永遠の謎
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
312部分:第二十一話 これが恐れその二
第二十一話 これが恐れその二
「バイエルン王もあの妹君もだ」
「御二人がですね」
「幸せになられることをですか」
「陛下も願われていますか」
「そうなのですか」
「私はあの王が好きだ」
そのだ。バイエルン王がだというのだ。皇帝もだ。バイエルン王は嫌いではなかった。政治的には軋轢を生じることはあってもだ。
何故王を嫌いではないか。皇帝はその理由も話した。
「非常に聡明で高貴な性格をしている」
「そうですね。とても純粋な方です」
「そしてあくまで高貴です」
「芸術を愛され人の心を御存知です」
「そうした方だからなのですね」
「あの王で幸せなのだ」
皇帝はこうも言った。
「バイエルンの者達は」
「はい。確かに」
「あれだけの方はそうはおられません」
「英傑ではないですが」
少なくともだ。王はそれではなかった。自ら剣を取って何かをするような。そうしたことをする人物ではなかったしそうしたことを好むこともない。
だが、だ。それでもだとだ。皇帝とその側近達は話すのだった。
「ですが。素晴しい方です」
「美麗で気品があり」
「そして聡明です」
「そうした方ですから」
「最高の王だ」
皇帝は王をこうまで評した。
「バイエルンにとってもだ」
「そうですね。バイエルンの者達は幸福です」
「あの王はバイエルンの誇りです」
「そしてドイツの」
「彼等が意識していなくともだ」
それでもだとだ。皇帝は話した。
「あの王がいるということはだ」
「バイエルンの者達にとって幸福である」
「そういうことなのですね」
「そうなのだ。気付いていないのだ」
皇帝はだ。バイエルンの者達のそのことを指摘してだ。
そのうえでだ。批判する口調で話した。
「贅沢ではないか」
「贅沢ですか」
「それは」
「そうだ、贅沢だ」
こう言うのである。
「あれだけの王はそうはいない」
「外見だけではありませんから」
「その資質もですね」
「見事な方です」
「まことに」
「そうだ、あの王はまさに奇跡なのだ」
ここまで言えた。バイエルン王について。
「幻想にいる様な王だ」
「しかし現実におられますね」
「あの方はバイエルンにおられる」
「それは紛れもない事実ですね」
「それは」
「そうなのだ。あの王は現実にいる」
皇帝はまた話す。
「非常に素晴しい王だ」
「そしてそのバイエルン王がですね」
「御結婚されますか」
「その伴侶を得て」
「贈りものの用意をしておこう」
儀礼としてだ。それは忘れなかった。
ページ上へ戻る