永遠の謎
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419部分:第二十六話 このうえもない信頼その十二
第二十六話 このうえもない信頼その十二
王はその虹を見てだ。こう話したのだった。
「そしてこの橋を渡れば」
「確か。それで入る場所は」
「ヴァルハラだ」
そこだというのだ。
「この世とは別の世界だ」
「そうでしたね。ラインの黄金でしたね」
「光の精霊、神々がいる世界だ」
そこもまただ。この世ではなかった。
「その世界だ」
「神々の世界ですか」
「思えばあのヴァルハラも」
どうかというのだ。その世界もまた。
「裏切りによって築かれたな」
「確か。ヴォータンが」
「そうだ。巨人達を騙してだ」
そうしてだ。築かせた城なのだ。
「それにより出来上がった世界だ」
「神々もまた騙すのですか」
「誰もが騙しそうして」
己のエゴを満たしていく。そうなるというのだ。
「それが人なのだろうか」
「それは」
「醜い」
王はこの言葉を出した。
「人は醜い。そして」
「そして?」
「その人が創り出すこの世界も」
どうかというのだ。その世界自体もまた。
「やはり醜いものだ。特にだ」
「特に?」
「戦い。戦いはこのうえなく醜い」
戦いを好まない王らしいと言える言葉だった。
「そしてまたそれが近付いている」
「戦争が再びですか」
「起こる。今プロイセンとフランスは対立しているな」
「エムス電報事件ですね」
フランス側が保養の為温泉に来ていたプロイセン王ヴィルヘルム一世にスペイン王の継承について確認を入れたことに関してだ。
ビスマルクは策を仕掛けてだ。そのうえで両国の対立を煽ったのだ。具体的には電報を都合よく改竄してそれを公に出したのだ。
そのことによりプロイセンとフランスは対立するようになったのだ。それについてだ。
「ビスマルク卿はだ」
「あの方はですか」
「ドイツ帝国を築かれる為ならどんなことでもされる」
そうだというのだ。彼は。
「その中にはああした謀略もだ」
「あれは謀略ですか」
「フランスは焦っていた」
エムス電報事件の真実をだ。王は見抜いていた。
そしてそのうえでだ。こうホルニヒに話した。
「もっと言えばナポレオン三世はだ」
「そういえばあの方は近頃」
「メキシコで失敗しあのマルクスに糾弾された」
メキシコ内戦でメキシコ皇帝へ援助を約束しておきながら見捨てた形になった。結果としてメキシコ皇帝は反乱軍に処刑された。
このことがそのままだ。ナポレオン三世への批判になっていたのだ。
そしてそれに加えてだった。
「マルクスはだ」
「ナポレオン三世の政策を欺瞞だと言っていますね」
「そうだ。欺瞞だとだ」
「しかしあれは」
「あの男は危険だ」
マルクスについてはだ。王は全く信頼していなかった。
そのうえでだ。こう言うのだった。
「非常にだ」
「そういえば労働者と資本家に区分して」
「農民も入るがだ」
労働者に加えてだ。農民もだというのだ。
「それと資本家、貴族を対立させてだ」
「争いを起こさせようとしているのですね」
「それが革命だ」
所謂だ。共産主義革命だ。
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