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永遠の謎

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387部分:第二十五話 花咲く命その三


第二十五話 花咲く命その三

 醜聞が届いた。それは。
「ビューロー夫人が」
「はい、そうです」
「ワーグナー氏と」
 またワーグナーだった。しかし今度は芸術の話ではない。
「またしてもです」
「密会をしているとか」
「そして」
 さらにだった。醜聞はさらに醜いものとなる。
「ビューロー夫人は今妊娠されていますが」
「それはビューロー氏の子ではなくです」
「その」
「それは嘘です」
 王はすぐにそのことを否定した。
「只の誹謗中傷です」
「そうだというのですか?」
「はい、そうです」
 絶対の。そうした言葉だった。
「口さがない言葉に過ぎません」
「ですが陛下」
「ワーグナー氏はです」
 周りは否定する王にだ。さらに話すのだった。その顔は怪訝なものになっている。
「そもそも女性問題が尽きませんし」
「実際にビューロー夫人とは常にいます」
「本来の奥方とは別居しています」
「やはりあれは」
「いえ、彼は潔白です」
 まだ言う王だった。
「それは以前に私が言った通りです」
「左様ですか」
「そうだと言われますか」
 王の言葉、それは即ち公ということである。王もそれがわかっていてだ。あえて自分が言うことにより二人を守ろうとしているのである。
 そうしてだった。この場でもだ。王は言うのだった。
「彼とビューロー夫人の関係は清らかです」
「そうであればいいのですが」
「私もそう思います」
「私もです」
 彼等もだ。信じたいとは言う。
 しかしだ。それはどうしてもだった。
「ですが。あの方はです」
「やはり。ビューロー夫人と」
「以前にはマチルダ=ヴェーセンドルク夫人と関係がありましたし」
「前にもあったことですから」
「あれも事実無根です」
 そういうことにしてしまう王だった。
「そしてです」
「そして?」
「そしてといいますと」
「私は事実無根の話は好きではありません」
 こう言ってだ。周りを咎めるのだった。
「宜しいですね」
「左様ですか」
「では。ワーグナー氏のことは」
「何もされませんね」
「いえ、必要とあらば」
 ここでもワーグナーを護ろうとするのだった。言いながら心の中で先程の歌劇場でのことが浮かび上がる。しかしそれでもだった。
 王はだ。言うのだった。
「私が彼等と会いましょう」
「ワーグナー氏とですか」
「そうされるというのですか」
「はい、ビューロー夫人と」
 そしてだというのだ。さらに。
「ビューローとも」
「三人共ですか」
「御会いになられるのですか」
「はい、そうしましょう」
 微笑んでだ。こう周りに言うのである。
 
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