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異世界は神皇帝と共に

作者:黒鐡
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第1巻
  公爵家からの謝礼×対ソードレック子爵戦

王都アレフィス、滝から流れ込むパレット湖のほとりに位置する国の首都だから『湖の都』とも呼ばれている。大陸西方に位置するベルファクト王国は、過ごしやすい気候と善政を敷く国王のお陰で成り立っている。

『ベルファスト王国キルア地方で作られる絹織物は、この世界でも最高級品らしいと聞いてるぞ』

『だがそれはあくまで表で知られている物で、裏ではプトレマイオス神国の物が最高級品だと言われている』

『貴族階級や他国の王室まで御用達なので大事な収入源みたいね』

王都へ近づくと城壁の長さに驚く三人、俺は特に驚く感想を持ち合わせておらん。街の門で検問してる様子を見てたが、俺らはスゥとレイムの顔見ただけで通過できたから顔パスで入れるのか。それか馬車に描かれた公爵家の紋章か。

「この橋を渡った先が貴族達の住居となっている」

「ここから先は未知数と言う事ですか、それにしても一真さんは何でその事を知ってるんですか?」

「庶民エリアと貴族エリアに分かれてるんだからそう考えるのが妥当。俺の出身地である神国も似たようなとこだしな」

馬車は大きな邸宅の前に出て敷地の壁が長く、門番へ辿り着くと数人の門番達が重そうな扉をゆっくりと開ける。門に描かれた紋章が馬車と同じ紋章だからここが公爵の屋敷のようだ。玄関前で馬車が停まり、スゥが扉を開けた。

「お帰りなさいませ、お嬢様!」

「うむ!」

ズラッと並んだメイド達が一斉に頭を下げる。ま、俺の家もこんな感じだから車から降りて玄関を進み絨毯がある階段から一人の男性が。

「スゥ!」

「父上!」

なるほど、あれがスゥの父親か。

「良かった。本当に良かった!」

「大丈夫、わらわは何ともありませぬ。早馬に持たせた手紙にそう書いたではないですか」

「手紙が着いた時は生きた心地がしなかったよ」

あれがオルトリンデ公爵で、国王の弟ね。

「君達が娘を助けてくれた冒険者達か。礼を言わなければな。本当に感謝する、ありがとう」

「どう致しまして。それとこの籠手に見覚えはあるか?」

「その籠手はまさか!ではその籠手に封印されてるのが二天龍の片割れと言われたドラゴンが!?」

『二天龍の片割れ、まさかここに来て呼ばれるのは久し振りだな。俺の名はドライグ、赤龍帝ドライグだ』

やっぱ知ってた様子だ、籠手が喋った事に更に驚きを増すエルゼ達三人。改めて自己紹介を受けてこちらも自己紹介をし、表と裏に名があり裏の名を口にしてはならないけどね。

「なるほど、君達はギルドの手紙を届ける依頼で王都に来たのか」

「まあそう言う事だ」

庭に面した二階のテラスで俺らは公爵の前に座ってお茶会を開いてた。最も楽しんでたのは俺と公爵だけ、三人娘はガッチガチに緊張してた様子。

「その依頼を受けなければスゥは誘拐されていたか、殺されてたかもしれない。依頼者に感謝だ」

「襲撃者に心当たりはあるのか?」

「無い・・・・とも言えない。立場上、私の事を邪魔に思ってる貴族もいるだろう。娘を誘拐して脅して、私を意のままに操ろう・・・・と考えた輩かもしれん」

「父上、お待たせしたのじゃ」

貴族社会にも色々とあるのは知ってたが、この世界でも似たような事も起こるのだな。テラスにやってきたスゥ、フリルの付いたドレスと金髪に飾るカチューシャ。

「エレンとは話せたかい?」

「うむ。心配させてはいけないので、襲われた件は黙っておいたのじゃ」

「エレン?もしや貴方の妻ですか」

「そうなのだがすまない。娘の恩人なのに姿を現さず・・・・妻は目が見えないのだよ」

「目が見えないのでござるか?」

「五年前に病気でね・・・・一命は取り留めたが視力は失った」

八重が心苦しそうに尋ねたらそう言う事か、魔法での治療もやってみたが既にやってみたらしい。国中の治癒魔法の使い手に声を掛けたが結果はダメだった、怪我による肉体の修復は出来ても病気による後遺症までの効果は無い。

「お祖父様が生きておられたらのう・・・・」

「妻の父上・・・・スゥの祖父、私の義父は特別な魔法の使い手で身体の異常を取り除く事が出来たのだよ。今回スゥが旅に出たのも、義父の魔法を何とか解明し、習得できないかと考えてたのだよ」

