【完結】猫娘と化した緑谷出久
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猫娘と強化合宿編
NO.076 マスキュラーの襲撃
前書き
更新します。
―――ヴィランが攻めてきた一方で、相澤と補習組の面々は宿泊施設まで戻って補習授業を開始しようとしていた。
物間とA組とのどこか気が抜けたやり取りが交わされている中で、それは起こった。
突如としてマンダレイからの緊急テレパスが全員に響き渡り、ヴィランが攻め込んできたことを知る一同。
いち早く相澤はブラドに生徒達を任せて、一人颯爽と駆けていく。
そして外に出て目に映りこんできたのは森が燃えていて黒煙が上がっている光景……。
「マズいな……」
とてつもない緊急事態だと悟ったと思った次の瞬間に、
「心配が先に立ったか、イレイザーヘッド」
「ッ!? ブラド―――!!」
突然の荼毘の出現に個性を発動しようとして、だがそのまま相澤は荼毘の放つ炎に包まれてしまった……。
広場ではヴィラン連合・開闢行動隊の一員である二名のヴィランが出久達と対峙していた。
「ご機嫌よろしゅう雄英高校!! 我らヴィラン連合開闢行動隊!!」
トカゲのような肌を持つ男がそう叫んだ。
それにまだ肝試しに出発していなかった面々と虎とマンダレイは顔を青くさせながら、
「ヴィラン連合がなんでここに!?」
「そうだよ! ここは情報封鎖されていたはずだろ!?」
そう叫んでも現実は待ってくれない。
今もなおヴィラン達は今か今かと生徒たちの命を狙っているのだから……。
そんな中で、布に包まれた棒のようなものを持つヴィラン・通称マグネが気絶しているピクシーボブにそれを『ゴリッ』と頭に着けながら、
「この子、どうしちゃおうかしら? どう思う? 潰してしまおうかしら?」
「させぬわ!!」
虎が憤怒の表情で前に出ようとする。
だが、先にトカゲの肌を持つ男が前に出る。
「まぁ待て、マグ姉。虎、てめぇも落ち着け。すべての生殺与奪は“ステイン”の仰る主張に沿うか否かだ」
「ッ!?」
出久はそれを聞いて神経を尖らせる。
「ステイン! あてられた人か!」
「お……? お前は……」
男は出久を見るとニヤリと笑みを浮かべる。
だが、それだけでもう他に気を回した。
それに出久は一瞬だがその不可解な視線に悩むが、男は続ける。
「……今回の目標の一つはステインの終焉を招いた眼鏡の……確か飯田天哉って奴の抹殺が目的だ。……っと、申し遅れた。俺の名は『スピナー』。ステインの遺志を継ぐもの!」
そう言って大量のナイフや刃物系がごった煮で巻き付けられている凶悪な剣を構える。
そんなスピナーという男に対して、虎はピクシーボブの最近の幸せに向けた思いを語りながら、傷つけられたことに憤り、
「平気でヘラヘラと笑ってるんじゃないよ!!」
「ヒーローが人並みの幸せを夢見るか!!」
「虎! 『指示』は出した! ほかの生徒たちの安否はラグドールに任せよう! 私たちはここで奴らを抑えよう!」
「了解した!」
そしてテレパスが繋がっている全員に送信される。
『生徒のみんなは交戦しないでどうにかして宿泊施設まで逃げて! 特に飯田君! 君は要殺害リストに入ってるみたいだからなんとしてでも逃げて!!』
それをテレパスで聞いていた飯田は、
「まさか……ヴィランに命を狙われるようになるとは……」
「保須事件関係か……とにかく帰るぞ、飯田」
「ああ……」
B組の生徒の一人を抱える轟がそう飯田に言い聞かせる。
飯田もどこか落ち込んでいる素振りをしているが、今はとにかく避難が第一だと考え、行動を開始した。
場所は広場に戻り、
「とにかく合宿所まで避難をしよう!」
「そうだな」
「……ッ!(コクリ)」
尾白の言葉に口田と峰田も賛成して帰ろうとするが、
「尾白君……先に行っていて」
「デク……?」
爆豪が出久の異変にいち早く気づく。
そして出久はマンダレイに向けて叫ぶ。
「マンダレイ! 僕、知っています!!」
「ッ!」
…………洸汰の秘密基地のある場所で洸汰は今まさに危機に陥っていた。
