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デジモンアドベンチャー Miracle Light

作者:setuna
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第33話:街のエリア

ムゲンドラモンが支配するエリアを目指して時折現れる刺客を倒しながら進む子供達。

そこで大輔は隣のヒカリを見遣ると少し顔が赤く、少し咳をしていた。

「ヒカリちゃん、大丈夫か?」

「ケホッ…うん、大丈夫」

「いやいや、咳しながら言われても説得力ないよ。ちょっと動かないで」

額のゴーグルをずらして額をヒカリの額にくっつける。

「あら?大輔君、ヒカリちゃん。どうしたの…きゃあああああ!!」

殿を務める都合上、後ろの方にいた大輔と大輔の隣を歩くヒカリが足を止めたことにミミは不思議そうに振り返った時、その光景に歓喜した。

「な、何だミミちゃん、敵か…ああああああ!?」

ミミの歓喜の悲鳴に太一が肩を揺らしながら振り向くと見ようによってアレをしているように見える大輔とヒカリが目に入った。

「お兄ちゃん、前が見えないよ!!」

「お前は見なくて良い」

ヤマトが両手でタケルの目を塞いでいた。

「お、おおおおお前!!ヒカリに何してんだ!?」

「…………」

動揺して大輔に詰め寄る太一。

それに理由を察した賢が呆れたように見遣る。

「何って、ヒカリちゃん。風邪引いてんですけど?」

「風邪だからってそんなの理由に…何!?」

「平気だもん」

「今は平気でも後から酷くなるんだよ。まあ、僕は皆さんが何を考えていたのかが気になりますけどね……」

ジト目で他の面子を見遣ると赤面しながら苦笑い。

少しして、ヒカリを近くのベンチに座らせると賢が鞄から木の実と水筒、そして市販の風邪薬を取り出してヒカリに差し出した。

「本当は安静にした方がいいんだろうけど、こんな場所で寝かせると逆に悪化するし、食欲なくても少しでも食べるんだ。」

冷静に対処していく賢。

現実世界で大輔達と行動していた際に風邪を引いていたにも関わらず無茶して悪化させたどっかの大馬鹿者のおかげである。

「風邪薬とか色々あるな」

ヤマトがチラリと賢の鞄の中身を見遣ると色々揃っている。

「いや、大輔は怪我をよくするし、ヒカリちゃんは風邪引いていたにも関わらず無茶して悪化させた前歴がありますからね。本当に反省してるのかな君達は?」

「「ごめんなさい」」

「大体君達はそうやって自分の身を省みないで…ぶつぶつ…」

「「うぐぐ…」」

「全くだ。ちゃんと自己管理をしっかりして自分なら大丈夫という思い込みを無くさないとな」

「あんたが言うなあんたが!!」

賢の説教に悔しそうにする大輔とヒカリ。

ブイモンもうんうんと頷きながら言うがテイルモンがツッコんだ。

多分ブイモンも自己管理がしっかりしてると言えないし、自意識過剰なところがあるし。

「どうして風邪引いてるの黙ってたんだよ?お前大輔が気付かなかったらずっと黙ってたろ?」

「だって早くしないと地球が……あう!?」

「馬鹿」

全て言い切る前にブイモンがヒカリの頭に拳骨を叩き込んだ。

病人であるために手加減はしてくれたようだが、やはり痛いものは痛い。

「何するのブイモン……」

「馬鹿、それで前に風邪悪化させて倒れたろうが…目を回して頭にヒヨコをクルクルさせていたのはどこの馬鹿だ?」

「あうう…」

「本当に頭はいい方なのに馬鹿だよね。うん、馬鹿だ。これでもかってくらい馬鹿だよね君は、この体調管理出来ないお馬鹿さんが」

「う…うう…」

ブイモンと賢に馬鹿馬鹿と連呼されて半泣きのヒカリである。

自業自得な部分があるため同情出来ないところもあるわけだが。

