグナモンに吸い込まれた。
「うおおおおおお!!」
変わる体、噴き出す力。
複数の∞キャノンを受けてもまるで揺らがない。
「マグナモン…X進化!!」
叫んだ直後に力が爆発した。
その力はデータの空間を移動していた子供達が自身等の紋章を再び輝かせ、再進化した同じデジモンであるウォーグレイモン達にも届いた。
「この力…マグナモン……?いや、違う…?」
「いや、マグナモンだ。確かに爆発的に力が上がっているけど間違いない。」
「本当に信じられない奴だわ。でも今は有り難いわ。あいつの力が目印になってくれる」
「ああ、マグナモンの力が流れてくる方向を進めば短時間で脱出が出来るはずだ。」
バンチョースティングモンとエンジェウーモンが笑みを浮かべながら先行する。
他のメンバーもそれに追従した。
しばらくして目の前が真っ白になったかと思えば、再び暗黒世界に戻っていた。
そこにはアポカリモンと…。
「…………」
無言のまま、アポカリモンを見据えているマグナモン…否、X進化を遂げたマグナモンXがいた。
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