ハイスコアガール 前世がゲームオタクの俺がラブコメを展開するのは間違っている件
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格ゲー黎明期にハメや待ちはリアルファイト
明日からいよいよ冬休みに入る為に教室の反応は様々だ。帰宅部の生徒は明日から自由に時間が使えて嬉しそうであり、部活動で……特に運動部の生徒でやる気がある奴は次の大会に向けて本格的に練習しようと気合を入れるなど、明日からどの様に過ごすのかと浮かれるもの、気合を入れるもの等、千差万別であった。先生から成績表を貰って俺の評価は相変わらずの五段評価の中で一部を除いて3で埋め尽くされていた。
「矢口君。二学期の期末テストで数学と英語が80点以上を取った事は先生も驚いています。ですが、盛り場に行くことは関心できません。その点を直せば成績も今以上にあがりますから三学期から気を付けるようにしてください」
との評価をもらいました。普段の授業も寝ている事も多々あり、生活態度も悪い所が多いので他のテスト成績も平均点を上回っていたが、成績に評価されてしまった。中間や期末テストで赤点取るのと色々とまずいんだよな。おふくろに怒られて説教食らうのも嫌だけど、それ以上に居残りが原因でゲーセンに行けないのがもっと嫌だから、前世から中間や期末テストに関しては、そん時だけはゲームを自粛してテスト勉強を頑張ったからな。
「にしてもハルオ。ゲームばっかだと思ったけど勉強も出来るんだな」
「正直驚いたぜ」
「居眠りが多いくせに、中間や期末で高得点を取るから先生達も言いたいことも言えない顔だったもんな」
クラスメートの男子からそのように言われた。まあ、前世でも現在でも俺は基本的にゲームマニアだからな。ゲームマニアと言われても別に何とも思わんし。
「ハルオの格ゲーの腕は凄いぜ。このまえゲーセンでハルオのプレイを見学したけど高校生や大学生だけじゃなくて大人もごぼう抜きだったからな」
「マジかよ宮尾」
「本当だよ。1プレイで27連勝まで行ってたぜ」
「スゲーじゃん」
「どんだけ練習したんだよ」
そこからゲームの話題に入って話が盛り上がる。次の家庭用の新作話題やゲーセン話題等を話していた時だ……。
「馬鹿じゃねえの」
鼻で笑われたような口調で柄の悪い男子から言われた。そいつはクラスで有名な野球部とバスケ部を中心のグループだ。そのうち二人は今年からレギュラーにも入っている奴らだ。何か気に入らないのか前から俺の趣味を……いや運動以外の趣味を馬鹿にしたような事を言って他のクラスメートから評価も悪い奴らだ。
「今でもゲームやってんのかよ」
「高校生や大学生や大人に勝ったて言ってもたかがゲームだろ」
馬鹿にしたように呟きヘラヘラと笑う運動部グループ。そのせいで周りの空気も悪い。前世の時からそうだけど、何で学生の時のアスリート連中の一部は、自分のやっている事が偉くて、他はどうしようもないと見下してくるんだろうね。
別に馬鹿にされたからってむかつくわけでもないし、どうでもいいんだけど、こういうタイプの輩に絡まられるとめんどくせえよ本当に。
「大の大人が中坊に勝てない現実があるかよ」
「俺達みたいに本気じゃねえんだよ」
「それに、ゲームで強いからって何になるんだよ」
「浅いんだよ」
そう言って嘲笑い。言いたい放題言って運動部グループは教室を去った。
「相変わらず感じ悪いなアイツら」
「俺達が何をやろうが勝手だろ」
前世の時もそうだが、ゲーマーって世間からあんまり認められない雰囲気あるんだよな。俺も前世の頃は少し歳が上の先輩や同期達には格ゲーをやって大会にも参加していると素直に言えたけど、親父や爺さん世代達にはなかなか言えずにいたからな。親父や爺さんの世代達からはゲームをやっていると「不健全、馬鹿になる、何が面白い、下らない」と思われることが多く、更に、同世代の中にはさっきの運動部グループのように馬鹿にされて未だに一部では受け入れられない空気もある。
前世の201X年の時には日本でもプロゲーマが浸透して、ゲームでお金を稼げる職業も出始めて、メディアにも注目されるようになったが、それでもゲーマーの現実は厳しいものだ。
「ハルオ。アイツらが言った事を気にするなよ」
「別に気にしてねえよ宮尾。昔から言われ続けた事にいちいち腹を立ててもしょうがねえよ」
「それなら良かった……あ、それより今日の夜はクリスマス会があるからアイツらの事は忘れて一緒に楽しもうぜ」
「そうそう」
「可愛い女子達も参加するらしいし」
「お前の好きなテレビゲームも出来るかもよ」
そういやクリスマス会があること忘れてたな。やべ~プレゼント買うのすっかり忘れてたよ。家の近くの店で交換用のプレゼントでも探すかな。
ーーー。
『敵将 曹仁、討ち取ったりぃー』
「クリスマス会がもう少しで始まるのに、ここでゲームしていていいの矢口君?」
「日高の家に近くによったら、俺を誘惑するゲームがここに……」
「もう」
交換用のプレゼントを購入してクリスマス会に行こうと思ったけど、日高の家にあるアーケードの名作目に留まって思わずプレイしてしまったぜ。俺がプレイしているのは天地を食らう2で、キャラクターは、趙雲子龍さんだ。現在はステージ4の曹仁を倒した所だ。
