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永遠の謎

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341部分:第二十二話 その日の訪れその十二


第二十二話 その日の訪れその十二

「舞台神聖祝典劇なのだ」
「では。あの方はその作品において」
「聖なる愚か者だ」
「パルジファルだからですか」
 パルジファルというのは清らかな、聖なる愚か者だという意味の言葉だ。その意味の言葉がそのまま彼の名前になっているのだ。
 二人は王をそのパルジファルになぞらせてだ。そうして話すのだった。
「あの方は王になられるのですね」
「あの方はあの世界でこそ王になられるべきなのだろう」
 ワーグナーは話していく。
「女性であるのだから」
「愛により救済をされる女性なのだからですか」
「だからこそパルジファルなのだ」
 王をだ。その清らかな愚か者になぞらえた話は続く。
「しかしパルジファルは愚か者ではない」
「それが変わるのですね」
「最初はそうであっても」
 それがだ。変わるというのだ。
「聖杯城の主に相応しい存在になる」
「一つのことからですか」
「女性の口付け。あの方の場合はローエングリンとの出会い」
「それが口付けですか。あの方にとっての」
「そうなるのだ。あの方は女性だが」
 それでもだと。ワーグナーの話は続く。
「聖杯城の主となられる方だ」
「それは御身体が男性だからですね」
「あの方は。複雑な方だ」
 心は女性でありながらそれでいて身体は男性である。そのことがだ。王を非常に複雑な存在にしているというのだ。ワーグナーは見ていた。
「ローエングリンもエルザも幸せになれず」
「そしてですね」
「パルジファルは妻を迎えずに聖杯城の王になる」
「陛下は既に城の主になっておられるのでしょうか」
「いや、あの城はこの世にはない」
 今だ。彼等が住んでいる世界にはないというのだ。
「存在しているのは俗世ではないからだ」
「では。あの方は」
「パルジファルは旅をする」
 ここでもパルジファルだった。王は今はその英雄になぞらえて話されている。それはワーグナーだからこそわかることであった。
「多くの場所を彷徨いその果てに辿り着く」
「聖杯城に」
「その陛下がこの世でその城に辿り着かれることはないのだ」
 そうだというのだ。
「それは御成婚もだ」
「あの方はこの世ではですか」
「おそらく。そうなる」
 コジマに話していく。
「女性的な存在は女性的な存在と結ばれないのだから」
「そうですか。しかし」
 今度はだ。コジマから話した。
「思えば不思議なことですね」
「不思議か。あの方が」
「あの方は女性ですね」
「そうだ」
 その通りだとだ。ワーグナーはコジマに答えた。
「その通りだ」
「しかしそれでも王ですね」
「聖杯城のだ」
「では男性ですね」
 そうなるのだ。聖杯城は男だけの世界でありその王になるのならばだ。それは必然的に男性的なものでなければならないからである。
 コジマはその矛盾について考えだ。ワーグナーに問うのだった。
「あの方はそうなるのですね」
「この場合はそうだ」
 ワーグナーの今度の返答はこうしたものだった。
「男性となる。あの方は」
「女性でありながら男性でもある」
「不思議な方だな。まことに」
「本当に。どういう方なのでしょうか」 
 コジマにはだ。そのことがわからなくなってきていた。
 
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