永遠の謎
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304部分:第二十話 太陽に栄えあれその十六
第二十話 太陽に栄えあれその十六
「それを傷つけてはだ。だが」
「だが?」
「だがといいますと」
「私は政治家だ」
ここでこうも言うのだった。
「政治は時として非常だな」
「はい、それは確かに」
「その通りです」
側近達も官僚であり政治家だ。それならば言えることであった。
「何をしようとも目的を達することが命題です」
「それこそがです」
「ならばだ。その至宝もだ」
どうするか。非情になった目で語るのだった。
「使うべき時は使う」
「そうされますか」
「その様に」
「そしてドイツを築き栄えさせる」
それこそが彼の使命だとだ。そのことを確信していた。
だからこそだ。ビスマルクはこうも話すのだった。
「その為にはあの方もだ」
「使われますか」
「そうされるのですね」
「陛下も使わせて頂く」
他ならぬだ。プロイセン王、彼の主君であってもだというのだ。
「ドイツの為にだ」
「その為に陛下もですか」
「使われるというのですか」
「そうだ。御二人もだ」
バイエルン王、そしてプロイセン王というのである。
「ドイツの為にはだ」
「利用されるというのですか」
「あえて」
「それを不敬と言うのなら言うといい」
ビスマルクはあえて言った。それでもだとだ。
「私はドイツの為には何でもするのだからな」
「例えバイエルン王を傷つけても」
「それでもですか」
「それも止むを得ない」
決してであった。それを言うのだった。
「ドイツの為にはだ」
「ドイツの為に」
「その為には」
「それがあの方を傷つけようとも」
腹を括っていた。彼もだ。
そしてその覚悟を述べてだ。彼は実際に話した。
「それでもやるのだ」
「ドイツの為に」
「その為にも」
「それでもあの方は大切にしなければならないのだ」
バイエルン王への敬意はだ。それでも忘れないのだった。
「私はあの方を利用させてもらう」
「それでもですか」
「あえてですか」
「あの方を敬愛している。そして大切に思っているのだ」
これもまた彼の心にあるのだった。彼もまた人間だ。そして人間としてである。彼はバイエルン王のことを考えているのだった。
その考えにおいてだった。彼はこれからのことを見ていた。
「バイエルンの者達こそがだ」
「あの国の者達がですか」
「最もですか」
「そうだ。最もだ」
こう話すのだった。
「だが。人は手近にあるものこそが最もわからないのだ」
「最もですか」
「それはわからない」
「そうなのですか」
「そうなのだ。手に持っていれば最もわかっていると思ってしまう」
それでもだというのだ。実はだ。
「しかしそれは錯覚だ」
「実際はそうではない」
「わかってはいない」
「そうなのですね」
「それはバイエルンの者達も同じだ」
ビスマルクは残念なものをその目に見せて話す。
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