それから危なげながらも進んでステージ9の呂布もたどり着いて、呂布も何とか倒す事が出来た。
『敵将 呂布、討ち取ったりぃー』
「時期的に既に死んでる呂布が敵将で現れるってすごい設定だね」
「そこは流せ」
天地を食らうの原作者の本宮ひろ志さんの作品は基本的にアツい展開が多くて、不条理でツッコミも満載だが、いちいち気にしてたらキリがないぜ日高。
「そして総大将の曹操は、俺は何の躊躇もなく殺す!」
「歴史が変わっちゃうよ」
『敵将 曹操、討ち取ったりぃー』
天地を食らう2のステージ9の呂布を倒すと最後に曹操を殺すか見逃すかの二択が選べる。見逃すを選ぶと魏呉蜀の三国となるルートと、曹操を倒すと蜀が漢王朝を復活させるルートになる。逆に曹操を取り逃がすとBADエンドになるんだよな。
やっぱ天地を食らうシリーズは面白いぜ。特に2は俺が最も気に入ってる名作の一つだ。
「てか日高は俺を無視して直ぐにクリスマス会に行けばよかったじゃねえか」
「え……そんなこと言わないで」
「ん。まあ、日高がいいならそれでいいけど」
何か一瞬。日高の表情が寂しそうな感じがしたな。
「でもよ。日高の家がアーケード筐体を置いてくれて嬉しいぜ。しかも俺の知ってる名作ばかりだしな。さっきプレイした天地を食らう2の他には、熱血硬派くにおくん、スーパーストリートファイター2が導入されてるからな。日高の親父さんはゲーマー心がよく分かってるよ」
「私は不良のたまり場になるんじゃないか心配だよ」
「安心しろよ。最近の不良はあんまり駄菓子屋や日高の店みたいな場所でゲームする事は少ないからな」
不良たちは日高の店みたいに目立ちやすい場所にいる事は滅多にないしな。地下や一般人が行きつらい場所にたむろする事は多いけど。
「でも矢口君って凄いね」
「何がだ?」
「今日、教室であんな酷い事を言われても気にしないでゲームをやってる事だよ」
「あ~あれか。別に気にしてないよ。普段から言われ慣れてる事だから」
ゲームに偏見を持つ輩は昔からいるし、そんな悪口をいちいち気にしても仕方ないし。
「言われ慣れてる?」
「そうだよ。俺みたいなゲーマーは基本的に親世代からは理解はされないし、同世代の人間からも一部は理解されずに馬鹿にされることはざらだ。いちいち気にしてたらゲーム何てやってらんないぜ」
「そんな……あそこまで馬鹿にされて悔しくないの?」
「まあ確かにムカつくけど、別に俺はアイツらに俺の趣味を理解してほしいとは思ってないし」
「じゃあ矢口君は何のためにゲームをやってるの?周りに理解されないでゲームを続ける目的は何なの」
日高。そんなの決まってるじゃねえか。
「ゲームが好きだから」
好きでもない事を毎日続ける事は出来ない。それは当たり前の事だ。好きだからこそ俺は毎日ゲームをプレイしているんだぜ。確かにゲームは何も生み出さないかもしれない。実際にそうだ。ゲームの腕が上手くたって世間から称賛されることはない。ゲーマーというある一部の人間に認められるだけだ。プロ野球や大相撲のように世間から認められなくてもいい。ゲームを続けても将来の為にならないかも知れないけど、それでもゲームを続けてるのは、世間に認めて貰いたいからじゃない。
日高。確かにゲームを続けても無意味かも知れない。実際にゲームを本気で取り組んでも理解はされなかった。そこには何もなかった。でも、俺のゲームに媚び、手加減、手抜きはなかった。俺のゲームには嘘はなかった。
と、変に熱く語っちまった。こんな臭いセリフを言うもんじゃないぜ。
「ううん。矢口君がどうしてあそこまでゲームに熱心な理由が分かって私は凄く嬉しいよ」
「そうか」
「それより早くクリスマス会に行こう。皆が待ってるよ矢口君」
日高が笑顔になって俺の手を握った。いつも何処かドライな日高の表情が分かりやすいくらいに分かる笑顔に思わず少しドキッとしてしまった。日高も大野に負けずの美少女だしな。美少女の笑顔を見れて役得と思おう。
なお、俺と日高が手を繋いで一緒にクリスマス会に遅れて出席した事で参加者の男子と女子から凄くからかわれて日高が分かりやすいくらいに表情が赤面していた珍しい光景を見た。赤面の表情の事を指摘したら日高に怒られました。そして宮尾に凄く呆れられたのも記録しておく。
後書き
簡素ゲーム用語
熱血硬派くにおくん デクノスジャパンが開発したアクションゲーム。1980年代のツッパリをイメージした主人公の『くにお』が親友のひろしを助ける為に、不良、暴走族、スケ番、ヤクザの集団戦うゲーム。なお、このゲームのヒットによりくにおくんシリーズはデクノスジャパンの代表作となる。
天地を食らう2赤壁の戦い カプコンが開発したベルトスクロールアクションゲームで、前作の天地を食らうの続編だが、ゲームシステムが一新されてる。最大三人まで参戦が可能であり、使用プレイヤーは三国志の蜀陣営の武将である関羽、張飛、趙雲、黄忠、魏延の五名である。三国志がテーマの作品だが、武器を用いず徒手格闘が中心である。
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