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魔法少女リリカルなのはANSUR~CrossfirE~

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遥かに遠き刻の物語 ~ANSUR~ Ⅴ

――Episode ANSUR

連合軍と、サー=グラシオン率いる鏡面騎士団シュピーゲル・オルデンによる同盟世界“ニヴルヘイム”攻略戦。
王都エリューズニルへと続く道グニパヘリルにて、過去ルシリオンと蒼雪姫シェフィリスの恋人コンビによる圧倒的な戦力の前に連合軍は敗走。サー=グラシオンもまた蔑む対象である女のシェフィリスにボコボコにされ怒り狂った。

「くそがぁぁぁぁ! ビッチがぁぁぁぁぁ!」

「団長、撤退を! このままでは全滅します!」

部下に取り押さえられながらの敗走である。頭を掻き乱しながら逃げる彼を見たヴィータとリインフォースⅡは、『ざまぁみろ』といった風に笑った。なのは達も声には出さないがそういった心境だった。フェイトは、過去ルシリオンとシェフィリスの姿に、ただ苦々しく自身の隣に立つルシリオンの横顔を見ていた。

連合の四王・スリュムヘイム王と特務十二将マーディス部隊、そしてオペル、シリア、シャルロッテ率いる騎士団による“アールヴヘイム侵略戦”。
そこで、連合を操る四王のスリュムヘイム王が、白焔の花嫁ステアの手により戦死。風の騎士公オペルと地帝カーネルの決闘は、カーネルの敗北となったが・・・。

「おのれ! これが地帝の陸地操作・・・! まるで地獄ではないか!」

地割れを引き起こされたことで、オペルの率いる騎士団の約半数86人が崩落に巻き込まれ志望した。

「吸血鬼め! 次会ったら絶対にぶっ潰ぅ~す!」

「あらあら! なら私は、貴女の血を1滴残らず飲み干してあげますわ!」

鮮血姫シリアと拳帝シエルは引き分け。

「井の中の蛙・・・だったのは私の方だったのね」

「剣神シャルロッテ。剣技だけを見れば正しく最強に相応しいものだったわ」

過去シャルロッテと風迅王イヴィリシリアは、過去シャロッテの圧倒的な差での敗北。殺されかけたところを特務十二将の1人、炎浄王マーディスの助けもあり逃走に成功。連合軍の“アールヴヘイム侵略戦”は失敗に終わる。

ギンヌンガガブ魔族召喚阻止戦。
裏層世界たる魔界と繋がる世界・“ギンヌンガガブ”において、連合の戦力増強作戦“魔族召喚”を阻止する戦い。過去ルシリオンと雷皇ジークヘルグと冥祭司プレンセレリウス、そして“戦天使ヴァルキリー”数十体による激戦。

「おーい、こっちの雑魚は全員洩れなく昇天させてやったぜ~!」

「こちらはウトガルド王を討ちました」

「はっはっは! ジークの方が大手柄だな!」

「うっせぇ、ルシル! お前はどうだったんだよ!」

「聞いて驚け。十二将の魔族、アリウィウスを粉々に砕き、アムティスも何十機と蹂躙してやった」

この戦いで、同盟軍は連合四王の一角であるウトガルド王を討伐に成功する。“特務十二将”の1体かつ魔族・幻想一属である“虹属の魔石群アリウィウス・アルクス”の撃破という功績もあげた。“A.M.T.I.S.”80機も、過去ルシリオンの創世結界・“神々の宝庫ブレイザブリク”により殲滅。魔族召喚も阻止することにも成功し、ヨツンヘイム連合の敗北がより一層強まる。

ミッドガルド・フレスエイ戦
ミッドガルドを構成する世界の1つ、フレスエイでの戦い。“特務十二将”の空席を埋めた魔術師が居るとのことで、呪侵大使フォルテシアと炎帝セシリスと殲滅姫カノンが赴く。連合大隊の殲滅後、突如3人を襲う強力な捕獲結界。

「あなた達がアンスールなのかしら? 弱そうな人たちばかりですわね!」

姿を現したのは、先の戦いで戦死したウトガルド王の娘、“夢幻王プリムス・バラクーダ・ウトガルド”。10歳という幼さで、四王のトップに立つ連合の支配者となった天才大魔術師。

