永遠の謎
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309部分:第二十話 太陽に栄えあれその二十一
第二十話 太陽に栄えあれその二十一
そのうえでだ。彼は話すのである。
「それは表面化して政治に関係しなければだ」
「それでだけでいい」
「感情については」
「そうだ。それよりもだ」
どうかというのだ。ビスマルクはだ。
「これでバイエルンに親プロイセン派の者が台頭する」
「特にホーエンローエ氏ですね」
「あの方ですね」
「そうだ。彼が首相になる」
そうなるというのだ。
「それはバイエルンにとってもだ」
「いいことだと」
「そう仰るのですか」
「いいことだ。だがそれがわかるのはだ」
どうかというのだ。ビスマルクはそこまで見ていた。
「限られている」
「限られていますか」
「ではバイエルンの民は」
彼等はだ。それが問題なのだった。
「それはわからない」
「その感情故にですか」
「わからないというのですか」
「そうだ。プロイセンへの感情は悪い」
それは否定できないのだった。どうしてもだ。
「それ故にだ。その限られた選択肢がだ」
「わからず。そしてですか」
「バイエルンの状況は」
「政治的に悪化する」
言葉は限定されていた。しかしその限定はだ。
かなり広い範囲での限定だった。そこが問題なのだった。
「そしてそれがそのままだ」
「そのままといいますと」
「さらになのですか」
「あの方を悩ませる」
再び王の話も戻った。そのバイエルン王のだ。
「そのバイエルンとプロイセンの間でだ」
「あの方のお心がですか」
「傷ついていきますか」
「それは避けられない」
またしてもなのだった。そうなるのだった。
「あの方はあまりにも繊細だというのにだ」
「あの方はわかっておられるのですね」
ここで側近の一人が言った。
「バイエルン王は」
「その選択肢のことをだな」
「はい、そうなのですね」
「そうだ」
その通りだとだ。ビスマルクはここでもすぐに答えた。
「あの方はそのこともわかっておられるのだ」
「親プロイセン派の人物を用いるしかない」
「そのことが」
「ワーグナー氏への想いからあの方もそれを望んでおられる」
個人的な事情もあるというのだ。
「だがそれと共にだ」
「今の状況を把握しておられるからこそ」
「そのこともおわかりなのですね」
「バイエルンが為すべき人事も」
「わかっておられる。そして」
ビスマルクはさらに話す。
「そうされるのだ」
「しかしそれはあの方自身を傷つけてしまう」
「その選択自体が」
「王は因果なものだ」
バイエルン王への限りない同情だった。しかしその同情は上から下へのものではない。人間として共にいる相手へのだ。その同情だった。
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