「ちなみにその魔法って無属性では?確か【リカバリー】だった気が」

「何故その魔法名を知っているんだ!?」

「俺の力は死者蘇生や回復魔法に状態異常を無くす力を持っていると言えば分かると思うんだけど」

俺の力は何も回復だけではない、それが出来るのはプトレマイオス神国の大公しか出来ない事を思い出した公爵。ベッドに腰掛ける貴婦人はスゥに似てたが、母親なのだから当たり前か。

「あら、お客様ですか?」

「初めまして、織斑一真と申します」

「初めまして、貴方、この方は?」

「スゥが出会った大変世話になった御方で・・・・お前の話を聞いて目を診てくれるそうだ」

「目を?」

「母上、少し楽にして下され」

「今回はこれを使うか、先程太陽光取り込んで正解だったわ」

と言う事で赤龍帝の籠手に力を発動させて、譲渡を右手に行かせて手をかざす。更に皆にも見えるよう六対十二枚の金色の翼を展開、神の力を最大限使えるようにして発動。

光が目に流れて行き、光が消えるのと同時に翼も見えなくする。宙を彷徨っていた視線が落ち着いて行き、瞬きをしたかと思えば顔をスゥと公爵の方へ向ける。

「・・・・見える・・・・見えます。見えますわ、貴方!」

「エレン・・・・!」

「母上!!」

ボロボロとエレンの目から涙が零れて来たと思えば、三人纏めて泣き始めた。五年振りに見る娘と夫の顔を見れたのだから当然の結果だ、泣きながら笑いながら見つめ続けてた。

傍で見守っていた三人娘も泣いていたが嬉し泣きなのか?俺だけ泣いてないから酷いと言われてしまうが、正直に言うと神の力を使えば感動しても涙を流す事はない。失敗を恐れないから逆にホッと一安心。

「君達には本当に世話になった。感謝してもし切れない程、娘だけでなく妻まで救ってくれるとは本当にありがとう」

「ま、神の力を使える俺だから出来た代物だから素直に受け取っておくよ。アルフレッド」

「にしてもアレが創造神黒鐡様とは、初めて見たし本当に奇跡としか思えない程だ。一真さん」

俺が神の姿、大天使化ではないが翼の枚数を見た事により公爵から名前で呼び捨てを許可された。俺は呼び捨てだがあちらはさん付けだが、今いる場所は応接間でスゥはエレンの寝室におる。

「一真さんと君達にはきちんとした礼をしたい、レイム、例の物を持ってきてくれ」

「畏まりました」

「まずはこれを。少々遅くなったが、娘を襲撃者から助けてもらった事と道中の護衛に対する謝礼だ」

「そりゃどうも。おいおいマジかよ、白金貨が四十枚も入ってるぜ」

白金貨が四十枚も入ってる事に驚愕してた三人娘、金貨の上の貨幣で一枚で金貨十枚分。俺は普通に受け取るがコイツらは、まあ冒険者として今後を見るなら資金として受け取る事に。

「それとこれを君達に贈ろう」

「四枚のメダル?」

「我が公爵家のメダルだ。これがあれば検問所を素通り出来るし、貴族しか利用できない施設も使える。何かあったら公爵家が後ろ盾になると言う証さ。最も一真さんには必要だとね、プトレマイオス神国から発行されたカードよりこちらの方がより身分証明になってくれる」

「確か公爵家御用達の商人とかに与えられる物だった気がする」

メダル一つ一つに俺らの名前と単語が刻んであり、同じ物は一つもなくて紛失した場合に悪用されるのを防ぐ為なのだと。エルゼには『情熱』でリンゼには『博愛』で八重には『誠実』と刻まれていた、俺には『奇跡』と刻まれてたが確かにアレを奇跡だと思うな。

金の方は十枚ずつ四等分にして、そのまま空間に入れて保管したが残りはアルフレッド経由でギルドに預けたらしい。もし他の町に行っても下ろせるような感じ、銀行みたいだが玄関へ向かう。

「また遊びにくるのじゃぞ!絶対じゃからな!」

アルフレッド一家の熱烈な見送りを受けながら本来のミッションであるソードレック子爵へ向かう。どうやら八重が前に話した父親に世話になった方が子爵、車ですぐソードレック子爵の家に止まる。

門番にザナックの名を出して子爵に面会してもらうよ話を取り付ける。屋敷内に通されて執事が応接間に案内してくれて、しばらく待つと如何にも強そうなのが現れた。

「私がカルロッサ・ガルン・ソードレックだ。お前達がザナックの使いか?」

「ああ。この手紙を渡すよう依頼を受けた。子爵に返事を頂くようにとも言われました」

ザナックから渡された筒に入った手紙を差し出して、ナイフで蝋封を剥がしてから中身を取り出す。目を一通り通すとすぐに返事を書くと言って部屋を出て行った。入れ替わるようにメイドがやってきてお茶や菓子を振る舞った。