「あの、ウトガルド王? アンスールは結界に拘束したので、そろそろ撤退を・・・」

「あらそうね、アリス。では、皆さん御機嫌よう~♪」

そして、新たな特務十二将である“結界王アリス・ロードスター”。挨拶がてらの捕獲結界に閉じ込められた3人は、為すすべなくプリムスとアリスを逃がしてしまう。

その他に、新たな四王、“葬柩王フォード・テルスター・スリュムヘイム”率いるムスペルヘイム侵略戦。過去ルシリオンが初めて敗北した、ヨツンヘイム連合第三前線砦“グリュートトゥーンガルズ”の戦い。
アリスの反則捕獲結界・“一方通行(サンダルフォン)の聖域”と紙徒ミストラルのコンビによる敗北だった。救援に来たステアの創世結界・“劫火が支配せし煉界ムスペルヘイム”が無ければ、過去ルシリオンは戦死していた。

“特務十二将”にして、魔界最下層の支配権たる幻想一属・“魔砂漠ネブソノフス”。自我を持つ広大な砂漠。800年前に、当時の連合に在籍する召喚魔術師1000人の犠牲によって召喚された魔族。
1300万平方kmという巨大かつ強大な力を持つ砂漠ネブソノフスと“アンスール”の戦い。同盟連合関係なく兵の命を奪い去るネブソノフス。参戦していないフノスを除く“アンスール”は為すすべなく敗走した。

同盟軍を裏切ったムスペルヘイムが連合に渡した巨大戦艦、“ナグルファル”の攻略戦。ムスペルヘイムの王女たるステアとセシリスの2人だけの戦い。彼女たちの実兄であるムスペルヘイム王を殺害することで“ナグルファル攻略戦”は終結。ステアが裏切りの兄王に代わり、ムスペルヘイム最後の女王となる。

アースガルドへ繋がる唯一の道、防衛世界ビフレストで起こった“絶対防衛線戦”。さながら最終決戦とも言える熾烈を極めた同盟・連合両主力による激戦。
“A.M.T.I.S.”は上位10機を残し全滅。“ヴァルキリー”もまた被害甚大。“特務十二将”のリーダーにしてミッドガルド軍大将、“召喚王アーサー”もまた、この戦いで重傷を負う。プレンセレリウスも、過去シャルロッテにより敗北。重体となるも一命を取り留める。互いに甚大な被害をもたらし、“ビフレスト防衛線戦”は終結。

『他にもまあ大小様々な戦いはあったけど、これぐらいにしとくね。で、この大戦が大きく変わることになる戦いが、大戦終結の半年前に起こった』

シャルロッテがそう告げ、場面が変わる。そこは、ヨツンヘイム連合に与する世界ヴァナヘイムの帝都へと繋がる橋上。タナクヴィスル川をまたぐ全長12km、幅2kmの巨大な橋の上。

『ビフレスト防衛線戦で疲弊しきったヨツンヘイム連合を切り崩すための戦いだ』

ルシリオンが“アンスール”の率いる同盟軍を見つつそう言った。数はそう多くはないが、それでも3万という魔術師部隊だ。現在、ヴァナヘイムの防衛力は弱い。ほとんどがヨツンヘイムに回されている所為だ。そこを狙ったアンスールの“ヴァナヘイム攻略戦”。
連合世界のリーダー格の1つであるヴァナヘイムを落とせば、それだけで流れが変わると踏んだ魔道王フノスの案だった。帝都へと繋がる橋の上、そこにはヴァナヘイム防衛のために配置されたグラシオン率いる鏡面騎士団。そして連合兵が2万という数で待ち構えていた。

「ここは私たちニヴルヘイム軍が引き受けます。ですから、みなさんは帝都を目指してください」

そう言って、同盟軍の前に躍り出るのはシェフィリス。そしてニヴルヘイム軍。氷雪系に特化したニヴルヘイム軍と、氷雪系最強の蒼雪姫シェフィリス。対するサー=グラシオンは、神器“魔鏡フェアドレーエン・シュピーゲル”を扱う騎士。魔鏡の反射による全方位攻撃、防御、転移を行う。幾度も戦場で遭遇するたびにシェフィリスが破った騎士とはいえ、シェフィリスは一切の油断なく構える。

「シェフィ・・・。気を付けろよ」

「うん! ありがとう、ルシル。ルシルも気を付けてね」

過去ルシリオンはシェフィリスは口付けを交わし、彼の率いる部隊と共に先へ往く。それに続き、ステアをリーダーとした同盟軍が、戦闘を開始したニヴルヘイム軍と連合軍の脇を通り抜け、帝都を目指す。

