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歌集「冬寂月」

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六十二




 深まるは

  秋か憂く夜か

   上弦の

 月の下にそ

     想い染めにし



 真夜中…独り歩けば、空には上弦の月。

 肌寒さに寂しさが滲み…細々とした月明かりさえ、その影に寂しさを纏う…。

 深まるのは秋なのか…こうして独り寂しく過ごす夜なのか…。


 か弱い月明かりに…あの人の笑顔を思い出した…。



 いたずらに

  染まりて散りし

   もみじ葉に

 寂しさ隠す

     秋の夕暮れ



 あっという間に秋も深まり、周りの紅葉も進んできた。

 紅く染まったもみじは端から散り始め…あぁ、もうすぐ冬になるのだと、なんだかしんみりしてしまう…。

 あの人に連絡しなくなってから…もうすぐ一年になろうとしている…。

 寂しくない…とはとても言えない…。

 たが、面に出すことはない…夕焼けにもみじの葉も何もかもが紅く染まるように…ただ、今を遣り過ごすだけなのだ…。



 
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