「待たせたな、これをザナックへ渡してくれ。頼んだぞ、それから・・・・さっきから気になってたのだが、そこのお前はどこかで見覚えがあるような・・・・会った事はないが名は何と言う?」

「拙者の名は九重八重。九重重兵衛の娘でござる」

「・・・・ココノエ・・・・九重か!お前、重兵衛殿の娘か!ふむ、間違いない。若い頃の七重殿に瓜二つだ。母親似で良かったなあ!」

子爵は何かを思い出しながら八重の顔を見ると愉快そうに笑う子爵と何とも言えない笑顔で返す八重、子爵の家の剣術指南役でまだ若い頃は洟垂れ小僧で扱かれたんだと言ってた。二十年前の記憶で厳しかったと。

「父上は今まで育てた剣士の中で、子爵殿程才気に満ち溢れ、腕が立つ者はいなかったといつも口にしてたでござる」

「ほほう?世辞でも嬉しいものだな、師に褒められるというのは」

「もし出会う事があらば、ぜひ一手指南して頂けとも父上は申していたでござる」

「ほう・・・・?」

八重の言葉を聞いて子爵は面白そうに目を細めるが、ソードレック子爵家の庭には道場があったのでそこに案内してもらった。まさかこの世界でも見られるとは思ってもみなかった剣術道場、磨かれた板に木刀が数本と神棚まであるよ。

「ここは重兵衛殿が設計して、私の父上が建てた道場でな。イーシェン風に作られている」

「実家の道場とよく似ているでござる。いや、懐かしい」

「好きな木刀を選ぶといい、上から握りが太い順に並んでいる。ところでこの中に回復魔法を使える者はいるか?」

「俺と彼女が使えますよ」

「では遠慮する事はないな。全力で掛かって来い」

道着に着替えた子爵は帯を直しながら木刀を手に取る、対して八重は木刀を数本から手に取り握ったり素振りしたりして自分に合った木刀を持って道場の真ん中へ。俺らは邪魔しないよう道場の端に座り、スマホ画面からカメラを選択して録画モード。

エルゼが審判役で声を上げた瞬間、八重と子爵が斬りかかる。一撃を正面から受け止めて連続で繰り出す八重の剣劇を受け流す、一方的に打ち込む八重とは違い子爵は攻撃してこないと思えば体力消耗してるな。

『あれは模範的だがその先がない』

『相棒もそう思うか、俺らも見てるが隙もなく無駄のない動き』

『だが俺で言えばまだまだだ、子爵も八重も』

俺らが会話してる時に脇腹を押さえて呻いてた、エルゼが試合終了を告げて俺はさっさと回復魔法を唱えた。肋骨が何本も折れていたとしても痛みがすぐ引くぐらいの速さ、次に俺が相手をしようと言った直後に木刀を持ち子爵と打ち合っていた。

「お前!一体何者だ!」

「さあな、だが俺は子爵よりも上回る強者だ」

正面を打ち下ろそうとした子爵をガードして先程の試合と同じになるが、結果は子爵の方が音を立てて道場に倒れた。そして回復魔法で回復させてから子爵は八重に言った。

「お前の剣には影がない。虚実織り交ぜ、引いては進み、緩やかにして激しく。正しい剣だけでは道場剣術の域を出ぬが、お前のはまさしく剣術師範とやり合った感じであった」

「そりゃそうだろうよ。俺は剣術を極めて結構長いんだぜ、八重も剣に何を求めてなさそうだからそこからだろう。道も見えた時にまたここへ来るとしよう」

そう言って俺らは道場を去るが、八重はしばらく落ち込んでた。エルゼが余計な事を言った所為で落ち込んでたけど、俺が運転する軍用車にて貴族達の生活エリアから出るんで検問所へと向かう。

「で?八重はこれからどうするんだ、俺達はリフレットに帰るが」

「どうするでござるかなあ・・・・」

「行く当てが無いなら八重もリフレットにおいでよ!そんでギルドに入って、一緒に組んでついでに修行すればいいじゃない!」

「それに剣術なら俺が見てやってもいいし、何せあの子爵でも一瞬で終わってしまったからな」

「それもいいでござるかな・・・・それに一真殿も剣術指南してくれるなら大助かりでござる」

と言う事により決定した訳だが、軍用車が検問所を通るところで兵士に公爵家から貰ったメダルを見せたらホントに顔パスのように通してくれた。公爵と大公は同じ爵位みたいだけど、俺は実質国王みたいなもんだ。 
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