「誰が防衛線(ここ)を通ることを許可したぁぁぁぁーーーーッ!!」

――秩序無き猛威(ウン・オルドヌング・ゲヴァルト)――

サー=グラシオンの無差別攻撃が同盟軍を背後から襲う。周囲に展開された20を超える魔鏡に反射した幾条もの青の光線だ。反射を続ける所為で、その軌道が判断できない程の無差別攻撃となっている。

「私が許可したの・・・!」

――天花麗盾(クリュスタッロス・アントス)――

同盟軍に迫る光線を、防性術式を発動して防ぐシェフィリス。それでもすべてを防ぎきることが出来ずに、同盟軍の最後尾へと迫り往く光線。

「ガルム! リアンシェルト! フェンリル!」

シェフィリスがある者たちの名前を叫ぶ。すると、シェフィリスの盾を通り過ぎたグラシオンの光線が全て弾かれ、上空へと消えていった。走り往く同盟軍の背後を護り、そしてシェフィリスの背後に立つ3つの人影。
白いセミロングヘアに黄金の瞳を持つ少女。ニヴルヘイムの番犬にしてシェフィリスの使い魔“ガルム”。
黒のロングヘアに黒の瞳を持つ少女。ルシリオンの使い魔にして、世界を呑み込む魔狼“フェンリル”。
そしてもう一人。“ヴァルキリー”の1体、“氷浪の鏡リアンシェルト・ブリュンヒルデ・ヴァルキュリア”。シェフィリスの妹をモデルにした、お淑やかだが好戦的な一面を持つ少女。

「お母様。我らにどうかご命令を」

「全軍、この場から誰一人として帝都へと向かわせるなっ!」

全軍がシェフィリスに応え「おおおおおおおお!!」雄叫びを上げる。

「我ら氷零世界ニヴルヘイム。魔道世界アースガルドと共に歩むことを決意せし者。ここを通り同盟軍に追い付きたくば、アンスールが蒼雪姫シェフィリスを討つがいい!!」

衝突するニヴルヘイム軍と、サー=グラシオン率いる騎士団と連合軍。橋上の激戦の結果、サー=グラシオンはシェフィリスに敗れ、戦死した。

場面が変わる。炎に包まれたヴァナヘイム帝都。帝都を囲む高さ60mの防壁の角という角にそびえ立つ8つの塔――“帝都防衛魔道砲塔エンペラトゥリス・バウティスモ”から、強力な砲撃が降り注ぐ。
女帝の洗礼という意味を持つ魔道砲塔からの砲撃を回避しつつ、過去ルシリオンと彼の率いる空戦部隊“オラトリオ”が空を翔る。“銃”という、この時代には無い神器から放たれる魔力弾や砲撃が、次々と魔道砲塔を陥落させていく。

『神器王から各員へ。魔道砲塔も残り1つだ。一気に決めるぞ・・・!』

過去ルシリオンが部下へと指示し、隊員たちは『了解!』と答え、銃口を一斉に最後の魔道砲塔へと向けた。

「見せてやれ。我らが銃軍嬉遊曲(ガンパレード・ディヴィルティメント)・・・撃てぇぇぇぇぇぇッ!!」

40の銃口から放たれる魔力弾と砲撃。さらに過去ルシリオンは蒼の弓矢を魔力で造り出し・・・

――弓神の狩猟(コード・ウル)――

蒼の長矢型の砲撃を射った。それらの直撃を受け、ヴァナヘイムの有する“帝都防衛魔道砲塔エンペラトゥリス・バウティスモ”が全て折られた。

「馬鹿な・・・! 風嵐系の頂点は私ではなかったのか・・・!?」

「騎士公オペル。確かに洗練された魔術でしたが、剣技では今1つ剣神シャルロッテには届かなかったようね」

イヴィリシリアとオペルの何度目かの決闘。勝敗はイヴィリシリアの勝利となった。
シエルとカノンの“戦場の妖精フロント・フェアリー”は、上位“A.M.T.I.S.”と激戦を繰り広げる。
参謀たるステアも前線へと赴き、敵兵をなぎ倒しつつ王城へと駆ける。
フォルテシアは、スヴァルトアールヴヘイムを滅ぼし、ルシリオンの姉ゼフィランサスを殺害した仇の1人、“特務十二将”にして最下層魔界の支配権・“戦闘卿バラディウム・クートラント”と死闘を繰り広げ、瀕死になりながらも勝利を収める。
地上へと降り立った過去ルシリオンは・・・

