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永遠の謎

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346部分:第二十三話 ドイツのマイスターその一


第二十三話 ドイツのマイスターその一

                第二十三話  ドイツのマイスター
 王はだ。この時宮廷において期待に目を微笑まさせていた。
 そのうえで己の前に立っているホーエンローエ首相に話すのだった。
「間も無くですね」
「御成婚ですね」
「それは」
 言われてだ。ふと気付いた顔になった。
 だがその表情をすぐに隠してだ。こう首相に返した。
「第一ですが」
「第一とは?」
「ワーグナーのことです」
 彼の名前をだ。ここで出したのである。
 そのうえでだ。あらためて首相に話した。
「彼が。間も無く帰ってきますね」
「ワーグナー氏ですか」
「はい、そうです」
 その通りだとだ。微笑み話す。
「彼が戻ってきます」
「その通りです」
 内心妙なまでにいぶかしむものを感じながらだ。首相も応える。
「ワーグナー氏は帰って来られます」
「そしてそうなればです」
「そうなれば?」
「ワーグナーは一つのものを携えてくるでしょう」
「新しい芸術でしょうか」
「ニュルンベルグのマイスタージンガー」
 作品の名前をだ。王は言葉として出した。
「非常に素晴しい作品であることは間違いありません」
「では陛下」
「はい、私はまずあの作品を観ます」
 そうだというのだ。
「まずはです」
「それはいいのですが」
 首相はだ。ここでこう言うのであった。
「ただ。陛下」
「何でしょうか」
「御成婚のことですが」
 このことをだ。王にあえて告げたのである。王がそのことについてあまり口に出されないのを見てだ。それであえて告げたのである。
 それに対してだ。王はこう言うのだった。
「そのことはお任せします」
「私にですか」
「はい、卿に。そして」
 そしてだと。感情の篭もらない言葉で話していく。
「臣下にですか」
「お任せさせて下さるのですか」
「そうさせてもらいます」
 まるで関心がない。そんな口調だった。
「全ては」
「わかりました」
 首相はまずは王のその言葉を受け取った。
 それからだ。王にこう話したのであった。
「ゾフィー様への冠ですが」
「そのこともお任せします」
 やはりこう返すだけの王だった。
「あの方に相応しい冠を」
「ではバイエルン王妃の冠をですね」
「それを御願いします」
「では」
「それではです」
 ここまで話してだ。王は首相にこんなことを述べた。
「首相は今はお時間はありますか」
「時間ですか」
「はい、あるでしょうか」
 こうだ。首相に対して問うのである。
「それはどうでしょうか」
「ありますが」
 王の誘いを断る訳にはいかない。そう判断しての言葉だ。実際にはこれから書類にサインをしなくてはならない。首相はどの国でも多忙なものだ。
 だがあえてこう答えてだ。王に対するのだった。
「それでは一体」
「音楽を聴きませんか」
 こう首相を誘う王だった。
 
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