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永遠の謎

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404部分:第二十五話 花咲く命その二十


第二十五話 花咲く命その二十

「非常によい組み合わせでは?」
「絵画の如きですよね」
「御二人と同じで」
「まさにワーグナー氏の芸術ではありませんか」
「素晴しいことです」
「そうですね」
 周りの言葉にだ。一旦は頷くゾフィーだった。
 しかしそれでもだ。彼女はこうも言うのだった。
「ですが」
「ですが?」
「ですがといいますと」
「ローエングリンは幸せにはなれないのです」
 それは。決してだというのだ。
「そしてエルザもまた」
「そういえばそうですね」
「あの作品の結末は悲しい結末です」
「二人は結局結ばれませんでした」
「そして」
 そのローエングリンの結末が。今ここで思い出される。
「エルザ姫は悲しみのあまり息絶えてしまう」
「ローエングリンは希望を失い去ってしまう」
「そうなってしまいますね」
「それでは」
「私をエルザと言ってくれますが」
 それがだ。ここでは複雑なものを生まれさせているのだ。
 その複雑なものを感じながらだ。ゾフィーは話していく。
「それはです」
「喜べるものではありませんか」
「そのことは」
「複雑です」
 実際にだ。エルザの顔にはその複雑さが宿った。
 喜んではいる。しかしそれと共に難しい、そして悲しいものを漂わせてだ。そのうえで王についてだ。話をしていくのだ。
「あの方は私を愛して下さっています」
「それはいいことですか」
「それも非常に」
「嬉しいと」
「はい、嬉しいです」
 それは確かだというのだ。
「ですが。私ではなく」
「貴女ではなく」
「といいますと」
「エルザ姫を御覧になられてのことです」
 彼女であって彼女ではない。そうだというのだ。
 その複雑なものを見てからだ。周りは。
「ううむ、わかりません」
「そうですね。これは」
「一体何がでしょうか」
「陛下に愛されていることは確かだと」
「しかしですか」
「それは」
「ローエングリンの歌劇におけることだと」
 ここで問題が出たのだった。
 王はローエングリンを見ている。だからエルザだというのだ。
 それを話してだった。ゾフィーは。
「あの歌劇。ワーグナー氏は」
「あの方がですか」
「はい。私に陛下を会わせて下さいました」
 正確に言えば最初からだ。二人は幼馴染みだったのだ。だがその仲が進展したのはだ。ワーグナーを通じてのことだったのである。
 王はワーグナーを愛している。そしてゾフィーもワーグナーの音楽に親しんでいた。その二人の関係が深まったのは。あの頃だった。
「ワーグナー氏は今はミュンヘンにおられますが」
「しかし前まではです」
「このミュンヘンから去られていました」
「追放されていましたね」
「その頃に」
 傷心、ワーグナーと別れざるを得なかった王とだ。彼女は。
 王は自然に心の傷を癒すことを求めた。そこにゾフィーがいてだったのだ。
 その頃のことをだ。ゾフィーはさらに話した。
「それからですか」
「そうなのですか」
「あの頃から」
「あの頃は私を名前で呼んでくれていました」
 そのだ。ゾフィーという名前でだというのだ。
 
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