「結界王・・・アリス、だったか」

かつて自分を追い込んだ結界魔術師、アリス・ロードスターと対峙した。美しかったターコイズブルーの長髪は煤で汚れ、尋常ではない汗をかいていた。目も虚ろで、目の前の過去ルシリオンにすら気付いていない様子。過去ルシリオンは最大警戒のまま近付き、アリスの頭に手を置き、記憶を探る。

「なんて非道な真似を・・・!」

そして知った。アリスは大戦とは関係のない世界から連合によって拉致され、薬物と魔術によってその力を強化、それに洗脳されていたことに。過去ルシリオンは彼女を連れて帰り保護。治療によって薬物による悪影響を全て取り除き完治させた。

ヴァナヘイム攻略戦は成功し、ヨツンヘイム連合のリーダー格の一つヴァナヘイムを陥落させた。
この3日後、アースガルド同盟へとヨツンヘイム連合からの休戦申し込みが来た。同盟軍はその申し出を受諾。通算283回目の休戦協定となった。この大戦最後の休戦期間を“世界最後の冬フィムブルヴィト”と呼ぶ。

『この半年後、1000年と続いた大戦が終結する』

ルシリオンがそう告げ、場面が変わる。そこは、防衛世界ビフレストにある“アミュスタウロトス宮殿”の広場。5千万人という同盟軍を前に、フノスを始めとした“アンスール”が立っていた。半年前に保護した結界王アリスも、13人目の“アンスール”としてシエルとカノンの隣に居た。

「歩み寄りの刻はすでに遥か遠くに過ぎ去り、今まで私たちは戦ってきました。みなさん、1000年の永き時の果て、ようやくこの戦争も終わりを迎えます。ヨツンヘイム連合は、またもや自ら休戦協定を破り、聖域ヴィーグリーズへと進軍中です。我らアースガルド同盟の心を踏みにじるその愚行、私は許せません」

全同盟軍へと向け語り続ける、最高司令官フノス。

「みなさん、戦闘態勢を! 己が神器(たましい)に、断罪の意思を! 粛清の意思を! 私たちが望むのは覇ではありません! それを分からず屋(れんごう)にお教えに行きましょう! これで最後です! アースガルド同盟軍、いざ決戦の地、聖域ヴィーグリーズへ!!」

アースガルド同盟軍もまた聖域ヴィーグリーズへと進軍を開始。そして、ヴィーグリーズ決戦が始まった。

1日目。雷皇ジークヘルグと鮮血姫シリアの決闘。互いに重傷を与えつつ、シリアはジークヘルグの真技・“雷神放つ破滅の雷ミョルニル”によって死亡した。他のアンスールメンバーもまた戦場に繰り出す。

「お前が、神器王ルシリオン・・・」

「剣神シャルロッテ・フライハイト、だな」

戦場から離れた一画。過去ルシリオンと過去シャルロッテが対峙していた。手にするのはお互いの神器、“グングニル”と“キルシュブリューテ”。なのは達も固唾を飲んで、2人の親友の姿を黙って見守る。

「目覚めよ、断刀・・・キルシュブリューテ!!」

過去シャルロッテの“キルシュブリューテ”が桜色の閃光を纏う。刀身の腹にも幾何学模様、文字のようなものが浮かび上がっていた。

「・・・プッ」

「何が可笑しい!? 神器王!!」

激昂する過去シャルロッテ。それに反し、笑みを見せる過去ルシリオン。そして彼女は知る。“キルシュブリューテ”の腹の書かれた概念文の意味。

「~~~っ! ああもう、どうでもいいわ。神器王、私はあなたに会いたかった。この手で、あなたを斃せる日が来るのをどれだけ待ち望んだか・・・!」

「そうか。ならば、こちらも手加減無用で行こう。目覚めよ、神槍・・・グングニル!!」

そして始まる死闘。過去ルシリオンの放つ神器群を片っ端から斬り捨てていく過去シャルロッテ。結局、その日は決着しなかった。

2日目。
シエルとカノンの“フロント・フェアリー”、特務十二将にしてA.M.T.I.S.最強の2機“機神剣フルングニル”と“機神砲アングルボザ”の激戦。
シエルは、真技・“天壌蹂躙するは神なる拳デストラクション・パイル”によってフルングニルを破壊。カノンもまた、創世結界“殲滅領域フェアテルゲン・ヴェルトール”で、アングルボザを破壊した。