「も、もう止めてくれ…ヒカリが可哀想だ」

兄の太一も…見ていられなくなったのだろう。

冷たい視線をヒカリに向ける賢達を止めた。

「まあ、ヒカリちゃん。具合が悪くなったら無理はするなってこと。ヒカリちゃんに何かあったら、俺は嫌だなあ。なあ、テイルモン」

「まあね」

大輔はもうヒカリとは長い付き合いだし、テイルモンに至っては自分のパートナーだし。

「しっかしタイミングが悪いな、ムゲンドラモンが街のエリアの何処にいるかは分からないけどこんな時に風邪を引くなんて」

「ごめんね…」

「こらブイモン。ヒカリちゃんは悪くないさ。ヒカリちゃんだって引きたくて引いたわけじゃないんだからさ」

ブイモンの呟きに謝罪したヒカリに大輔がそう言うと、これからどうするかを決める。

「敵にバレないようにこっそりとどっかの建物に入って休もう。外だと風邪が悪化するし」

こうしてヒカリを安静させるために休める場所を捜すことに。

流石に捜すのは夜になってからだが。

「寒くない?ヒカリちゃん?」

「ん…テイルモンが暖かいから平気…」

カブテリモンに乗った子供達が夜空を飛び回る。

カブテリモンの体色なら闇に紛れるからであり、バードラモンは火の鳥で派手なので見つけてくれと言っているような物である。

「ヒカリ、本当に大丈夫か?」

「本当に大丈夫だよ」

「だってお前、昔は体弱かったし、それに…お前…」

「どうした太一?」

太一の様子がおかしいことに気付いたヤマトが太一に声をかける。

太一はハッとなってぎこちなく笑みを浮かべた。

しばらくするとニューヨークの街並みの隣にはイタリアのローマに似た街並みが広がり、更にその隣は、フランスの凱旋門があるエリアを発見した。

「何か不思議な街」

「そりゃあ凱旋門とかそんなのがゴチャゴチャした街なんか普通無いしな。」

「え?ブイモン、凱旋門知ってるの?」

「ミミ…俺は4年間現実世界で暮らしたんだぞ?分かるに決まってるだろうが…」

「あはは…そうでした」

流石に現実世界の世間一般常識は理解しているブイモンである。

街の中にある1つの屋敷を発見し、その中に入って寝室らしき部屋のベッドにヒカリを放り込む。

「さあ、寝ろヒカリ。今すぐ寝ろ、光速(はや)く寝ろ」

「いきなり寝ろって言われても眠れないよブイモン」

「そりゃあそうだろうね」

「まあ、前なら風邪引いたら寝込んでたし格段に体が丈夫になったよなヒカリちゃん」

ブイモンの無茶発言にしっかりとしたツッコミを入れられるのだから意識はしっかりしているのだろうし。

「大輔君とブイモンのおかげだよ。2人が私を引っ張ってくれたから私もね、強くなろうって思えたんだよ?」

「…俺、ヒカリちゃんに何かしたっけ?」

「うーん、お菓子とか沢山貰ったけどなあ」

ヒカリが自分の殻に籠もっていた時、大輔と当時チビモンだったブイモンが殻から出してくれたから今の明るいヒカリがいるのを知らない大輔とブイモン。

「まあ、今のヒカリちゃんは君達2人がいてこそだよね」

「「そうかあ?」」

「そうだよ…」

賢は溜め息を吐きながら屋敷を出ようとしたので、大輔は気になって尋ねた。

「何処に行くんだ賢?」

「食べ物を探してくるよ。何故か日本のコンビニもあったし…後は傷薬とかね」

「…色んな国がごちゃ混ぜになってるんだな…よし、俺も行くか」

「薬を探すなら僕も手伝うよ。これでも医者の息子だからね」

「あ…じゃあ俺も行く」

「ヒカリちゃんを看てなくていいのか太一?」

流石にヒカリの兄の太一は残った方が良いのではないかと思ったヤマトだが、太一は首を横に振る。

「…気付けなかった俺よりあいつらが一緒の方がいいだろ」

「太一…?」

ヒカリに対して過保護な太一が自分と一緒に行こうとすることにヤマトは首を傾げたが、こういうこともあるだろうと納得して消耗品の調達に向かう。