「見晴らしのいいところを探していたんだが、なぁお前……資料になかった顔だな」
「う、うあ……」
洸汰の前の前に全身フードの男が立っていた。
その男もヴィラン連合の一人で間違いはないだろう。
だが、洸汰にはそんな事など分からない。
ただ、今己の身に危険が訪れようとしていると肌が感じて鳥肌が立っているとだけ……。
男は洸汰に向けて話す。
「ところでお前、いいセンスの帽子を被ってるじゃないか? 俺のこのダセぇマスクと交換してくれないか?」
一歩、また一歩と洸汰へと近づく男。
洸汰も恐怖からか後ずさりを何度もする。
そしてとうとう恐怖に負けてしまい男に背を向けて走り出してしまう。
だが、男に背中を見せるのは命取りである。
男は一瞬で洸汰の前へと壁を伝って跳ねる。
その風圧の影響で男の顔部分のフードが捲り上がる。
そして洸汰は見てしまった。
その男の顔を……。
その男は洸汰の父と母を殺したヴィラン……そしてその顔にウォーターホースから受けた傷を持つ……マスキュラーというヴィランだったのだ。
とうとう洸汰は泣き出してしまい、しかしマスキュラーもそんな洸汰を待ってくれるわけもなく、
「一発やらせろや!!」
「パパ……! ママッ……! 出久お姉ちゃん!!」
洸汰の祈りの言葉は果たして、届くのであった。
マスキュラーの拳が洸汰に振り下ろされる直前に、
「にゃああああああーーーー!!!!」
「うぉっ!?」
猫のような叫び声とともにマスキュラーは衝撃波を食らって壁へと吹き飛ばされた。
「洸汰君!! 無事!?」
「い、出久お姉ちゃん!?」
「おらぁ!!」
「ぐぉっ!!?」
出久の出現と同時に爆豪も姿を現して、マスキュラーに向けて爆破を放ってさらに壁にめり込ませる。
さすがのマスキュラーも間を置かない攻撃に一瞬だが意識を飛ばす。
「爆破のやつも……なんで」
「なんでだぁ? そんなの当たり前だろぉが!!」
「うん。洸汰君、助けに来たよ!」
出久と爆豪の二人がマスキュラーから洸汰を守るように立っていた。
「で、でも……俺、爆破の兄ちゃんにはひどい事……」
「そんな事、今はどうだっていいんだよ! デクがてめぇを助けるってんなら俺も助けてやるからよ!」
凶悪な笑みを浮かべながらもさすがヒーロー科。
今は爆豪も個人的な感情より救出を優先したのであった。
だが、少しして岩が崩れる音がしだしてマスキュラーが岩壁から這い出てきた。
「いたた……たっく、いきなりやってくれたなガキども……」
そう言いながらもマスキュラーの顔には笑みが浮かんでいた。
ただ子供を殺すよりは楽しめそうだという自分本位な考え方によって。
「「ッ!」」
その笑みから狂気的なものを感じ、出久と爆豪は即座に構えを取る。
構えをしながらも、爆豪は出久へと視線をそらして、
「おいデク……どうにかここから脱出する手段を試みるぞ!……どうやらあの野郎はそう簡単に逃がしてくれなさそうだしな……」
「分かってるじゃねぇか。いいねぇそういうの……実に俺好みだわ。それに……」
マスキュラーは出久へと一瞬視線を向けて、スピナーと同じような笑みを浮かべる。
そのネトッとした視線に出久はまたしてもビクッと体を身震いさせる。
「(まただ……また、あの嫌な視線……いや、今は構うな!)」
嫌悪感を感じながらも出久はマスキュラーと睨みあった。
爆豪もそんな奴の出久を見る視線に気づいてか、
「おい、デク……どうやらてめぇも奴らのターゲットに入ってるみてぇだな。俺が前に出る……援護頼むぞ?」
「わかったよ、かっちゃん……」
「いいねぇいいねぇ……気の合う男女だことだ。まぁいい。とにかくてめぇら……」
瞬間、マスキュラーの筋線維が目に見える形で盛り上がっていき、まるで皮膚のはがれたような、でも強靭な体へと変貌していく。
「血ぃ、見せろや!!」
三人に向かってマスキュラーは駆けてくるのであった。
後書き
次回はまるまる戦闘にしようかと……。
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