3日目。
全魔術師の頂点に立つ、最強の魔術師である魔道王フノスがついに戦場に立つ。
相手は、“特務十二将”にして最下層魔界支配権の第2位・“喰滅狼ウリベルト・ツェレストティッツァ・カーナス・フレイオルタ”。その実力、まさに連合最強。過去ルシリオンですら1対1で勝てるかどうか判らない怪物。

「魔族とはこれほどまでに恐ろしい者だったのですね」

「そういうあなたは、人間に許されている領域から1歩も2歩も踏む出しているわ。あなたが大戦の中期辺りに生きていれば、その当時でこの大戦は終わっていたと思う」

それと引き分けるフノスの実力の高さが良く判った。プレンセレリウスと特務十二将の1人、“魔術の蔵フランセスク”との決闘。ボロボロになりながらも、プレンセレリウスは勝利を収めた。

4日目。
互いの主力が出ることの無かった1日。

5五日目。
“特務十二将”のリーダーである召喚王アーサーの、禁呪“上位魔族召喚”の代償による精神崩壊が始まった。理性が完全に飛び、300頭以上という魔獣の群れを従え、戦場を蹂躙した。暴走したアーサーを止めたのは、氷雪系最強の魔術師シェフィリス。
彼女の真技、“氷葬大結界・真百花繚乱プスィフロス・エヴィエニス・ヒョノスィエラ・カタストロフィ”によりアーサーと魔獣群は氷漬けにされ、そのまま砕かれた。

「臣下を見捨てて自分たちだけで逃げるだと!? そのような王が居てなるものか!」

過去ルシリオンは、連合四王のヴァナヘイム女帝とヨツンヘイム王が部下を置いて逃亡する場面に遭遇。部下が命を賭して戦っているというのに、主たるその2人の逃亡が許せなかった彼は、創世結界の“神々の宝庫ブレイザブリク”を展開、2人の王とその側近を蹂躙した。

Ⅵ日目。
ステアは、自身に求婚を迫るストーカー、四王たるフォードと決着をつける。2二人が同時に展開した創世結界が互いの術式を食い潰そうとしている時、フォードを襲うのはアリスの反則結界“一方通行(サンダルフォン)の聖域”。閉じ込められ、一切の魔力行使が出来なくなったフォードへと、ステアは真技、“咬み殺す神焔ドラガオン・プルガトーリオ”を放ち、フォードを討った。

過去ルシリオンとシェフィリスのコンビが、過去シャルロッテとミストラルとチェルシーと戦う。
多種多様なミストラルとチェルシーの魔術に苦戦を強いられながらも、最初にチェルシーの創世結界を破り戦闘不能にする。次いでミストラルを戦闘不能に追い込む。最後に、過去シャルロッテを戦闘不能にした。こうして、大戦に参加した“星騎士シュテルン・リッター”は全滅した。

最終日。
ムスペルヘイムの裏切り一族の末裔である“炎浄王マーディス”と、ムスペルヘイム王女セシリスの決闘。炎熱系の魔術師同士の戦いは、セシリスの勝利で決着する。

連合の敗北がすでに決定しているようなものの、連合最後の四王たるプリムスが、シエルとカノンのコンビ・“フロントフェアリー”と戦う。
得意の幻影魔術と創世結界・“心狂わす道化の国ウトガルド”によってあと一歩まで追い込むも、カノンに結界術式の穴を見破られ、創世結界を上書きされる。

「プリムス! あなたの負けは決した! 投降して!」

「私は! 私はウトガルドの王! プリムス・バラクーダ・ウトガルド! 負けたら・・・! 負けたらまた、私の価値は無くなっちゃう! 勝たないとダメなの! 負けるなんて・・・許されない!」

「~~~~っ! さようなら・・・!」

戦う術を無くしたプリムスに投降を呼びかけるシエルだったが、最期まで戦おうとしたプリムスにカノンは砲撃を放ち、プリムスを撃破した。連合を統べる四王の全滅である。

「そう、表層世界での戯れもこれにて終わりか。ま、なかなかの暇つぶしだったから良しとしよう」

フノスと死闘を繰り広げ、最後まで勝敗が着かなかったウリベルトは、契約主である四王全滅ということもあり召喚が解かれ、魔界へと帰還した。ネブソノフスもまた、ウリベルト同様に契約主を失い、魔界へと帰還されようとした時、それは起こった。

