永遠の謎
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371部分:第二十四話 私の誠意その九
第二十四話 私の誠意その九
「噂話になって出るだけです」
「噂ですか」
「噂はそよ風の様に広がりそしてです」
「そして」
「人の心に毒の花を咲かせます」
ホルンシュタインとの話で出たことを首相にも話した。
「結局は同じことなのです」
「しかしこのままではです」
「新聞の記事はさらに酷くなりますか」
「そしてその記事に煽られてです」
どうなるかというのだ。
「民衆がどうなるかです」
「そうですね。彼等が惑わされます」
このことも話すのだった。民衆についてもだ。
「それもありました」
「陛下も御存知では」
「しかし。やはり止めてもです」
またワーグナーのことを思い出す。彼は新聞の記事に煽られた民衆にも攻撃されたのだ。しかしそれでもどうかというのである。
「同じです」
「同じですか」
「はい、先程も言いましたが」
「噂になるだけですか」
「ですから。同じなのです」
王はこう言ってだ。それはしないというのだった。
そのうえでだ。王は首相にこんなことも話した。その話は。
「ですが首相」
「はい」
「今は大事な時です」
こう話してからだ。どうかとだ。首相に話していく。
「ですから貴方にお任せします」
「私にですか」
「このまま舵をお取り下さい」
これが首相に告げる言葉だった。
「首相として」
「そうして頂けるのですか」
「その通りです。新聞の記事に惑わされることのないよう」
首相が何故今ここにいるのかわかっていてだ。こう告げたのである。
「宜しいですね」
「はい、そうさせてもらいます」
「議会についてもです」
バイエルン議会だ。この議会も力をつけてきていた。バイエルンにも近代の波が来ていて影響を与えていたのだ。そうした時であったのだ。
「御気に為されぬ様」
「では私はこのまま」
「首相として責務に励まれて下さい」
この場ではじめて微笑んだ。そのうえでの言葉だった。
「是非共」
「はい、それでは」
こうした話をしてだ。首相は満足した顔で微笑みそのうえで王の前から退出した。今は婚礼の話はしなかった。そうした話だった。
その話をしてからだ。王は己の部屋に下がった。その彼にだ。
ホルニヒがそっとコーヒーを差し出す。それを受け取ってだ。
まずは一口飲む。それからあらためてホルニヒに話した。
「新聞は確かに厄介だ」
「首相とのお話ですか」
「だが。人の言葉は。心は」
「心ですか」
「それはどうしようもないのだ」
こう言うのである。辛い口調でだ。
「どうこうはできない」
「できませんか」
「結局は同じだ。噂話になって出る」
噂の話をだ。またした。
「それではだ」
「塞いでも同じですか」
「全く同じだ。ならばしないに限る」
「ですがビスマルク卿は」
ホルニヒがこう言うとだ。王はすぐにこう返した。
「あのことだな。カトリックと社会主義」
「はい。あの方はその二つに対して強硬ですが」
「あれは政策としてだ」
「政策ですか」
「まずカトリックだ」
バイエルンもカトリックである。無論王もだ。信仰心も持っている。しかしここでは王は冷静にだ。かつ淡々としてそのカトリックのことを話すのだった。
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