残るのは最年少組と上級生女子のみ。

「何か太一さん…変だったわよね?」

「ええ…何か何時もの太一らしくないわ…」

ヒカリに対して過保護なところがある太一が看病ではなく物資補充に出掛けてしまった。

「ああ、それ…多分。3年前のことが原因ですよきっと…」

「「え?」」

水を取りに行こうとした大輔が空とミミに太一の様子がおかしい理由を説明することにした。

「なあ、太一。お前どうしたんだ?」

「な、何がだよ?」

「何時ものお前らしくないってことだよ。何があったんだ?」

「別に何もねえよ」

「嘘だな、本当に何もないならどうして俺と目を合わせない。お前はしっかりと相手に目を合わせて話すだろうが…何があった?」

キツい口調だが太一を案じているのが分かる。

一番太一に近い立場のヤマトだからこそ太一も話す気になったのかもしれない。

「そうだなあ…大輔もブイモンも知ってるようだし、何時かみんな知るかもな…分かった、話すよ。ヒカリは…昔風邪を悪化させて死にかけたことがあるんだ……俺のせいでな」

「は?」

太一がヤマトに、大輔が空とミミにした話では、当時小学2年生だった太一がある日風邪で休んでいたヒカリが元気になったと勘違いして軽率にも外へ連れ出してしまった。

その結果、ヒカリは風邪をぶり返して、高熱を出して倒れてしまい救急車で病院へ搬送されてしまい、生死の境を彷徨うことになったことがあると言う。

そして退院した時に、太一に謝り、ヒカリにその気はなくてもその優しさが逆に当時幼い太一の心に傷を残してしまうことになる。

自分の軽率な行動で死ぬかもしれなかったのに。

本来なら恨まれても仕方がなかったのに。

ヒカリは申し訳なさそうに太一に謝ってきたのだ。

あの時程、太一は自分が情けなく惨めに思ったことはなかった。

「とまあ、太一さんがヒカリちゃんに対して過保護なのはそれが原因なんです。俺もおばさんから聞いた話なんですけど……」

裕子もあの時の太一の年齢を思い返し、言い過ぎたと思っていたのか後悔していたような顔だった。

自分もそうだが、小学2年生は遊びたい盛りだし、細かいことに気を配れと言うのは少し酷な気がする。

「そうだったの……太一、大丈夫かしら」

ヒカリの風邪は微熱くらいなのだろうが、ヒカリの体調不良に気付かずにいた太一に当時の自分を思い出させたのかもしれない。

そして一方…。

「大輔が気付いてくれなかったら、あいつはきっと黙ってた。いつも人の事ばっか考えて、自分が辛いとか苦しいとか絶対に最後まで言わないんだ。本当なら俺が一番あいつを見てやらないといけなかったのに…悪いなヤマト。俺…お前を笑えねえよな…いや笑う資格もない、お前は何時だってタケルを見守ってたのに俺は見守るどころか…あいつの不調に気付けなくて…」

「もういい、止めろ。悪かった……最近な…タケルが俺の手を借りずに何かをしようとするようになったんだ。手伝おうとしても“自分だけでも出来る”って…」

「寂しいか?」

「まあな…もしかしたらあのことを聞かれてたのかもしれないな…」

「聞かれてたって…何だよ?」

「ああ、何でもない。太一…難しいな、見守るってのは…あいつが今の俺くらいになるまでは…出来るだけ守ってやりたかったんだけどな…」

「…そう、だな…」

弟が自分から巣立って行こうとすることに若干の寂しさを覚えたヤマト。

同じ兄としてヤマトの気持ちを理解しながら太一も外を見遣った。

この時、地下深くに潜んでいた悪意が動き始めたことに気付かずに。 
 

 
後書き
太一もヤマトも同じ兄だからこそ理解出来る部分がある。同時に兄や姉を持つからこそ大輔達にしか理解出来ない部分もあったりする。 
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