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永遠の謎

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42部分:第三話 甘美な奇蹟その七


第三話 甘美な奇蹟その七

「そしてオーストリアですが」
「あの国についてもですが」
「外交が肝心です」
「プロイセンだが」
 その彼等に対してだ。太子はその落ち着いた声で述べるのだった。
 彼の声はうわずったり興奮したりすることはない。常に王に相応しい者としてだ。穏やかさと気品を保ったまま話すのであった。
「母上がプロイセン出身だ」
「はい、その通りです」
「それは」
「そしてだ」
 太子の言葉は続く。
「オーストリアにはシシィがおられる」
「エリザベート様ですね」
「あの方が」
「まずはこの二つだ」
 縁戚から話すのだった。欧州では王家同士の縁戚が非常に多い。そして重要な意味を持っているのである。
「どちらについてもおかしくはないな」
「その通りです」
「実際にどの国もどの者もそれがわかっています」
「だからこそです」
 バイエルンの動向が注視されるのであった。そしてだ。
 バイエルンが注視される理由はそれだけではなかった。こうした理由もあるのであった。
「次にだ」
「はい」
「次には」
 皆太子のその言葉を聞くのであった。その言葉は。
「我がバイエルンはこの南ドイツの中心だな」
「南北でも東西でもですね」
「どちらに分けても我がバイエルンはそこの中心にあります」
「南、若しくは西の」
「その中心にあります」
「このドイツにある国の中で第三の勢力だ」
 太子は冷静に述べた。
「国力そのものは両国に落ちるがな」
「それでも第三だと」
「そう仰いますね」
「確かに」
「今言った通りだ」
 ここではこう返した太子だった。
「まさに我がバイエルンの動向がドイツに大きく影響する」
「ですから軽はずみには動けません」
「それは御了承下さい」
「まことに些細な間違いがです」
「バイエルンを大きく誤らせてしまう」
 太子はそこからは自分で話した。
「そうなるな」
「はい、ですから」
「殿下、ここはです」
「王となられたらすぐにです」
「どうされるかお決め下さい」
「その必要はない」
 ところがだった。太子は今の周りの言葉にはこう返したのであった。
 そしてそのうえでだ。こうも言うのであった。
「急ぐ必要はない」
「それは何故ですか」
「両国の対立は不可避だというのに」
「それでもですか」
「確かに対立は不可避だ」 
 それは太子も認めることであった。これは否定できなかった。
「だが、だ」
「だが」
「何故急がれないのですか」
「それはどうしてでしょうか」
「お聞かせ下さい、その理由を」
「そう、理由だ」
 周りの者の一人の言葉に反応を見せてだった。
「理由が必要なのだ」
「?ここでの理由とは」
「衝突する理由だ」
 それだというのであった。
 
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