『これが再誕神話に記される世界の終わり・・・“ラグナロク”だ』

敗北したことが信じられず狂気に走った連合魔術師の一部が、最大禁呪“ラグナロク”を発動。時間や空間を無視して破壊を撒き散らす、原初王オーディンが生み出した“ルーン”に次ぐ原初魔術。
視界を突然覆う白。その刹那に起こる強烈な衝撃波、そして地割れ。“ラグナロク”の発動地点を中心に破壊が広がっていく。このとき、すでに周囲にある様々な世界が滅んでいた。ヨツンヘイムを始めとした連合世界。アースガルドを始めとした同盟世界も、滅亡とはいかずとも甚大な被害を被っていた。
そして無事だった騎士ミストラルも、魔界へと帰還しようとしていたネブソノフスも、最初の衝撃波で消滅していた。“ラグナロク”発動を行った連合軍も当然、発動と同時に消滅していた。

「何てことを・・・!!」

過去シャルロッテがグレーテルたち騎士団とチェルシーを庇って、“ラグナロク”の衝撃波に耐えていた。“キルシュブリューテ”を完全解放し衝撃波を斬り裂いてはいるものの、次第に掌からの出血が増え、腕の筋肉や血管が断裂していった。激しい痛みに意識を飛ばされそうになりながら、過去シャルロッテは背後に庇う仲間を救うために懸命に耐える。

(誰でもいい。お願い。神さまでも、悪魔でも構わない。この子たちを護ってあげて・・・)

“キルシュブリューテ”の刀身にヒビが入るのを見た過去シャルロッテは祈った。背後で気を失っている大切な仲間たちを護ってほしい、と。そして“ラグナロク”の何度目かの衝撃波によって、“キルシュブリューテ”が砕け散る。意識が飛びそうになっていた過去シャルロッテが目を見開く。

(私では・・・やはり護れないというの・・・? お願いお願いお願いお願い・・・! この子たちを護って!!)

衝撃波に飲まれ、自身の肉体が消滅し始めたのを見た過去シャルロッテの最期の願い。

――我にその魂を捧げよ――

(え・・・?)

突然耳元で囁かれたような声に、過去シャルロッテは戸惑った。彼女の視界には時間が止まったかのように全てが停止した世界が映った。灰色の世界。体の大半が消滅した自分。その背後に倒れている大切な仲間たち。

――我が眷族、界律の守護神(テスタメント)となり、その刻が訪れるまで戦い続けよ――

(テスタメント・・・?)

聞いたことのない言葉に戸惑う過去シャルロッテだったが・・・

(そのテスタメントというのに私がなれば、この子たちとミッドガルドを護ってくれる?)

疑問を抑え、謎の声に取引を持ちかけた。過去シャルロッテは手段を選ばなかった。護れるのならなんだってする、という決意が今の彼女の全てだった。

――無論――

(どう? 私の背後に居る仲間と、私の故郷レーベンヴェルトを含めたミッドガルドを護ってくれるのならば・・・)

――よかろう。ここに契約は為された。汝には、白き第三の力・“剣戟の極致に至りし者”の名を授ける――

謎の声の主、“神意の玉座”の意思と過去シャルロッテの取引通りに、チェルシーやグレーテル達は生き延びた。そしてミッドガルドもまた滅亡することなく、現代に到るまで存在し続けた。

『これが私の人間としての終わり。そしてテスタメントとしての始まり』

『僕たちの住むミッドチルダが今こうしてあるのは、君のおかげなんだな、シャル』

クロノがシャルロッテを見ながらそう告げた。なのは達はただ泣いていた。親友の人生が、そしてその死が壮絶過ぎて。

『私は後悔してないよ。仲間は護れたし、ミッドガルドも護れた。あーでも、レーベンヴェルトだったベルカが滅んだのはちょっと悲しいけどね』

それを聞き、シグナムたち古代ベルカを生きた騎士は顔を伏せた。

『さてと、これで私の話は終わり。さ、ルシル。今度はルシルの番だよ』

シャルロッテの姿が消える。そして今まで黙っていたルシリオンが口を開く。

『どうする? もうここで止めておくか?』

『ううん。見せて。ルシルの全てを。私は知っておきたいから』

フェイトがそう答え、なのは達も頷いて答えた。

『・・・そうか、判った。これが、私の終わりで始まりだ』

 
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