歌集「冬寂月」
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六十
秋の空は
高くなりてや
淋しさを
近くに寄せし
神無月かな
秋の空と言うものは、あんなにも高く見えると言うのに…何故か淋しさをこんなにも近く感じさせるものだ…。
人恋しくさせ…こうもあの人に会いたいと思わせる…。
深い山の中で人知れず…身を染めて散りゆく木の葉の様に散った恋…。
寂しく眺める十月も、もう終わろうとしているのだな…。
野辺に吹く
遠く秋風
すゝき野の
想いそ乗せて
消えしものかな
あちらこちらと枯れ草が見え隠れする秋の野原…何処からともなく吹き抜ける風に、芒が一斉にざわめいた…。
一瞬、あの人の影が見えたような気がして…有り得ないことに苦笑し…胸が痛んだ…。
そんな私の心を見透かしてか…再び風が吹き抜ける…。
今度は…私の想いさえその身に乗せて、遥か彼方へと…消えゆくように…。
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