永遠の謎
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391部分:第二十五話 花咲く命その七
第二十五話 花咲く命その七
その文化でも欧州を統一した。王はそのローマも見て話すのだった。
「芸術でも欧州を統一しました」
「統一するものは武力だけではない」
「芸術もまた」
「そうなのですね」
「芸術のない国はそれだけで悲しい国です」
王にとってはだ。そうしたものだった。
「幾ら強くともです」
「では芸術は政治でもあるのですか」
「それでもあるのですね」
「そう思います。軍では生み出せないものを生み出すのが芸術です」
「ワーグナー氏の芸術」
「それもまた」
「そうです。彼の芸術はドイツを一つにします」
実際にワーグナーはドイツオペラの巨人となっていた。楽聖とまで言われていた。ゲーテやベートーベンと並ぶ存在になっていたのだ。
その彼だからこそだと。王は言ってだった。
「では。ワーグナーと」
「ですが陛下」
「一つ問題があります」
ここで言う彼等だった。
「ミュンヘンはまだワーグナー氏を好まれない者が多いです」
「宮中にもです」
「多くいますが」
先の戦争で王の名声が高まり彼等は抑えられてもでだ。彼等には院宣たる力が存在し続けていた。それは無視できるものではなかった。
だからだと。彼等は王に話すのだった。
「ですからそれはです」
「くれぐれも御気をつけ下さい」
「どうか」
こう話してだった。王に注意を促すのだった。
「ミュンヘンにその歌劇場を築くにしても」
「そのことは」
「わかっています」
こう返す王だった。
「そのことは」
「はい、そうであればです」
「どうかくれぐれも」
「そうされることを望みます」
「わかっています」
王はまた言った。
「ですが。彼が築き上げるものは残ります」
「残りますか」
「永遠に」
「はい、永遠にです」
それだけの芸術だというのだ。
「残ります。そしてこのミュンヘンを飾るでしょう」
「ミュンヘンを芸術の中心にする芸術」
「それですか」
「その通りです。では」
「では?」
「ではといいますと」
「お話はこれ位にして」
そしてであった。王はいよいよだ。
王に対してだ。周囲はこう声をかけた、
「ワーグナー氏のところに参られますか」
「それとも呼ばれますか」
「呼びましょう」
王が選んだのはそちらだった。
「そうしましょう」
「呼びましょう」
そうするというのだった。
こうしてワーグナーが呼ばれる。その彼にだ。
王はだ。すぐにこう言った。
「歌劇場のことですか」
「そのことですね」
「はい。何処にされますか」
王は穏やかにワーグナーに尋ねた。
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